イラストレーターで、エッセイスト、そして映画監督でもあった和田誠さんが、7日に亡くなりました。
享年83歳。
和田誠さんとの最初の出会いは、僕の場合はエッセイ。
特に、「お楽しみはこれからだ」シリーズは、愛読書でしたね。
これは、映画の中の名セリフを軸にして、展開していくシネマ・エッセイ。
僕が、映画にのめり込んだのは、1970年代はじめ。
クラシックの映画は、そこから遡って、大学生の頃に、本格的に名画座巡りをして観に行くようになるのですが、和田さんのこの本は、大いに参考にいたしました。
名作「カサブランカ」のラストのセリフ。
Louis, I think this is the beginning of a beautiful friendship.
(ルイ、美しい友情の始まりだな)
「脱出」のローレン・バコールのセリフ。
You know how to whistle, don't you, Steve? You just put your lips together and blow.
(口笛は吹ける? 唇を突き出すのよ)
これみんな、映画ではなくて、和田さんの本から覚えましたね。
そして、本の中にふんだんに出てくるイラスト。
もちろん、全部和田さんの描いたもの。
極限まで簡素化した和田タッチは、実に味があって大好物でした。
僕がこうやって、自分のブログに、拙いイラストをのっけたがるのも、これすべて和田さんの著書の影響。
彼のイラストは好き過ぎて、今も自分の部屋のあちらこちらに貼ってあります。
とにかく多芸な和田さん。
映画好きが高じて、ついには映画監督にまで進出。
その第一作目が「麻雀放浪記」でした。
とにかく、映画を知り尽くしている和田さんです。
初監督作品でありながら、卓越した技量を発揮されていました。
そして、二作目となるのがこの「怪盗ルビイ」。
この映画、実はちゃんと原作があります。
ヘンリー・スレッサーによる「怪盗ルビイ・マーチンスン」。
天才的なアイデアで、強盗を計画するも、すべて失敗していくというピカレスク短編集です。
しかし、この原作の主人公は実は男。
その原作を、和田監督は、大胆にも当時バリバリのアイドルだったキョンキョンに演じさせます。
この辺りが、和田監督のセンス。
そのコメディタッチに、なんとも古き良きクラシック映画の香りがプンプン。
少々設定の甘いところや、ちょっと無理があるんじゃないのという箇所が、キョンキョンを魅力的に撮ることで、上手に丸め込んでしまいます。
映画なんだから、楽しければいいでしょう。
はいその通り。
お相手は、若き日の真田広之。
演じるのは、キョンキョンに振り回される純朴な青年役。
彼のオフビートなコメディ演技もなかなかのもの。
映画の中では、ハリウッドのミュージカル映画テイストで、キョンキョンと仲良くデュエットまでしてます。
ナンバーは、「たとえばフォーエバー」
調べたら、若き日の彼は、ちゃんと歌手としてレコードまで出してました。
レコードといえば、「怪盗ルビィ」の主題歌は、大瀧詠一作曲によるもの。
YouTube で、「夜のヒットスタジオ」バージョンを確認しましたが、はて、これ映画の中で使われていましたか?
(確認したら、映画のエンディングでは、ジャズバージョンになっていました。)
ちなみに、2曲とも作詞は和田さん。
「たとえばフォーエバー」にいたっては、作曲まで手がけていらっしゃいます。
彼自身が楽しんで、この映画を作っているという図がありあり。
こういうコメディ映画は、実にセンスがモノを言います。
やり過ぎてもしらけるし、やらな過ぎても面白くない。
そのあたりのさじ加減は、さすがにわかっていらっしゃる。
自分の映画を、エッセイストの和田さん自身はどう語るのか。
そのあたりはちょっと興味があります。
探してみればありそうですね。
ちなみに、和田さんの奥様は、料理研究家の平野レミさん。
楽しそうな家庭で、おそらく「カンゲワーチ」は・・・
遅ればせながら、心よりご冥福をお祈りいたします。
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