誰もが、コロナによる、この異常な日常から早く解放されたいと願っていると思います。
しかし、コロナに関するいろいろな情報と、我が国の政府の無能ぶりを知るにつけ、コロナ以前の生活に戻れる日は、絶望的に遠いという気がしてなりません。
そんな中では、家庭での映画鑑賞は、今やこの状況下で許された、数少ない娯楽になってきました。
ホラー映画は、以前から好きなのですが、Jホラーが世界でも通用するのは、欧米作品の大味で直球勝負の力技ホラーよりも、低予算ながらも、上手に「日常の恐怖」をすくい取るウェットなセンスが評価されているような気がします。
いつもいつもいうことですが、ホラーの命はアイデア。
新しい恐怖を発明したホラー映画が、やはりどうしても印象に残ります。
「リング」の貞子。
「呪怨」の白い少年。
このキャラは、もはやJホラーの「発明」と言うべきかも。
ゾンビと比べてみると、いかにもジャパニーズ・テイストなのがよくわかります。
恐怖というものは、身近にあればあるほど恐ろしいもの。
黒沢清監督の「回路」は、当時身近になりつつあったインターネットを恐怖のターゲットにしました。
今や誰もが持つようになった携帯電話を素材にしたのは「着信アリ」。
そして、最近では「ケータイを落としただけなのに」なんてのもありました。
最新の文化や流行を、映画として一番最初に取り上げてきたのは、常にホラー映画の役割だっように思います。
さあ、今や誰にとっても避けては通れない日常となったのが新型コロナ。
目に見えない敵に、ジワリジワリと侵食されていく現実は、まさにホラーそのもの。
ホラー・マニアとしては、この新たな日常を素材にしたホラー映画が、遠からず作られるだろうと踏んでいます。
世界的なコロナの流行が始まってから、およそ1年半。
今のところ、まだ最新の映画でも、企画され、撮映されたのは、まだコロナが本格化する以前で、そこに描かれている日常は、コロナ以前の世界です。
バス停に並んでいる人のほぼ全員がマスクをしています。
通勤電車には乗りませんが、ニュース映像を見れば、やはりほとんどがマスク。
今となっては当たり前の光景ですが、10年たった時にこの映像を振り返れば、相当異様だったと気がつくのだと思います。
この新しい日常を受け止めたホラー映画を、いつ誰が作ってくれるか。
これが非常に興味のあるところ。
「アウトブレイク」や「コンテイジョン」、日本では「復活の日」など、未知のウイルスの恐怖を扱った映画はたくさんありますが、まだ「今の現実」を正面から描いた映画は、知りません。
今の状況を、心底怖いホラー映画にしてくれる日本のクリエイターの出現を、個人的には期待しています。
この新型ウイルスが、本当に怖いと思っている日本人て、意外と少ないような気がするんだよなあ。
もしそのコロナ・ホラーが大ヒットでもしてくれたら、他国から比べて異様なほどに遅れまくっている我が国のトホホなコロナ対策も、少しはマシになるような気がするのですが。
本作は、2020年のホラー映画ですので、実はその辺りを多少期待しましたが、描かれている恐怖は、伝統的なJホラー路線でした。
先日見た「貞子」よりは、いろいろな工夫もありましたが、恐怖描写の基本は、「小中理論」に沿ったもの。
やはり、シライサンも、貞子や、伽耶子、口裂け女と続くレールの延長線上に、しっかりと乗っておりました。
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