007 ムーンレイカー
1970年代最後のジェームズ・ボンドで、ロジャー・ムーアとしては4作目。
前作のエンド・クレジット予告では、”FOR YOUR EYES ONLY”となっていましたが、製作側としては急遽変更した模様です。
どうやら、その理由は、「スター・ウォーズ」の大ヒットが原因と思われます。
つまり、映画界では、空前のSF映画ブーム。
この潮流に乗らない手はないと判断したのでしょう。
7作目の「ダイヤモンドは永遠に」でも、月面着陸の訓練場にボンドが乗り込むシーンはありましたが、今回はスペース・シャトルが登場。
ついに、第11作目で、ジェームズ・ボンド宇宙へ!
三代目ボンドも、前作の大ヒットにより今や絶好調。
海外ロケも、目まぐるしいテンポで、世界中を飛び回ります。
カリフォルニア、ベニス、リオデジャネイロ、アマゾン、そして最後は宇宙というわけです。
原作には、宇宙の設定はなかったようですが、客を呼べると判断すれば原作変更は躊躇なし。
そんなわけで、見ている方としては、かなりツッコミどころ満載の、007史上最も「無理がある」荒唐無稽な作品になりましたが、またそれもよし。
悪ノリは悪ノリで楽しませてもらうことにしました。
むしろ、ロジャー・ムーアとしても望むところだったのではないでしょうか。
ボンド・ガールは、ロイス・チャイルズ。
スペース・シャトルも操縦できるCIAの工作員ホリー・グッドヘッド。
ここまでは、触れてきませんでしたが、このシリーズでのボンド・ガールのネイミングは、かなりギリギリのセンスです。
1作目のウルスス・アンドレスは、ハニー・ライダー。
3作目のオナー・ブラックマンなどは、プッシー・ガロアです。
本作のグッドヘッドも、あえて日本語で言うなら「秀才ちゃん」みたいなところでしょうか。
ボンド・ガールといえば、長身美脚、もしくはグラマー路線が多いのですが、彼女は珍しくスレンダー・タイプでした。
個人的な好みで言えば、もう一人のボンド・ガールを演じたコリンヌ・クレーリーの方に思い入れがありますね。
彼女は、本作の前にも「O嬢の物語」「ヒッチハイク」「ホテル」などで、美しいヌードを披露してくれていました。
僕のようなドスケベ映画ファンとしては、ご贔屓な女優です。
その彼女が、ボンド・ガールということになればキャリア的には大出世。
今までも、「そちら」の期待は裏切ることのなかった彼女です。
「おっ、ついに007シリーズで、初めて、ボンド・ガールのヌードが見られるか。」
そんな期待をして、映画館に向かったファンは、多かったのではないでしょうか。
というわけで、ロジャー・ムーアのボンド・シリーズとしては、この作品だけは、映画館で見た記憶がハッキリ残っていますね。
それなのに、彼女は敵の首領ヒューゴ・ドラックスに、ドーベルマンを放たれ、あっけなく殺されてしまいます。(残念ながらヌードはなし)
これには、少々不満あり。
そして、前作に引き続き登場するのが、不死身の巨漢殺し屋ジョーズ。
前作の命令がまだ継続中なだったようで、アバンタイトルでいきなり登場。
パラシュートなしで、飛行機からダイビングして、サーカスのテントに落下しても死なないという不死身ぶり。
ここまでくるとほぼギャグです。
その後ヒューゴにも雇われて、ボンドを狙いますが、途中からどうも様子がおかしい。
ロープーウェイごと駅に突っ込んだ後も、もちろん死なないジョーズの前に、なぜか金髪の若い女の子が表れて、手を繋いで仲良く去っていきます。
(映画「フランケンシュタイン」のパロディか)
ん?
ジョーズは、ボンド達と一緒に、スペースシャトルに乗りこみますが、最後はヒューゴと決別して、ボンド達を助ける展開。
もちろん最後まで生き残ります。
おそらく、凶暴でもどこか憎めない、007史上、最も強烈なキャラクターであるジョーズの評判が、前作で、すこぶる良かったのだと想像されます。
本作では、その扱いも大出世。
ここまで、一切喋らなかったジョーズが、最後にはセリフまで。
さて、問題の宇宙シーンですが、確かにそれなりに健闘はしています。
しかし、本作と同年に公開された「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」を見てしまっていますから、やはりかなり見劣りしてしまいますね。
それに宇宙空間で、あの煙は出ないでしょう?
これより、10年以上も前に作られたスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」でも、あのあたりはしっかり科学検証されていました。
しかしお遊びは、かなり豊富な本作品。
敵の部下の東洋人チャンが、ビルの窓から、ピアノに落下して死ぬと、覗き込みながらボンドが一言。
“Play it (again). Sam”
もちろん、「カサブランカ」での、イングリット・バーグマンのパロディです。
敵の研究室に入るときにテンキーを押すと、それが「星に願いを」のメロディ。
これは、同時期に大ヒットした「未知との遭遇」のパロディ。
ジェームズ・ボンドが、クリント・イーストウッドばりに、ポンチョを羽織ってカウボーイハットで登場すると、音楽は「荒野の七人」。
こういうところは、映画ファンとしては、いちいちニヤリ。
楽しませてもらいました。
さてお次は、今度こそ ”For Your Eyes Only” です。
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