ついでに、もういっちょう。
何事も、徹底的な時代検証に基づいたリアルさにこだわった黒澤監督。
それは、衣装にも現れます。
黒澤監督は、画壇の長老、前田青邨に美術考証を依頼します。
そして、この映画の衣装デザインは、弟子の江崎孝坪がを担当します。
青邨は、監督にこう進言します。
「従来のかつらはおかしい。虎屋の羊羹みたいな髷がのっているのは言語道断」
これまでの日本の時代劇は、歌舞伎からの流れを汲んでいて、非常に形式的で、実際の生活には即していないというわけです。
そこで、この映画では、月代を耳の近くまで剃りこんで、側面の髪を低くしたこれまでにない時代劇のかつらを採用。
これは、この映画ではじめて使われた素材で、この映画が、後の日本の時代劇のお手本となりました。
確かに、黒澤映画の時代劇の衣装には、役柄のキャラクターや生活をリアルに表現するフィット感が圧倒的ですね。
鎧兜もこだわり満載です。
これは明珍という鎧師に製作を依頼。
着方も本式に学ばせたといいます。
しかも、三船や、野武士がかぶっていた兜などは、ほとんど国宝級のものだったようです。
とにかく何から何までが、超一流の輝きを放つ大傑作「七人の侍」。
その輝きは、製作から50年たった今でも、けして色あせることはありません。
もし、僕に子供がいたとしたら、中学生の生意気盛りになるくらいのタイミングで、親の教育の一環として、この映画を、正座させて見せたいところです。
100の説教をたれるより、この映画を1回見せるほうが、はるかに効果的だろうと思いますね。
この映画を、そろそろ「国宝」に指定してしまってもいいんじゃないでしょうか。
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