さて、埼玉県小川町「風の丘ファーム」での、有機野菜インターンシップ後半戦です。
僕は、今まで定植用の培養土は、もちろんホームセンターで購入していました。
しかし、市販の培養土には、有機ではない化学成分も混じっているとのこと。
ドキリとしました。
もう、その時点で、僕らがやっていたのは有機農法ではないということです。
では、有機農家の定植までの手順を紹介致します。
まずは、土づくり。
「土ふるい」という作業から始まります。
こんなかんじ。
トラックでうねった状態の土を、「土ふるい機」にかけます。
そうすると、このマシーンにより、土は「ごろ土」と「サラ土」に分離されます。
「ごろ土」は、定植用ポットの水捌けをよくするために、ポットの下に敷くのに使われます。
そして、折りたたみコンテナに入れられた「サラ土」は、つぎの段階の作業にかけられます。
これが、「土焼き」。
「土ふるい機」で、分離されたばかりの土には、雑草や雑草の種が混ざっている状態。
この土を持ち帰り、鉄板の上で焼いて、熱殺菌処理。
雑草などが生えてこない状態の焼き土にします。
土だけでなく、腐葉土も同じように焼きます。
そして、これを焼き土を2、焼き腐葉土1の割合で混ぜて、かき回します。
これで、完全有機農法の、定植用培養土の完成。
そして、次の作業が、「鉢上げ」です。
これは、育苗バケットで、種から発芽して、双葉になった状態の苗を、定植用ポットに、移植していく作業。
まず、その前に大前提。
なんで、初めからポットで育てないで、育苗バケットを使うのか。
もちろん、発芽までのタイミングなら、その方がスペースを取らないということもあります。
しかし、もっと大切なポイントは、発芽しない苗のリスク回避ですね。
ポットには、苗は一つずつしかいれませんので、初めから鉢で育てると、発芽しない場合、ポットも土も手間も、無駄に使ってしまうということ。
育苗バケットで育てておいて、ちゃんと発芽した苗だけをそこから取り出して、「鉢上げ」していけば確実だということです。
さて、教わった「鉢上げ」の手順。
まず、ポットの下に、底の穴を塞ぐ程度に、「ゴロ土」を敷きます。
そして、この次が独特なんですが、ポットを並べたトレイごと、斜めにして、サラサラの培養土を斜めになるようにいれていくですね。
そして、それをそっと作業台の上に置いて、育苗バケットの一本一本の苗を、ポットに対しては、斜めに立てかけていくように置いていくわけです。
ホームセンターで売っているポットでは、斜めに苗が出ている、こんな状態の苗は見たことがありません。
どうしてこんなことをするのか。
説明はこうです。
発芽したばかりの根は、とても酸素を必要とする。
ポットを水平に立ててしまうと、根はどうしても、ポットの下になってしまう。
それは苗の根が、酸素を取りにくい状態。
それを斜めにすることで、根を地表面に対して浅くセットする。
これにより、根は酸素を取りやすくなり、培養土との活着も進む。
根がしっかり育てば、茎も葉も元気に育つ。
なるほど、理にかなっています。
要するに、ホームセンターの園芸コーナーで売っている苗のポットは、完全に購入者からの「見た目重視」。
しかしそれは、苗たちの生理には、準じていないということです。
勉強になりました。
さあ、そして、ここで「鉢上げ」をした、苗たちをいよいよ、畑に持っていって定植です。
これは、僕も毎年繰り返してきたこと。
この作業をプロの農家は、どうするのか。
興味津々です。
まずは、我が畑でも同じ。
定植のために、一番最初にすることは、土をうねってからの、マルチ貼り。
我が畑でも、土をひっくれ返すのは、トラクターで行いますが、マルチを貼る作業は、鍬を持っての完全手作業。
しかし、「風の丘ファーム」では、ご覧の通りの広大な畑です。
これをすべて、手作業でやっていては、それだけで一日の作業が終わりです。
(いや、終わらないかもしれない)
どうするのかと思っていたら、登場したのがこのマシン。
マルチ貼り専用のトラクターです。
見ていて目が点です。
ほほう、こんなものがあったのか。
もちろん、素人農家で買えそうなシロモノではありませんが、参考にはなりました。
この長い畝に、あれよあれよという間にマルチが貼られます。
さて、このマルチですが、触ってみると、僕が今まで使ってきたマルチと比べて明らかに薄い。
聞いてみました。
「ちょっと薄いみたいですが、安いんですか?」
「いや、高いです。」
「は?」
どういうことか。
実はこのマルチ、生分解マルチというシロモノ。
なんと、任務が終了したら、畑にそのまま漉き込んでしまえるマルチなんだそうです。
またしても、目が点。
僕は、今シーズン、なるべくマルチを使用しないで、定植をしようと考えていました。
もちろん、使わなければ、草取りや、水やりの手間は増えます。
しかし、それくらい増えてもいいかなと思ってしまうのは、秋になってから、それをきれいに撤収する手間が問題。
これがかなり面倒くさいわけです。
自然のもの以外で畑に持ち込んだものは、すべてきれいに回収する。
これが野菜畑の鉄則です。
しかし、任務を終える頃のマルチは、もうかなりボロボロ人っていて、ほぼ完全には撤収できません。
どうしても、端切れが、畑のあちらこちらにバラバラと残ってしまう。
これがどうにも、生理的に嫌なんですね。
なので、いっそのこと、マルチを使わずにやってみるかと考えていたわけですが、なるほど、こういう代物があれば話は別。
今回は、社長の好意で、この生分解マルチの余ったものをいただいてきました。
今回の定植で、まずは試してみることにします。
さて、苗植えです。
これも、我が畑では、貼ったマルチに穴あけ機で、一個一個穴を開けて、手作業で植え付けています。
これなら、毎年やっていることなので、お任せあれというところでしたが、「風の丘ファーム」では、ここでも専用マシンが登場。
人間は、マシンを前に進ませながら、くるくる回っている受け皿に、苗を放り込んでいくだけ。
あとは、機械がテンポ良く、マルチに穴を開けて、苗を植え込んでいってくれます。
ちなみに今回の定植したのは、キャベツ。
これだけ広い畑の、キャベツの苗植えが、この二つの機械で、短時間で終了。
後は、きちんと、防虫ネットをかける作業。
防虫ネットは、霜除の意味合いもあります。
さてこの防虫ネット。
これも、僕らが使用するホームセンター購入のものとは、スケールが違います。
目は一ミリサイズのもの。
これが、ひとロールなんと200mのものを使います。
トンネル支柱組んだ畝に、防虫ネットをかぶせていき、ところどころ風で飛ばないように土をかけて仮押さえ。
そして、トンネルとトンネル間を管理機で移動しながら、ネットの裾に土を盛っていきます。
これで、虫や鳥たちをシャットアウト。
これも、畑作業では結構しんどい作業なのですが、機械を使えば、みるみるすすんでいきます。
もちろん、どのマシンも我が畑の規模では使えるものではありませんが、感心しきり。
ある程度の規模になってくれば、当然必要になってくるであろう、プロの農家必殺の秘密兵器をたっぷりと見せていただきました。
とうわけで、今回の有機農家「風の丘ファーム」での研修はこれで終了。
社長には、研修五日間の間、ランチは毎食用意していただきました。
もちろん、畑の野菜をふんだんに使った健康メニュー。
たいへん美味しくいただきました。
ご馳走様でした。
そして、最終日には、ファームで大切に育てた苗もプレゼントしていただきました。
リーフレタス、ブロッコリー、キャベツなどなど。
早速、いただいた生分解マルチを使って、畑に定植させていただきます。
みなさん、いろいろとお世話になりました。
また、勉強しに伺います。
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