さて、時が経てば、映画の見方も感じ方も変わってくると申し上げました。
では、「恋愛映画」ならどうよという興味が湧いてまいりました。
どうせ見るなら、中途半端ではなく、コテコテの恋愛映画にいたしましょう。
そこで、とりあげたのがこの作品。
1970年のアメリカ映画。「ある愛の詩」。
エリック・シーガルによる同名の小説が原作です。
これ、実はちょっとおもしろくて、映画の製作が始まった時点では、この小説はまだ未完でした。
そして、先に映画の方が完成してしまい、この映画の脚本を基に、小説が執筆された部分もあったとのこと。
小説と映画が同時進行で作られた、今で言えば、メデイアミックスみたいな作品なんですね。
さて、昔の映画を再見するときの楽しみといえば、まずこれ。
「おっ、あの人が、出ているではないか」というやつ。
いました。いました。
主人公オリバーのハーバード大学の学友の一人に、今をときめくあの人の若かりし頃の姿を発見しました。
その人の名は、トミー・リー・ジョーンズ。
「JFK」や「逃亡者」で渋いところを見せたあの俳優です。
最近では、日本のコマーシャルにも出演してオチャメな一面も披露していますので、知らない人はいないでしよう。
実はこの人、実際にハーバード大学を卒業しているんですね。
この映画の撮影時は、ハーバード大学を卒業したばかり。
まさに、これ以上はないというキャスティングでしたが、同映画の製作元パラマウント映画の上層部からは、「顔つきがキツい」とクレーム。
映画自体は大ヒットしましたが、彼自身にとっては、苦い映画デビューとなりました。
さて、1971年当時、この映画の大ヒットとともに、有名になった劇中のセリフがこれ。
Love means never having to say you're sorry
日本では、これをこう訳しましたね。
「愛とは決して後悔しないこと」
これは、確かに映画のキャッチコピーとしては、名訳でした。
映画のヒットと、ともにこのキャッチコピーも一世を風靡。
白状してしまいますが、当時「映画マニア」のマセガキだった僕は、このセリフをあちらこちらで使いまくっておりました。
ほれ、卒業の季節になると、別れ別れになるクラスメート同士で、サイン帳のまわしっこなんてしませんでしたか。
当時の僕は、このサイン帳がまわってくると、ろくに意味もわかっていないままに、この名文句を書きまくっていました。しかも英語のままです。
関係代名詞もろくに理解していない中学生が、このセリフだけは、原文のまま覚えていて、使いまくっていたのですから、かなり怪しいとおもっていただいていいでしょう。
これは後に、性懲りもなく、友人たちの結婚式の色紙にも、セッセと、書いておりましたから、その意味では、この「ある愛の詩」は、僕にとって非常に思い出深い映画ではあります。
そんなわけで、今回この映画を見直して、改めて確認したのは、このセリフのナマの使い方。
喧嘩をして飛び出していった彼女を探し回るオリバー。
家に戻ると、扉の前で座りながらジェニーが目に涙を浮かべています。
鍵を忘れて中に入れなかった彼女に、オリバーが謝ります。
”I'm sorry."
そして、この言葉を受けて、彼女がいったセリフが件のセリフ。
ですから、シーンの展開からいけば、元々は、「愛し合っている者同士に『ごめん』なんて言葉は必要ないの。」と言うくらいの意味合いだったんですね。
しかし、このままの直訳では、映画的な「名セリフ」にはならない。
そこで、映画の宣伝スタッフと、翻訳者が、考えに考えて、ひねり出したセリフが「愛とは、決して後悔しないこと」だったのでしょう。
確かに、名セリフといわれるだけあって、この訳の方が、かっこいいし、意味は深そうです。
ですから、改めて、このシーンの字幕で使おうとすると、セリフの流れからいけば、少々無理があるのはやむを得ないところ。
まあ、これは痛し痒しというところでしょうか。
「愛とは決して後悔しないこと」
では、このセリフを、前述のように、いたずらに、ろくに深い意味も考えず使いまくってきた、その後の僕の人生はどうであったか。
これはもう、こと恋愛に関していえばボロボロといっていいでしょう。
後悔だらけですね。
実際に、今まで付き合っていただいたすべての女性には、心より、ひたすら「ごめんなさい」の頭下げまくり。
その懺悔と自戒の念をこめて、今はこういっておくことにいたしましょう。
「愛とは、後悔先に立たず」
さて、この映画で、一番好きなシーンは?
こう聞かれれば、僕は、二人が雪のセントラルパークで、無邪気に戯れるシーンをあげることにします。
これは、公開当時、劇場で見た感想も、今回DVDで見た感想も同じでしたね。
フランシス・レイの流麗な音楽がベストマッチした、自然で瑞々しい、素敵なシーンでした。
この映画のポスターをしげしげと眺めてハタと思い当たりました。
あのヨン様と、チェ・ジゥでブレイクした韓流ドラマ「冬のソナタ」です。
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