常磐線から、水郡線に乗り継いで、到着したのが茨城県の常陸太田市。
農業視察です。
今月7日の「就農FEST」のブースで聞いた話では、移住されて来た方が、グループを作って、小規模多品種の野菜づくりをしている地域があるとのこと。
僕が目指すスタイルです。
それが、本日お邪魔した常陸太田市の里見地区。
南北に長い常陸太田市の一番北側にあります。
その向こうは、もう福島県というところ。
本日お邪魔したのは、そのグループのお一人である近藤さんの畑。
市役所のホームページに掲載されているプロフィールでは、近藤さんは、岡山県出身で、東京農業大学で農業を学び、青年海外協力隊として、西アフリカで農村開発に携わり、帰国後、有機栽培農家として就農されたという方。
2010年に、この地に移住されたとのことですから、農家としてのキャリアはおよそ10年。
作っている野菜は、年間を通じておよそ40種類。
本日拝見した畑で栽培していた野菜をざっと紹介しましょう。
これが大豆。
収穫はほぼ終わっていましたが、このアーチがきゅうり。
こちらがブロッコリー。
こちらが、里芋。
防虫ネットで覆っているのは、植え付け時期を少しずつずらして栽培しているキャベツ。
透明マルチを使った、太陽熱殺菌という技も教えてもらいました。
これで、雑草をかなり抑えられるとのこと。
違う場所にある畑では、枝豆などもやっているそうです。
プロフィールには、茶豆と書いてありましたね。
この小規模多品種で野菜づくりをする際に、最も有効な販路は野菜直売所です。
これは、福島でもそうでした。
1番の利点は、顧客のニーズに合わせて、出荷時にマックスの品質になるように調整して、栽培する必要がなく(これが難しいそうです)、出来たものから順次出荷できること。
作る野菜は、自分で自由に選択できること。
多品種でやれば、出来不出来のリスクヘッジが出来ること。
僕のような、高齢素人就農希望者には、いろいろな面で好都合なスタイルです。
常陸太田市には、2つの「道の駅」の他に、市内に直売所が四箇所あるそうです。
ですが、近藤さんは、地元の農家との競合を回避するために、フットワークを活かして、隣の市まで、配達をしているとのこと。
野菜直売所で野菜を売る上で、近藤さんが一番ジレンマに陥るのは、JA系列の直売所では、有機栽培であることを、陳列する野菜に表示できないこと。
有機栽培は、近藤さんの野菜の1番のストロング・ポイント。
せっかく有機栽培で作っても、他の野菜との差別化ができずに、一緒に売られてしまうわけです。
直売所に出す野菜の袋には、みんな個人名がはいりますから、それでわかってもらうしかないとのこと。
まあ、JAのシステムには、いろいろとややこしい事情もあるようです。
「コストと、それなりの労働力をかけて有機栽培をしても、差別化は計れない。」
近藤さんは、少々苦笑い。
近藤さんのグループの中には、インターネットを使って、顧客を獲得し、季節ごとの有機栽培野菜セットを届けることで、有機野菜のニーズがある都内の顧客を相手に、販路を開拓している方も多いとのこと。
近藤さんは、メルカリでの販売も、検討中。
ただ、出品されている野菜が、いかにも、処分に困った挙句の投げ売り的なものが多いのが気になっているそうです。
移住して来て、就農するにあたって、最も気を使ったことはなにか。
近藤さん曰く、それは地域のコミュニケーションだったといいます。
特に、周辺の農家の方たちと、違うスタイルで就農する場合なら、余計に意識して、自ら地域の行事に飛び込んでいくくらいのつもりがないと、たちまち四面楚歌になってしまうとおっしゃっていました。
田舎で農業をするにあたっては、周囲との協調はあらゆる面で不可欠。
それを無視すれば、田舎での農業は、たちまち立ちいかなくなります。
近藤さんも、仲間たちとの勉強会だけでなく、地域の消防団や、お祭りの応援などには、積極的に参加しているとのこと。
一人で突っ張っても、田舎での就農はできません。
しかし、僕の場合は、その点はあまり心配していません。
むしろそれはそれで、楽しめるなと思っていますね。
それよりも、やはり、気になるのは収支決算と、初期投資。
そして、研修中の暮らしなどなど。
市役所の方は、研修なら、県内の学校がお勧めと言っていましたが、まさか、60歳を超えた「ジジイ」では、そうもまいりません。
やはり、最終的には、自分が目指す農業を実践している先輩農家に弟子入りして、実践で学ぶ期間が必要となります。
そういう希望者のために、市役所では、1日2000円くらいで泊まれる、長期滞在用宿泊施設も用意があるとのこと。
田舎での就農は、まずどこから決めていくべきか。
要するに、一番最初に何から決めるかという話です
いろいろ聞いて来ましたが、概ねこの4つ。
作る野菜から入る。
作る地域から入る。
住む家から入る。
そして、人から入る。
Iターンされた新規就農者の方に聞くと、皆さんおしなべておっしゃるのは「周りにいい人がたくさんいたから」
そして、「いいところだっただから」
また、大口の販路にあてのある場合は、作る野菜から入って、その条件に合うところをみつけ、大規模にやるという方もいらっしゃる。
僕の場合は、現在のところ、どのコネにもあてがないので、とりあえず、いろいろなところに出かけて話を聞くしかないというところです。
やはり、就農にあたっては、実際に農業で暮らしている方の生の声を聞くことは不可欠。
これは、活字やネットの情報だけでは絶対にわかりません。
役所の方も同行していましたので、あまり生々しい話は聞けませんでしたが、近藤さんに、こっそりと聞いたのが「食っていけますか?」
この質問に対して、近藤さんは、白い歯をニッと見せて「いっぱい、いっぱいです。」
しかし、そういっている顔が楽しそうだったのが印象的。
帰りの電車までに時間があったので、3年前に出来たばかりという、道の駅に寄ってもらいました。
茨城県の農産物というと、僕などは「納豆」くらいしか頭に浮かばなかったのですが、実は、どの分野の農産物も、全国の収穫量では、ほぼベスト5には入ってくるほど、農業は盛んなところ。
特に果樹には、特産物が多いようです。
道の駅の直売所では、旬の果物の梨が大量に並んでいました。
その他では、葡萄や栗などが有名。
どの野菜も品質は高く、わざわざ都内に販路を広げなくても、茨城まで買いに来るお客さんのニーズで、十分にやって行けるとのこと。
そしてもちろんコメ。
ちょうど新米が並ぶ時期で、大々的に宣伝をしていました。
役所の方の話では、最近は、単価のいいトマトに栽培に力を入れているとのこと。
特に、女性の就農者が増えているそうです。
道の駅の横には、ドーンと2つのハウスが並び、体験収穫などのイベントも定期的に行われていました。
今回もまた、市役所農政課の2名の方には、大変お世話になりました。
また、農作業のお忙しい中、対応していただいた近藤さんにも、お礼を申し上げます。
ありがとうございました。
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