原作は森村誠一。
角川映画として「人間の証明」に続く映画化ですね。
日本映画としてはめずらしく、これでもかこれでもかと人が殺されていく展開。
しかも、「善人」もしくは、「罪のない人」が優先的に死んでゆくので、ちょっとアメリカ的な乾いた感じと、不毛感が漂います。
角川春樹は、「男の内に潜む、暴力を否定しえない野生を描きたかった」と語っていますが、動物的な野生を呼び起こすには、それ以前に、リアリティーある社会的契機がなきゃいけない。
これがあってはじめて共鳴できるわけですが、やはりこの映画の設定のような、絵空事の世界では虚しいだけです。
ともすれば、荒唐無稽になってしまいそうなストーリーをかろうじて締めてくれたのは、やはり高倉健の存在感。
そして、この映画がデビュー作となった薬師丸ひろ子の可憐さでしょう。
鳴り物入りの角川映画として、当時の日本映画にあっては、そのスケールの大きさは超特大。
キャスティングも、例によって超豪華。
チョイ役で、あの人この人が顔を出すのは結構楽しめます。
しかし、なんといってもこの映画のウリは、本物の戦車やヘリコプターのオンパレード。
ところが、ここまで自衛隊の特殊部隊を残虐非道に描いてしまっては、日本の自衛隊の協力を得られるはずもなし。
実際、この映画の戦車やヘリのシーンは、アメリカ軍使用のものを、ロゴだけ「日本」の日の丸に変えて、すべてアメリカで撮影されたものだそうです。
1978年の公開当時、薬師丸のセリフをそのまま、キャッチコピーにしたテレビスポットの宣伝は印象大。
「お父さん怖いよ。誰かがお父さんを殺しにくるよ。」
うちの弟は、この映画で完全に、薬師丸にハマり、部屋には彼女のポスターが貼られまくり。
当時、本屋だった我が家に、販促品として配布された角川文庫の「たて看板」は、「薬師丸ひろ子」ものでした。
しかし、この等身大のたて看板は、我が実家の店先に立つことはなく、結局弟の部屋で、その寿命を全うすることになります。
僕としては、この映画のイチオシはなんといっても主題歌。
タイトルは「戦士の休息」
歌っているのは、町田義人。
この人、僕のフェイバリットソングの、常にベストスリーにランクインしている名曲「白いサンゴ礁」を歌ったズーニーブーのリードボーカルをやっていた人です。
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