「戦国自衛隊」は、1979年の角川映画。
原作は、半村良の小説。
当時の角川映画は飛ぶ鳥を落とす勢いで、邦画界に旋風を巻き起こしていましたね。
角川映画といえば、なんといってもその派手な宣伝。
当時の我が家は、本屋でしたので、ノボリやらポスターやら立て看板やら、角川書店からの宣材がどんどん届いて、店に飾っていたのを思い出します。
当時、コマーシャルや予告編は、たっぷり見せられた記憶はあるのですが、果たして、この映画の本編を見ていたか。
おそらく公開のリアルタイムは見ていません。
見ているとしたら、後に大学生になってからの名画座巡りで見たかどうか。
しかし、今回この作品を、Amazone プライムで拾って鑑賞してわかりました。
この作品はいままで未見。
今回が初鑑賞です。
こんなふうに、見た気になっているけれど、実際は見ていないという映画は結構ありそうです。
監督は、斎藤光正。
アクション監督を、千葉真一が主演と兼任。
千葉は、ヘリコプターからロープ一本でぶら下がるアクションや、乗馬のシーンを吹き替えなしで演じて大ハッスル。
映画は、当時としては破格の11億5000万円の製作費を投じています。
娯楽要素満載の内容なのですが、いろいろと手を出しすぎて、ちょいととっ散らかりすぎたような印象は拭えないというのが、正直な僕の感想。
まず、東映お得意の時代劇がベースにあって、その舞台に自衛隊の一個大隊をそっくりタイムスリップさせるというSF要素を盛り込んだこと。
これだけの製作費をつぎ込んだわけですから、角川さんとしては、絶対にコケる訳にはいきません。
こういう時、当時の東映には、まずハリウッドに習えという鉄則があります。
「ゴッドファザー」の大ヒットを範にして「仁義なき戦い」が作られ、「タワーリング・インフェルノ」の大ヒットを範にして「新幹線大爆破」。
では、この当時のハリウッドでなにが大ヒットしていたのか。
そう、あのSF映画の金字塔「スターウォーズ」というわけです。
時代劇に、SF映画の味付けをしたのは、角川春樹のかけた保険だったかもしれません。
しかし、監督の斎藤光正といえば、テレビの「ゆうひが丘の総理大臣」や「あさひが丘の大統領」を撮った青春ドラマの大御所。
「自分が監督するからには、青春映画でないと意味がない」
彼は、この映画の監督をやるにあたって、こんなことを言っています。
というわけで、監督は、この作品を「SF青春時代劇」と銘打ち、映画のあちこちで、挿入曲のイメージシーンなど、お得意の青春ドラマ的演出を多用。
さあそして、かたや、アクション監督の千葉真一。
彼は彼で、この映画の演出にあたっては、クリント・イーストウッドの「戦略大作戦」を手本にしたと公言しています。
「戦略大作戦」といえば、軍隊の荒くれ男たちが活躍する硬派のアクション・コメディ。
青春映画とは、全然毛色の違う映画です。
なんかチグハグですよね。
プロデューサー、監督、主演と、それぞれ気合は入ってはいたのですが、演出意図はバラバラ。
はたして、一本の映画に「スター・ウォーズ」と「アメリカン・グラフィティ」と「戦略大作戦」の娯楽エッセンスをごっちゃ混ぜにして、いい映画に仕上がるものなのか。
これには、ちょっと無理があると思いますね。
ちょっと詰め込みすぎました。
しかし、全体的に散漫な印象は拭えないものの、ポイント、ポイントはさすがお金をかけていめだけあって見所は満載。
とにかく、サービス精神旺盛な映画で、当時大人気だった薬師丸ひろ子をカメオ出演させたり、真田広之にワンポイントで、ヘリコプターから飛び降りるアクションを演じさせたり、嬉しくなってしまうシーンはふんだん。
まあ、なんとか、かけた制作費は回収出来た模様。
角川さんも、抵当に入れた自宅は手放さなくて済んだようです。
設定がぶっ飛んでいるだけに、見ているとなにかにつけて、ツッコミどころも満載の映画なのですが、あまりつついても野暮になるのでひとつだけ。
戦国時代に残る二等陸士を演じたのがミュージシャンのかまやつひろし。
この作品には、けっこう音楽系の出演者も多いのですが、いくら映画とはいえ、自衛隊員でムッシュのあのヘアスイルのままというのはいかがなものか?
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