16年前、父親の一周忌をビデオカメラに収めて、参列者の皆様にDVDに編集して送らせていただきました。
動画の編集はある程度の心得がありましたので、作る方も楽しませてもらいましたが、この動画は、カメラを回している時から、頭の中でずっと鳴っていた曲があります。
それがこの「カジノ・ロワイヤル」のメイン・テーマ。
作曲はバート・バカラック。演奏は、ハーブ・アルパートとティファナ・ブラス。
軽快なインストゥルメンタルで、とても一周忌のしめやかな動画のBGM二は相応しくないと思われるかも知れませんが、元々父親の一周忌を、湿っぽくするつもりはなかったので、あえてこの曲を使わせてもらいました。
というわけで、この1967年に作られた本作は、007シリーズと、この時期雨後の筍のように作られていたスパイ映画の一大パロディ映画。
悪ふざけも、ここまで徹底してやればむしろ爽快なもんです。
流石に、この辺りは、モンティ・バイソンを産んだ国イギリスですね。
しかし、この映画は、映画の内容とは別に、バート・バカラックによる音楽だけは、かなり高評価を受けていました。
映画は、おそらく、テレビ放送されたものを途中から見ただけの記憶です。
映画館で見た記憶はありません。
のちに、大ファンになったジャクリーン・ビセットが、出演していると知って、そのシーンは、敵のアジトに、裸で括り付けられていた美女がそうだったとばかり思い込んでいましたが、今回改めて確認したら、その美女はダリア・ラヴィ(結構似ていましたね)という女優で、ジャリクーン・ビセットは、ジャッキー・ビセットというクレジットで、ピーター・セラーズ扮するボンドを誘惑する、ミス・太ももという役でワンシーンだけ出演していました。
うーん、当時23歳の彼女は、こんなちょい役でも、光ってますね。
「カジノ・ロワイヤル」は、スメルッシュのイギリス組織で暗躍していたル・シフルというギャンブラーが組織の金を使い込み、その穴埋めに、大金を賭けたバカラで一儲けしようとするのを阻止するボンドの活躍を描いたもの。
イアン・フレミングの原作は、この長編第1作目だけは、イオン・プロが版権を買い上げる前にMGMの手に渡っていました。(イオンプロと契約していたのはユナイテッド・アーティスト)。
007シリーズの大ヒットで、映画化すれば当たると踏んだMGMは、色々と画策しますが、こどごとく決裂。
最終的に、オールスターによるパロディ映画という苦肉の策で映画化にこぎつけたわけです。
監督は、大ベテランのジョン・ヒューストン。
そして、キャスティングされた役者がまたため息もの。
これだけの役者を揃えて、しかもそのほとんどの役者に演じさせるのが、「悪ふざけ」に近いギャグ。
そして、彼らもそれを嬉々として演じているわけですから、こちらはもうたまりません。
一番出番が多いのは、隠遁したジェームズ・ボンドを演じたデビッド・ニーブン。
この人は、イアン・フレミングが、ジェームズ・ボンドのモデルとして想定していたイメージの一人ですから、本家といえば本家。
ピーター・セラーズは、芸達者な人で、その辺りも映画の中では、たっぷり楽しませてくれましたが、この人は、「カジノ・ロワイヤル」に、ボンドの影武者としてのりこむスパイ役。
007第一作の「ドクター・ノー」に出演した初代ボンド・ガールのウルスラ・アンドレスは、ボンドの監視役ベスパー・リンド役。
2006年のダニエル・クレイグの「カジノ・ロワイヤル」では、エヴァ・グレーンが演じていた役です。
もちろん彼女ですから、そこはお色気たっぷりに。
そして、最終的に、敵の首領になるのがウッディ・アレン。
あまりに大ボスとはかけ離れたキャラを、漫画チックに演じてくれます。
ビックリしたのは、ボンドが訪れる館の女主人のてデボラ・カー。
実にイギリス人らしい清楚なレディで、「めぐり逢い」「王様と私」は好きな映画でした。
その彼女が、本作では、完全に振り切ったエキセントリックな役。
あらまあ、この人がここまでやるかという驚きです。
映画のラストでは「黒水仙」の時の修道女の衣装で再登場。
かつての自分の役もパロディにしてしまうんですから、気合が入っています。
イイモノとワルイモノをいっぺんに見せられたような複雑な心境にさせてくれました。
ウィリアム・ホールデンも、チョイ役で出ましたね。
50年代のアメリカ映画では、堂々あと主役を張った大物スターです。
CIAの役で、引退したボンドに会いに行く一人として出演。
ラストでもまた登場して、大乱闘に参加して、楽しそうにボカスカやってました。
大乱闘といえば、このシーンになんの脈絡もなく、突如乱入してくるフランス外人部隊の隊員役が、ジャン=ポール・ベルモンド。
いきなり現れて、何発かボカスカやって、「痛え!」とかわめいてそれで終わりです。
この出演に、どれだけのギャラが払われたのかちょっと興味のあるところ。
まだまだいますね。
カジノのバーのカウンターの前に立って、威厳ある目つきであたりを見回している人物。
誰かと思ったらジョージ・ラフトでした。
1930年代のギャング映画で、エドワード・G・ロビンソンやジェームズ・ギャグニーなどと一成を風靡した人です。
ボンドと対決するル・シフルを演じたのは、2006年度版では、いかにも神経質そうなマッツ・ミケルセンでしたが、本作では、貫禄のオーソン・ウェルズ。
この頃の彼は、自分の企画による作品を撮らせてもらえないで、B級作品への出演が多くなっていた時期でしたが、画面を見る限り、後ろに美女たちを従えて、本人お得意のマジックなども披露して、実に楽しそうに演じていました。
そうそう、バグパイプの奏者として、ピーター・オトゥールもチラリと出演。
カジノの客の中には、ナポレオン・ソロのイリヤ役で人気絶頂の頃のデビット・マッカラムもいました。
この辺りは、完全にカメオ出演で、Wiki の資料で知って、慌ててDVDを見直しました。
それから、名優シャルル・ボワイエや、監督のジョン・ヒューストン自身も、ボンドに会いに行くクルーの一人として出演。
とにかく、こういう映画的「お遊び」は、映画ファンを心地よくくすぐってくれて、楽しい気分にさせてくれます。
さあ、そして美女たちです。
ズラリと登場する60年代の美女たち。彼女たちの顔は結構覚えていました。
何しろ、洋画デビューが、「007 ダイヤモンドは永遠に」でしたから、このシリーズに色っぽい美人女優たちが、際どい肢体で登場するということはしっかりと学習していましたので、そうそう映画館には行けない中学生は、テレビで放映される60年代のスパイ映画や、犯罪映画を片っ端から見ていたんですね。
何せまだ、AVなんてものはなかった時代です。
テレビ画面に、ドレスをストンと落とした、女優の背中が見えるだけでも、それだけで結構ドキドキしたものです。
エロに目覚めた、マセた中学生が、熱っぽく追っかけていたのが、60年代に旬だった女優たちでした。
今でも、その頃の女優たちのスチールを見ると、なんだか萌えますね。
ミス・マニーペニーを演じだのが、バーバラ・ブーシェ。
マタ・ハリの娘マタ・ボンドを演じたのが、ジョアンナ・ペティット。
(この人は、シャロン・テートの友人で、彼女が惨殺された夜の最後の訪問者だたそうです)
その他、トレイシー・リード、アンナ・クエイル。
ノンクレジットでは、アンジェリカ・ヒューストンやキャロライン・モンローなどなど。
本家の「ゴールドフィンガー」をパロッて、金粉の女性たちも出てきて、こちらはニヤリ。
もうどの方も、そろそろ後期高齢者でしょうねえ。
たとえどんな端役であっても、スクリーンに一番美しい頃の姿が残されているというのは、本人たちにとってはも貴重な記録です。
この映画に大いに影響を受けたであろう「オースティン・パワーズ」でも、もう一度見てみたくなりました。
悪ふざけを極上のエンターテイメントにする極意。
それは、「お金もかけて」「大真面目」にやることと見つけたり。
ジョン・ヒューストンが、楽しそうに撮っている姿が目に浮かびます。
とにかく嫌いじゃないんだよなあ。こういう映画。
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