先月の関西のとある新聞報道によると、若い主婦や女子学生に“ヌードモデル”の人気が高まっているようです。
ヌードモデルって、一種神秘に包まれた職業ですよね。
20代の頃、ヌードモデルをやらないかといわれたことがありましたよ。
友人の知り合いが、銀座で画廊をしているというので、好奇心の赴くままついていったんですね。
こじんまりとした画廊で、なんの絵が飾ってあったかは、もうまるで記憶がありませんが、その画廊にいた怪しげな老人の記憶は鮮明です。
ベージュのレザージャケットで、全身をくるんだ到底一般人とは思えない姿のこの老人。
長沢節という人でした。
この人は、水彩画家、デザイナー、エッセイスト、ファッション評論家、そして自分主宰の美術学校も経営しているという人物。
日本のファッション・イラストレーターの 草分けといわれている人。
当時でも、70歳近かったはずですが、若い綺麗な女性と画廊の隅のテーブルでなにやら歓談。
画廊のオーナーが気を利かせて、この老人を紹介してくれたのですが、こちらはそんな偉い人とは知る由もなし。
「老人ころがし」は、当時から得意でしたので、その長沢氏の「怪しさ」をネタに、ツッコミまくっていたら、そのうちマジな目をして、こう言ってきたんですね。
「どうだ。青年。ヌードモデルやらないか。」
こちらは、目が点です。
長沢氏がいうには、「いい顔」をしているというんですね。
著名な画家様にこういわれて、こちらも確かに悪い気はしません。
しかし、どう高く見積もっても自分が「イケメン」でないことは、誰よりも承知しております。
「いい顔」とはどういうことか。
長沢氏に詰め寄ると、彼は、僕の顔をシゲシゲと見つめて「ヌードモデル向きの顔だ」というわけです。
画廊のオーナーや、友人は、面白そうにはやしたてます。
聞けば、彼の主宰している美術学校のデッサンの授業で必要なヌードモデルとのこと。
もちろん、一糸まとわぬスッポンポンで挑めというわけです。
その絵面を、頭に思い描きました。
もし、そこに、自分の好みの可愛い女子学生がいたらどういうことになる?
その彼女が、もしもFカップ以上の巨乳の持ち主だったら、どういうことになる?
そんな場所で、そんなことを考えるなといわれても、もし予期せぬリアクションが下半身にきてしまったらどうする?
いろいろと思い巡らせて、ここは断るしかないと決めた瞬間に、長沢氏にこう聞かれたんですね。
「ところで、青年。あばらは見えてるよな?」
「は?」
「それから、アソコは大きいか?」
「・・・」
あばらとは、もちろんあばら骨のことですね。
自慢ではありませんが、当時の僕は、おなかぷっくりのポッチャリ体型。立派に中性脂肪過多予備軍でした。
しかし、細面の顔が幸いして、体重の割には、スマートに見えていたようです。
長沢氏に言わせると、いいヌードモデルの条件は、僕のようなのっぺりとした顔立ちと、あばら骨が浮き出た細い体型。
そして、大きな・・・なのだそうです。
大きな・・・は、とりあえず置いておいても、残念ながら、あばらの見える細身の体というところで、僕のヌードモデルの件は却下。
今の僕でしたら、おかげで、かなりスマートになりましたから、いいヌードモデルをやれるかもしれませんな。
年齢制限がなければ。
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