運送業界といところに身をおいていますと、僕ほどのスキルでも、ITに関しては、けっこう「わかっている」とか「すすんでいる」などといわれてしまいます。
確かに、自前のパソコンは、4台ありますし、一応自分のホームページもあったりしますので、世の中の平均からいえば、ちょっとは先に進んでいるかもしれません。
但し、僕の場合のITは、映画、音楽、グラフィック、文章表現などなど、たまたま僕の趣味のほとんどが、パソコンというツールで、より楽しく「遊べる」という類のもの。
会社で、僕のスキルが活用される場面は、基本的に、この路線の延長ですから、直接会社のビジネスに貢献しているというものでもありません。あくまで、役に立っている程度。
ただ僕自身、根が「新しい」もの好きな性分ですから、面白そうなソフトがあれば購入してきては試し、使えそうなものは、会社のスタンダードに昇格ということは、けっこうあります。
要するに、自分が楽しむ。これが基本ですね。
しかし社内レベルなら、ITに詳しいといわれている僕自身、世の中のITの最先端から較べれば、まるで素人同然。
ただ、素人ながらも、ITの最先端からみたら、自分はいったい「どのあたりにいる」素人なのかということは、この本を読んで、わかったような気がします。
「ウエブ進化論」。著者は、梅田望夫氏。
著者の主な仕事は、日本のIT企業経営コンサルタント。ITの聖地シリコンバレーに移住し、ITの最先端で活動した経験を活かした様々な著書があります。
彼が、この本の中で、紹介及び提示したいくつかのキーワードは、そのまま、現在のIT業界のトレンドになっていますね。
記憶に残ったところを、いくつかあげてみます。
チープ革命。
チープ革命とは、IT技術革新によりITに関する「必要十分」な機能のすべてを、誰もがほとんどコストを意識することなく手に入れることができるようになるという革命です。
インターネットが登場して10年。
このIT関連コストの劇的な低下と検索技術の革新は、ネット社会の地殻変動を招き、リアル世界との関係にも多大な影響をあたえるということですね。
「ムーアの法則というのがあるそうです。
これは、集積回路上のトランジスタ数は18ヶ月ごとに倍になるというもの。
これが、今ではIT全体の進歩の目安にもなっています。このペースで、チープ革命も進んでいくよという指針にもなる法則。
確かに、ハードディスクやメモリーは、びっくりするほど安くなりました。
Web2.0
誰もがパソコンを自由に使えるようになり、ブログなど情報発信を容易にする手段が普及し、Googleの検索エンジンなど、情報を取捨選択する方法が広まったことで、Web の世界は激変。これがWeb2.0です。
これまでのインターネットの世界を、とりあえず Web 1.0 としてくくり、次世代のインターネット文化を、Web 2.0として区別るんですね。
情報の受け手であったユーザーが情報の発信者へとシフトし、インターネットの世界ではユーザー参加型のモデルが広まってきていることは、僕自身もだいぶ実感しています。
また情報の発信者が増えたことで、コラボレーションによって、より有益な情報が生み出される」という、現象も起こりつつあります。
インターネットの世界は、情報をゲットするだけの場ではなく、発信する場にもなってきたということですね。ブログなどを代表とする、双方向の情報交換ツールが充実してきました。
「こちら側」と「あちら側」
著者は、ネットの「あちら側」と「こちら側」というユニークな視点で、Webの進化がもたらす影響を解説しております。
まずは「あちら側」。
これは Google、Amazonなどがネット上でサービスを展開する世界。
そして、「こちら側」とは、企業内などの、「閉じた情報システム」におけるローカル環境を指します。
「あちら側」では、Googleなどの圧倒的な資金力と知の集積により、高品質なサービスが無料で提供されるようになりました。
地球規模で、航空写真で撮った俯瞰の映像とリンクするGoogle Earth などは圧巻。これがタダですから驚きです。
一方の「こちら側」は、依然として高いコストを投じて、閉じたシステムを開発し続けています。
梅田氏は、今後10年間で、システムや情報をこちら側に持つ時代から、あちら側のサービス、情報を利用する時代へシフトすると予想します。
不特定多数無限大
多くの人々がネットにつながることによって、「あちら側」には不特定多数無限大の人々が存在していると捉えるわけです。
情報を「あちら側」でオープンにすると、不特定多数無限大の存在によって伝播され、より優れた正確なものへと醸成されるという流れですね。
ネットでは、不特定多数の人々の協働作業が容易であるということ。
それによってさまざまなものが「あちら側」で生み出されるということ。
公開されたプログラムを自由に個人レベルで使用できるというオープンソースソフトウェアは、まさにその代表例。
ウィキペディアやソーシャルブックマーク、フォークソノミーなどもその流れです。
では、ネットの「あちら側」で拡大しつつある世界を信頼できるか、できないか。
このあたりの度量が、Web2.0時代で商売をしていく上での、鍵になってくるというわけです。
ロングテイル現象
ロングテールの事例として「本の販売」が例に挙げられていました。
僕はも本屋の長男でしたから、これは実感としてよく理解できましたね。
世の中に、流通しているすべての本の売上をグラフで表すとします。
そうすると、売上冊数として、目で確認できるのは、全体の20%程度だということなんですね。
売れる本は、確かに何十万部ということになりますが、それを縦軸にしてしまうと、年間に一冊売れるか売れないかの本は、グラフ上では目視できません。
そして、この目視できない、デッドストックが、商品としての本全体の80%もあるということ。
グラフ上の横軸には、縦軸として目視確認できない「恐竜のシッポ」の部分が延々と伸びているということになるわけです。
これがロングテイル。
通常のリアル書店では、当然のことながら、店置きできる蔵書に限りがあるわけですから、売上を考えれば、購入されることを期待できない「恐竜のシッポ」の部分は無視せざるをえない。
どうしても、「恐竜の首」にあたる部分、つまり「売れ線」を店頭に並べなければ商売にはならないということになるわけです。
しかし、ネット上では、事実上、在庫は無限大です。
大進歩を遂げている「検索エンジン」を駆使すれば、年間に一冊しか売れない本も、大ベストセラーも、同じ「土俵」の上で扱える。ここが重要なわけです。
つまり、リアル書店では取り扱い不可能な、「恐竜のシッポ」の部分が、ネット上では、新たなマーケットとしてクローズアップされてくるんですね。
ネット書店の雄「アマゾン」では、リアル書店では売上ゼロになるこの「ロングテイル」部分の本の売上が、全体の3分の1になっていると発表されました。
本に限らず、CDやDVDなど、このロングテイル部分に、どう注目していくか。
これも、Web2.0時代の商売の、キーポイントになってくるということですね。
グーグル
『ウェブ進化論』のなかでは、「あちら側」を代表する存在としてグーグルが繰り返し登場してきます。
梅田氏は、グーグルを「10年に1度現れる特別な企業」と位置づけしていますね。
「世界政府が存在したとしてそれが開発するであろうシステム整える」
だいぶ大きく出ましたが、これがグーグルの企業コンセプト。
梅田氏は、このグーグルを、本書ではほめちぎっている感がありますが、彼はその理由をこう説明します。
「次の10年への三大潮流」と彼が定義する「インターネット」「チープ革命」「オープンソース」の3つの要素すべてをあわせ持つ存在が、まさにグーグル。
実際、Googleのサービスを利用して、従来なら開発に数億円かかったシステムを、数十万円で作った企業も出てきました。
梅田氏のようなしっかりとした知識と経験に裏づけされた根拠はないものの、僕も、単純に「面白い」という理由だけで、グーグルにはだいぶ前から注目しておりました。
我が社は運送会社ですから、グーグル・マップは、地図検索の定番として、今まで使っていた市販のソフトにとってかわりつつあります。
白状してしまいますが、このプログへの書き込みも、グーグルの検索エンジンから引っ張ってくる資料で、自分の文章が「肉付け」されることの快感なしではかけません。
オールマイティの図書館への入り口として、僕がいじるすべてのパソコンには、すでにグーグルのフローティングバーが、セット済み。
すべてをオープンにしてくるグーグルのサービスは、僕としても、目が離せません。
インターネットの普及以前は、みんな100%「リアルの世界」で生きていました。
ところが、インターネットが浸透して、リアル社会で生活しつつも、それと意識しないまま、ウェブ社会にも暮らすようになりました。
そして、世の中は、いつのまにか、もはやウェブ社会は無視できないところまできてしまいました。
しかし、ウェブ社会の法則、原理・原則は、当然ながら、リアル社会とはかなり異なります。
梅田氏のこの「ウエブ進化論」は、そのあたりを、いろいろな事例を挙げて、わかりやすく明確に説明してくれます。
僕が、自分の趣味や仕事を通じて、「好奇心」のおもむくままに、パソコンと向き合いながら、おほろげにイメージしていたことの正体が、おかげで、だいぶはっきりと見えてまいりました。
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