2013年制作の日活作品。
監督はこれが長編デビューの白石和彌。
恐ろしいくらいコロコロと人を殺す映画だけれど、これすべて実話だというから恐ろしい。
映画のネタになったのは、茨城県で起きた「上申書殺人事件」。
殺人事件で死刑判決を受けた暴力団組員が、刑務所内で余罪を告白する。
死刑囚役はピエール瀧。
ピエールに指名されるジャーナリストに山田孝之。
初めは半信半疑だが、取材を続けていくうちに、事件を裏で糸を引く「先生」と呼ばれる不動産ブローカーの存在を知る雑誌記者。
この悪徳不動産役に、リリー・フランキー。
彼の悪役ぶりが、妙にリアルで恐ろしかった。
保険金目当てに、その家族に依頼されて電気屋の店主を酒を飲ませて殺すシーン。
度の強い酒を老人の口にねじ込んで、恍惚になる演技。
これが本職の役者ではない男の演技かと感心した。
本当に怖い男とは、じつはこんなキャラなんだと、妙に納得させられた。
現在オンエアしている、テレビ東京の「金と銀」。
これも、リリー・フランキーがしたたかな金貸しの役でキャスティングされているが、この作品の演技が監督の目に留まったかもしれない。
そんな悪役をやったかと思えば、普通の小市民役も無理なくこなす。
どんな役をやっても、その役に不思議なリアリズムを持たせてしまうのは、案外彼が本職役者ではないからかもしれない。
いろいろな肩書を持つ彼だからこその、人生における経験値が複雑に絡まって、彼の味になっている。
彼自身は自分は役者だなんて思っていないのかもしれないけれど、ちょっと目の離せない役者だ。
ポスターを見ると、山田孝之は、かなり怖い顔をしてたので、おそらく悪役を演じているのかなと思いきや、家庭に問題を抱えたジャーナリストの役。
「この事件は、闇に埋もれさせちゃいけない事件なんだ。」
なんて、女編集長にかみついていたが、そのモチベーションに説得力がない。
悪徳不動産ブローカーを殺人罪で法廷に引きずり出すことで、家庭のストレスを発散させているようにしか見えなかったのは悲しいところ。
だから、妻役の池脇千鶴には、そのあたりを見透かされてこういわれてしまう。
「楽しかった?」
リリ・フランキーのもとで、人を殺しまくるヤクザの役がピエール瀧。
刑務所の中でアクを落とされた顔と、シャバでギラギラしているヤクザの顔がまるで違うのでビックリ。
芸達者な役者だなと思っていたら、この人も本職の役者ではありませんでした。
「電気グルーブ」の人なんですね。この人。
石野卓球なんかと、音楽をやっていた人です。
非常に漫画にしやすい顔で、イラストを描くものとしてはムラムラするのですが、いかがでしょうか。
リリー・フランキーとは正反対の強面のヤクザを巧みに演じていました。
この巧みな「素人」の演技に、本来は芸達者なはずの山田君がやや苦戦。
ちょっと彼に感情移入するところまではいきませんでしたね。
仕事で、老人ホームへ行くことも多いので、なんだか身につまされる映画でした。
ホームで余生を送っているじいちゃんにばあちゃん。
甘い言葉には気をつけなさいよ。
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