これは、ちょっと感動的なシーンでした。
平昌オリンピック大会11日目。
スピードスケート女子500m。
オリンピック・レコードで見事に金メダルに輝いたのは、小平奈緒選手。
バーンクーバー、ソチとオリンピックでメダルに手が届かなかった悔しさをバネに、一歩ずつ確実に成長して、31歳で迎えたこの平昌でついに、この高みにたどり着きました。
そして、その10年間、小平選手が見上げてきた頂点にずっと君臨していたが、この種目の絶対女王であった韓国の李相花。
彼女は、バンクーバーとソチの金メダリスト。
今大会には、彼女のオリンピック三連覇もかかっていました。
小平が彼女を目標に、そして良きライバルとして友情を育みながら迎えたこの日の大一番。
小平は、14組目のインスタートで、チェコのエルバノバと同走。
この一発勝負に、彼女は参加選手中ただ一人37秒を切る36秒94のオリンピックレコードで渾身のレース運び。
ゴール後、両手を差し上げてガッツポーズです。
李相花は、その直後の15組で、日本の郷亜里砂と同走。
小平の快心の滑りに興奮のボルテージも最高に上がっていた会場。
しかし、ここで彼女は、観客たちに向かって、唇に人差し指を当てるポーズ。
次のレースの走者の集中力が乱れない気遣いをみせました。
李相花とは、あくまでも正々堂々と戦いたいという、彼女の心情の表れでもあったのでしょう。
小平のフェアなスポーツマンシップにグッときた場面でした。
そして、15組目スタート。
李相花は、スタートの100mのラップでは、小平を上回りましたが、最後のカーブで自らのトップスピードを支えきれず、バランスを崩して失速。
タイムで小平に0.3秒及びませんでした。
最終組が滑り終わって、小平の金メダル、李相花の銀メダルが確定。
自国の国旗をまとった二人は歩み寄ります。
そして、すべての重圧から解放されて、今日の勝者となった盟友に泣き崩れる李相花を、日の丸で優しく包み込むように、抱きかかえる小平選手。
このシーンには、やられました。
何度見返しても涙腺が爆発。
オリンピックの開催国代表の金メダル候補としての重圧。
そして、この種目を10年に渡り牽引してきたトップアスリートとしての重圧。
これを十分すぎるくらいに理解できる小平は、彼女を抱き寄せながら、その場でこう声をかけたのだそうです。
「チャレッソ(よくやったね)。私はあなたを心からリスペクトします。」
勝負には敗れた李相花ですが、ライバルとして切磋琢磨してきた小平から言われたこの一言は嬉しかったに違いない。
また、あの場面で、それがいえる小平も立派。
二人並んでのウイニングランは、今までのゴタゴタした日韓問題も吹き飛ばすくらいのインパクトがありました。
まさに、スポーツの感動は政治なんて軽々と超えていくもの。
これこそオリンピックの醍醐味です。
その美しいスポーツマンシップは、あの会場にいた誰にも伝わったと思いますね。
その証拠に、表彰セレモニーの時、韓国の観客からは、自国の李相花と、同じくらい大きな声援が、このさわやか過ぎる金メダリストにも送られていました。
決勝で、彼女は、それまで使用していた、ダブルカラーのメガネを、シックな黒縁に変えていました。
こちらの方が、間違いなく彼女には似合ってましたね。
さあ、そして、もうひとつ金メダル。
スピードスケートの女子団体追い抜き。パシュートですね。
これは、スピードスケートの団体競技。
チーム・ジャパンのメンバーは、高木美帆、高木菜那、佐藤綾乃、菊池彩花。
団体競技にチームワークで勝利する。
これは、昔からのオリンピックにおける日本の伝統的お家芸。
個人種目よりも、応援する方としては、テンションが上がる競技です。
日本は、カナダとの準決勝を制して決勝進出。
準決勝では菊池選手を起用して、佐藤選手を温存したチームジャパン。
決勝の相手は、強豪オランダ。
スタードでリードした日本チームでしたが、中盤にかけて逆転されます。
しかし、高木美帆が先頭になると、一気に加速。
あれよあれよとタイム差を縮めて、最終的には、一秒以上の差をつけてゴール。
個人技のオランダに、日本がチームワークで勝利した瞬間でした。
チームジャパンは、とにかく、その隊列が美しいこと。
また先頭の交代シーンもまたく危なげなし。
ゴール後、三人は高く腕を差し上げてガッツポーズ。
これで高木美帆は、一大会で、金銀銅のすべてのメダルを獲得するという快挙。
日本のメダル獲得も、長野オリンピックの10個を抜いて過去最高。
メダルのチャンスはまだまだあり。
平昌オリンピックには、目が離せません。
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