まずは顔ぶれの豪華さ。
僕の世代の映画ファンなら、この顔ぶれはたまりません。
「ウーンマンダム」のチャールズ・ブロンソン。
「ダーバンナンタラカンタラ」のアラン・ドロン。
そして、「男は黙ってサッポロビール」の、我らが三船敏郎。
この三大スターが、みんな、旬の輝きを放っていた1970年に作られた作品です。
まあまあ、この三人をよくぞ、ひとつの映画に集めたものです。
まず、そこに感心しますね。
そもそもは、黒澤明と袂を分かれた三船が、自らのプロダクションを立ち上げ、「侍を主人公にした西部劇」という企画をパラマウントに提出したがことのはじまり。
しかし、この企画、西部劇の本場であるアメリカでは通らなかったんですね。
しかし、意外なところから、この企画の製作に名乗りが上がります。
なんと、フランスです。
手を上げたのは、ロベール・ドルフマンという、プロデューサー。
彼は、チャールズ・ブロンソンと組んだ「夜の訪問者」を成功させたばかり。
そして、この映画を監督したばかりのテレンス・ヤングも引っ張り出し、スペインの原野を西部に仕立てて、マカロニウエスタンではないメイドイン・フランスの西部劇に挑みました。
テレンス・ヤングは、ご存知のとおり、「007シリーズ」の初期作品を手がけた、娯楽映画のエキスパート。
ロベールは、「仁義」で一緒だったアラン・ドロンも口説いて、彼をジャック・パランスばりの悪役に仕立ててしまいます。
この強力な男性スターたちに、華をそえたのが、ウルスラ・アンドレス。
ご存知、007シリーズの初代ボンドガールです。
テレンス・ヤング監督は、このフェロモンプンプンの女盛りのウルスラ・アンドレスを、この映画では、きっちりと脱がせてくれましたから、それだけでもご褒美モノ。
三船敏郎は、この映画の記者会見で、「ブロンソンなら相手にとって不足はない!」といっていたそうですから、相当に気合が入っていたんでしょう。
それは、三人の乗馬シーンを見ても歴然。
やはり、3人の中では、きっちりと黒澤映画で鍛え上げられていた三船が、一番凛々しく、馬を乗りこなしていました。
あの「隠し砦の三悪人」で見せた、馬にまたがっての颯爽とした居合い斬りも、しっかりと披露。
ブロンソンは、情けなや、馬での全力疾走場面などは、しっかりスタントマン頼りだったそうです。
アラン・ドロンも映画「テキサス」あたりで、銃さばきくらいは、しっかり仕込んできたようですな。
なかなかかっこいいガンプレイを見せてくれました。
さて、物語は1870年のアメリカ西部。
騎兵隊に護衛された列車がチャールズ・ブロンソンとアラン・ドロン率いる強盗団に襲われます。
彼らの狙いは郵便車の金貨と乗客の持ち物。
ところがこの列車には日本からの親善大使の一行である坂口備前守と二人の武士が乗り合わせていました。
強盗団は大統領への贈り物である黄金の宝刀を奪います。
ここで、ブロンソンは、アラン・ドロンの裏切りにあい、ガンマンとサムライの、奪われた金と刀を追いかける、荒野の大追跡劇が始まるというストーリー。
外国映画で、取り上げられる「侍像」は、えてして、あちらの方たち好みに脚色されていて、見ている日本人としては、いかがなものかということになることも多いのですが、そのあたりは、世界のミフネに対して、さほどの無礼はなかったようです。
まあ、フランス製の西部劇ですから、多少の時代考証の甘さは、目をつぶるとして、まずは、娯楽映画として楽しめましたので合格といたしましょう。
コメント