リメイク版「椿三十郎」を、楽しませてもらいました。
今回のリメイクは、黒澤明、菊島隆三、小国英雄の共同脚本を、そのまま採用しています。
従って、黒澤明監督と、森田芳光監督の、映像感覚といいますが、映像的解釈の「差」を、じっくりと比べられました。
これが、結構楽しかったですね。
同じ設計図を使った、家の出来上がりが、作る「大工」の違いで、どれだけ違ってくるものか。
45年前、三船敏郎が演じた、ヒーローを、今回は、 織田裕二が演じます。
彼の起用は、森田監督のラブコールだったそうですが、やはりこれは、あまりに、三船敏郎のイメージが強烈過ぎて、最後まで「違和感」がぬぐえなかったというのが、僕の正直な感想。
織田裕二は、三船の「椿三十郎」を、相当研究したと思われます。
自分なりの「椿三十郎」を演じるというよりは、ひたすら、オリジナルの椿のイメージに近づこうとしていた感じ。
つまり、この時点で、軍配は、オリジナル版に上がりますね。
そりゃあそうです。
オリジナルがお手本なら、限りなく近づくことはあっても、越えることはない。
越えられる可能性があるとしたら、もっと、織田祐二に沿った、椿三十郎にすること。
もちろん、僕としては、織田祐二の「椿三十郎」もありだとは思いますが、彼の魅力をもっと前面に出そうと思ったら、やはり、脚本もそれなりに変えるべきだったかもしれません。
あの脚本は、やはり、三船のイメージを念頭において、書かれています。
ちょっと、彼以外のキャスティングは、考えられません。
さて、敵役の室戸半兵衛。
これは、仲代達矢と 豊川悦司の対戦。
これも、オリジナル版に軍配ですね。
仲代達矢がいいというよりは、僕の感想としては、トヨエツがイマイチでした。
トヨエツは、けして嫌いではありませんが、やはり彼の場合、「屈折した現代人」を演じてこそ、そのキャラクターが光ります。
「時代劇」では、彼のキャラは、ちょっと活かしきれないというのが僕の感想。
若侍のリーダー井坂伊織は、加山雄三と松山ケンイチの対決。
これは、いい勝負かな。
まあ、「育ちのよさ」は、加山雄三の方が、多少出ていたでしょうか。
あの若侍の中には、オリジナル版では、田中邦衛がいたのですが、リメイク版では、彼の役は、誰がやったのでしょうか。
ちと印象が薄かったですね。
拉致された城代の夫人役をリメイク版で演じたのが中村玉緒。
あのおっとりとした奥方役を、久しぶりの映画出演で嬉々として演じていましたが、彼女は、ちょっとバラエティで顔を売りすぎましたな。
いつあの「グヒヒヒ」という笑いが飛び出すのかとハラハラしてしまいました。
オリジナル版の入江たか子は、さすがの品格が、出ていましたからね。
コメディリリーフとして、いい味を出していた、見張りの侍木村を演じた小林桂樹。
この役を演じたのが、佐々木蔵之介 。
彼は、そこそこ健闘していました。
もう一人、意外に検討していたのが、僕の印象では、風間杜夫。
オリジナルでは、藤原鎌足が演じた、小心者の大目付役。
この役を、藤原のイメージとは、かなりかけ離れた風間が、上手に演じていました。
それから、オリジナル版では、「伝説」ともなった、ラストの一騎打ちのシーン。
にらみ合うこと30秒。
一瞬の居合いとともに、三十郎の剣が、仲代を切り、噴出する血しぶき。
ショッキングなラストでした。
これを、今の映像技術を使って、森田監督が、どう料理するかなというのは、けっこう楽しみにしていたところなのですが、これは結局、スローモーションで、サラリとかわされてしまいました。
さあ、同じ脚本による45年ぶりの「椿三十郎」対決。
結論です。
やはり、黒澤明はエライ。
結局どうも、こういうことになりそうです。
最も、森田監督とて、オリジナル版「椿三十郎」を越えようなどとは、思っていなかったかもしれません。
このリメイク版「椿三十郎」を見て拍手を送った皆様。
もしあなたが、オリジナル版をまだ未見でしたら、これは是非ともご覧になってくださいませ。
比べてみると、かなり楽しめます。
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