羊の木
元関ジャニ∞のメンバーだった錦戸亮主演のミステリーなローカル人間ドラマ。
などと偉そうなことを言っていますが、この人の顔と名前は本作で初めて知った次第。
最近の映画は、DVD在庫にもないので、もっぱらPrime ビデオからチョイスして勉強させてもらっています。
ただ主役は知らなくても、富山県の架空の町「魚深市」(魚津市はありますね)に集まってくる6人のワケアリの面々には、知った顔も多数ありました。
松田龍平、北村一輝、田中泯、優香、市川実日子などなど。
例によって、コミックが原作のようですが、その設定がいかにも上手。
過疎化の進行する北陸の海に面した小さな市が、実刑を受けた囚人を地方で更生させるという国のプロジェクトに協力して、6人の受刑者を極秘裏に迎え入れるというところから物語は始まります。
つまり6人全員が何らかの理由で、殺人を犯しているわけです。
そして、ストーリーが進行している中で、その理由が一人一人次第に暴かれていきます。
そんな設定ですから話はどうしてもミステリー的な展開に。
小さな町ですから、そんな6人が集まれば、ちょっとずつ波風は立ちます。
これは、そのうちなにかとんでもない事件が起きるなと匂わせつつ、小さな波風は次第に大きくなっていき、ついにその事件が起こります。
起こすのは誰か。
ネタバレは控えますが、これは、映画冒頭の6人の紹介シークエンスの演出を見ると、平均的映画リテラシーがあれば、すぐに察しは尽きます。
しかしそれはそれ。
本作は基本として群像人間ドラマです。
そんなことよりも一人一人のドラマが、きちんと描けてさえいれば、問題はなし。
監督の吉田大八は、「桐島、部活やめるってよ。」で、主人公不在という奇抜で斬新な設定を、上手に裁いて、その名を上げた人です。
本作においても、そのあたりの起承転結のつけ方には非凡なものを感じます。
しかし、本作には個人的には特筆すべきキャラクターがいました。
映画の中ではサイド・ストーリーとして描かれていますが、元介護士という受刑者を演じた優香のシークエンス。
本作における彼女の設定がちょっと凄まじい。
なんと、セックスの最中に夫を絞め殺してしまって、懲役7年を言い渡されたという元受刑者です。
その夫がもともとそういう性癖の持ち主で、彼女は彼を喜ばせようという一心でそれに応えていたわけなのですが、それが愛ゆえの殺人とは理解してもらえずに、刑が確定したというわけです。
その病的なまでの恋愛体質が、本作では妙にエロイんですね。
映画の冒頭で、買ってきたТシャツに着替えた彼女の自慢のバストが強調されるカットあたりで、すでにただならぬ雰囲気はありました。
介護施設に勤め出した彼女でしたが、施設にいる主人公の父親と、次第に怪しい雰囲気になっていきます。
まず背中越しに歯を磨いてあげるシーンでゴクリ。
老人の口元についた米粒を指でとって、そのまま口に入れながら見つめるなんてシーンもありました。
しかし、極めつけはなんといっても、たまりかねた老人に壁ドンでキスされてしまうシーン。
AVならちょくちょく見かけるシーンではありますが、一般映画では、ちょっと記憶にないくらいの激しいキスシーンでしたね。
しかも、演じているのが優香であれば、そのインパクトもなおさら。
元々は、グラマラスな肢体を惜しげもなくグラビアで披露して一気に人気の出た人でしたが、その彼女も今は41歳(映画撮影時は37歳)。
いつのまにか、こんな役もこなせる女優になっていました。
本作では、思わぬ拾い物で、いいものを見せてもらいました。
主人公の錦戸亮が演じたのは、このプロジェクトの秘密を知る市役所職員。
会社を定年退職した後、各地方都市の市役所を通じて、全国の農業視察をしていた時期があるのですが、対応してくれたのは、ちょうど主人公のように、身分証
を首からぶら下げた職員の方々でした。
過疎の地域の地方公務員の皆さんは、おしなべてみな丁寧で親切でしたね。
中には、もうすぐ人口2000人を割り込むなんていう村もあり、埼玉のこんな得体のしれない老人にでも、皆さん熱心に、村の素晴らしさをアピールしてくれました。
今は成り行きで、埼玉に住んだまま野菜作りをしていますが、こちらでなんとか農村で生きるスキルなどを磨いた後には、またお世話になることもあるかもしれません。
その節には、どうかよろしくお願いしたいと思います。
幸いかな、人を殺した経験だけはありませんので。
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