2002年製作の映画。
監督は山田洋二。
なるほど、「寅さん」の監督が、時代劇を撮ると、こういう映画になるんだなと納得した次第。
徹底した時代考証を経て、東北の寒村の日常がリアルに再現。
特に、子供たちの自然な演技を引き出した手腕は、さすが山田監督。
我々が当たり前に見ていた時代劇演出のウソを徹底的に排除し、まるでドキュメンタリーでも見ているような日常の中から、主人公の苦悩を鮮やかに浮かび上がらせています。
この映画での山田監督の功績その一。
それまで、プライベートでのスキャンダルで芸能活動が休業状態であった宮沢りえを、演技者として復活させたこと。
とにかく、この映画での彼女は素晴らしかった。
清兵衛の子供たちと、綿布団をたたむシーン、果し合いに出向く清兵衛の身の回りを世話するシーン、清兵衛の告白に苦悩するシーン。
彼女の演技への意欲が、ひひしひしと伝わってきましたね。
山田監督は、過去に、「幸福の黄色いハンカチ」で、同じように売れないことでせ芸能活動から遠ざかっていた武田鉄矢を、演技者として復活させた実績のある監督。
山田監督には、そういう人材をキャッチするアンテナがあるようです。
そして、功績二つめ。
これもそのアンテナがキャッチしたものでしょうか。
演技経験皆無の舞踏家・田中 泯を発掘して起用したこと。
その風貌もさることながら、舞踏で鍛えたその独特の動きが秀逸。
ラストの民家の中での清兵衛との決闘。
これが、定番時代劇のお決まりの殺陣シーンとは、明らかに一線を画す、リアリズム溢れるシーンでした。
これが映画初出演とは思えない田中泯の圧倒的な貫禄と、鬼気迫る威圧感。
この映画の撮影時、彼はすでに58歳。
しかし、この演技が評価されて、彼はその後、いろいろな映画で、俳優としても、その存在感を発揮していきました。
しかし、個人的に一番引き付けられたのが、やはりなんといっても、山田監督が徹底的に拘ったリアルな日常風景。
下級武士の、清貧ではあるけれど、生活者の息吹を生き生きと感じさせる家事全般のさりげないシーンの数々。
寅さんシリーズでも、そういうシーンを上手に掬い上げるのは山田監督の十八番。
思わず、うなってしまいました。
定年後は、貧乏承知の田舎暮らしをしようと画策している身としては、大いに感じ入るところがありましたね。
田舎暮らしの覚悟はできておりますが、スケベオヤジとしては、願わくば、ご近所に、あの宮沢りえのような、美人がいてくれればと願う次第。
田舎へ引っ込んでも、また見たくなる映画でしょう。
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