007 私を愛したスパイ
現在還暦以上のオールド007ファンは、ジェームズ・ボンドといえば、やはりショーン・コネリーです。
彼の出演作は6作(番外の「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」を入れれば7作)ありますが、どのボンドが好きかという話になると、「ロシアより愛をこめて」という人が結構多い。
けれど、今の40代から50代のロジャー・ムーア世代の007ファンの話を聞くと、一番好きなのは本作「私を愛したスパイ」という人が多い印象です。
見終わってから、こりゃお金かかってるなと思いましたので、Wiki してみましたら、製作費はなんと前作「黄金銃を持つ男」のおよそ倍。
前作が、思ったほどのヒットにはならなかった製作側は、かなり気合を入れて作ったようです。
前作からのインターバルが、3年というのも初めて。
主題歌「NOBDY DOES IT BETTER」を歌ったのが、カーリー・サイモン。
それまでの主題歌とは、ちょっと雰囲気が違って、あまり007っぽくない印象です。
そう思ってクレジットを見てみたら、音楽の担当が、ジョン・バリーではなく、マービン・ハムリッシュに変わっていました。
(主題歌の作曲も彼)
この人は、「スティング」や「追憶」の音楽でアカデミー賞を受賞している人。
ここも心機一転というところでしょうか。
007シリーズで、映画のタイトルではない曲名が付いている主題歌は、これが初めてでした。
(ちなみに、歌詞の中には”The spy who loved me”というフレーズがあります)
心機一転といえば、この映画は、イアン・フレミングの原作から離れて、初めてのオリジナル脚本。
ロジャー・ムーアは、すでに50歳でしたが、アルバート・R・ブロッコリーとしては、満を持して放った勝負の一作というところでしょうか。
ソ連とイギリスの原子力潜水艦を、大型タンカーで奪取する億万長者カールバーグを演じるのがドイツの名優クルト・ユルゲンス。
そして、核ミサイルでニューヨークとモスクワを破壊して、海の世界を作ろうと企てます。
このカールバーグの野望を阻止しようと手を組むのがジェームズ・ボンドと、ソ連の諜報員トリプルXこと、アニヤ・アマソワ。
初めて、ボンドと対等な立場のボンド・ガールを演じたのは、バーバラ・バック。
2作目の「ロシアより愛をこめて」で、ダニエラ・ビアンキが演じたソ連職員の名前は、タチアナ・ロマノバでした。名前がなんとなく似ていて、思わずニヤリ。
バーバラ・バックは覚えていました。
1972年のイタリア映画「タランチュラ」に出演していましたね。
美人女優が、ヌードにされて、どんどん殺されていくというB級ミステリーでした。
自慢じゃありませんが、この頃公開されているこの手の映画は、ほぼ見逃しておりません。
バーバラ・バックが、ヌードになったかどうかの記憶は定かでありませんが、顔は覚えていました。
ちなみにこの映画には、「007サンーボール作戦」のボンドガール、クローディーヌ・オージェも出ていました。
もう一人は、キャロライン・マンロー。
カールバークの部下で、ヘリコプターの操縦士。
あの頃の「スクリーン別冊セクシー女優特集」などでは、必ずグラビアになっていた人で、こちらも顔は覚えています。
よくドラキュラ映画などに出ていました。
アバンタイトルは、アルプスでのスキーチェイス。
「女王陛下の007」のスキー・アクション・シーンも見応えがありましたが、この映画での見せ所は、断崖からの大ジャンプ。
これを超ロングのワンカットで撮り、開いたパラシュートがユニオンジャック。
そして、オープニング・タイトル。
これは、シビレました。
前半のマイクロフィルムをめぐる、ボンドとアニヤの攻防は、エジプト・ロケ。
ボンドがラクダに乗って砂漠を行くシーンでは、「アラビアのロレンス」のテーマ曲が流れてましたね。
こういう遊び心は、映画ファンには大好物。
さて、カールスバーグが放った殺し屋が、カイロで二人を狙います。
不死身の殺し屋の名前はジョーズ。
演じるのは身長218cmの巨漢リチャード・キール。
もちろん、1975年の大ヒット映画「ジョーズ」から、その名前を拝借していますね。
とにかく、最後までボンドに殺されない殺し屋は、彼が初めてでした。
(次作にも、同じ役で登場)
Wiki していたら、この役は、ジャイアント馬場も候補に上がっていたとのこと。
日本人としては、ジャイアント馬場の殺し屋ジョーズは、ちょっと見てみたかったところ。うーん残念。
二人が追手から逃げるシーンでは、伝説のボンドカー「ロータス・エスプリ」が登場。
Qの説明をろくに聞きもしないボンドが、トリセツも見ずに、なんであれだけ仕込んだ武器のことがわかっているのかは疑問ですが、そんな野暮なことは置いておきましょう。
とにかく、秘密兵器が出るわでるわ。
なんといっても極め付けは、川に飛び込んだロータス・エスプリが、そのまま潜水艇になってしまうシーン。
ギャグと紙一重のところですが、この荒唐無稽さも、007シリーズの大きな魅力の一つ。
007史上、最も活躍したボンドカーではないでしょうか。
後半は、ボンドとアニヤが、協力して、カールスバーグの計画を阻止する展開。
原子力潜水艦2機を収納してしまう大型タンカーの内部のセットが、とにかく超豪華。
そのセットとタンカーを、惜しげもなく爆破してしまいますから、圧巻です。
当時はまだCG技術はありませんから、迫力は満点。
ラストで、自分の恋人を殺したボンドに銃を向けるアニヤ。
そして、銃声。
・・と思ったらそれは、ボンドが抜いたシャンペンの音だったというオチ。
これは、「アパートの鍵貸します」のラストですな。
もちろん、二人はそのまま抱擁して、エンドタイトル。
緩急のバランスがしっかり取れていて、しかも極上のアクション満載。
それに、スペクタクルの要素も盛り込んだ、エンターテイメントてんこ盛りの第10作目でした。
ところで、エンドク・クレジットのラストは、次作の予告が「フォー・ユア・アイズ・オンリー」になっいましたが、はて「ムーンレイカー」では?
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