ディズニー+月間を終えて、久しぶりにAmazon Primeに戻ってきたら、以前から見たかったこの作品が新しくエントリーされていて、早速観させていただきました。
このB級感満載なタイトルに、まずしびれます。
あえて、このタイトルにした潔さにまずは感服。
しかし、本作の監督は今をときめく黒沢清なので、B級とはいえ、なめてはいけません。
1992年公開の作品ですので、ちょうどバブルが弾けた頃の作品。
登場人物が、まだ携帯電話を持っていないことが、なぜか新鮮でした。
ピンク映画で監督デビューした黒澤監督が、モダン・ホラーの旗手として、頭角を表し始めた頃の作品です。
ホラー映画好きとしては、この人の作品は要チェックですので、本作も以前から追いかけていたのですが、なかなか見る機会がありませんでした。
TSUTAYAやGEOでも、まず見つからなかった作品です。
主演の久野真紀子は、この映画でしか知らなかったのですが、シリアルキラーを演じた松重豊は、よく知っています。
188cmの日本人離れした長身と、強面の面構えで、アクの強い悪役を長年に渡って演じ続けてきた人ですが、2012年から始まった「孤独のグルメ」の井之頭五郎というはまり役を得て、全国区の人気者になりました。
結構好きだった小林薫主演のドラマ「深夜食堂」でも、寡黙なヤクザ役で存在感を出していて好きでした。
その彼が、後の俳優としてのイメージを決定的にする怪演を見せてくれたのが本作だということは、前情報として知っていたので、以前から「見たい映画リスト」には入れていたのですが、公開30年後になってやっと見ることができました。
こういうマイナーなB級作品も結構ラインナップに揃えてくれる、Amazon Primeは、結構侮れません。
いいんです。B級には、B級の楽しみ方があるのですから。
ディズニーplusのラインナップのような、お金をかけた超娯楽エンターテイメントも、もちろん楽しいですが、超高級素材ばかりを揃えたフルコース料理ばかり食べていても、さすがに食傷気味になります。
限られた制作費で作られるB級ホラー映画にも、それはそれなりに、楽しみ方はあります。
給湯室を透明のカーテンで仕切るあたりは、「サイコ」へのオマージュ。
案の定、その向こうを、長身のシリアルキラーの影が、横切ってニヤリ。
黒澤監督のカメラは、とにかく動きます。
そして、あえてカットを割らない引きの長回しも多様。
のちの黒沢作品のテイストが、すでに十分散りばめられていました。
見終わってみると、なんでこの警備員はこんなに人を殺すんだと思ってしまいましたが、多分冒頭で説明らしき物もあった気がしますが、覚えていません。
まあいいでしょう。ホラー映画に説明はいりません。
殺人鬼が、ヒロインが落としたピアスの片方をつけているシーンだとか、ビルに向かう殺人鬼の車のフロントグラスに、ヒビが入っている不気味さとか、やはりホラー映画は、映像勝負です。
冒頭で、ヒロインを乗せているタクシーの運転手が下元史郎という人。
まだアダルト・ビデオなどなかった頃に、散々見ていたピンク映画やポルノ映画では、ちょくちょくと見かけていた顔でしたのでニンマリ。
あの頃の男優は、今のように、そのものの行為などないにも関わらず、ハリボテの様な前貼りを股間にぶら下げて、演技だけでエロをサポートしていたと聞いておりますので、今のAV男優よりもよりも大変だったかも。
その他にも、黒澤監督の人脈で、知っている顔もチラホラ。
ちょっと変態気のあるヒロインの上司役に大杉漣。
あっさり殺人鬼に殺されてしまう役で内藤剛志。
ラストで、ワンシーンだけ洞口依子。
とにかく、低予算で作られている映画なので、舞台になるのはビルの中だけ。
主要キャストも、警備員たちと、商社の絵画取引部門の数名の社員のみ。
こんな極めて限られた条件の中で、如何に恐怖を演出するアイデアを出せるか。
Bホラー映画の醍醐味はこれに尽きます。
マント風の制服と、あの警備帽を被った松重豊のシルエットが、何やらナチスドイツの将校のようにも見えるあたりは、黒澤監督の狙いだったかも。
僕は学生時代に、100種類を超えるアルバイトを経験しましたが、友人から紹介されたビル管理の夜勤警備員の仕事だけはパスしていたしました。
その理由は単純明快。
だって、懐中電灯持って、誰もいないビルの中を見回るのは、怖いでしょ!
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