『スティング』(The Sting)は、1973年公開のアメリカ映画。
監督はジョージ・ロイ・ヒル。
アメリカン・ニューシネマの代表作『明日に向って撃て!』で共演したポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが再共演を果たし大ヒットしました。
ギャングの大親分を、いっちょカモったろうかという展開の痛快コンゲーム映画ですね。
詐欺は、もちろん犯罪ではありますが、映画の素材として扱われると、こうもエンターテイメントになりますよという見本のような映画。
コンゲーム映画には、ピーター・ボグノダビツチ監督の「ペーパー・ムーン」のような可愛らしい作品もありますが、この映画の騙しのテクニックは、ちょいと大掛かり。
しかし、その分しっかりと、痛快なドンデン返しになっておりました。
ドンデン返しは、映画の醍醐味ですが、僕にとっては、ビリー・ワイルダーの「情婦」と、この映画のドンデン返しが双璧。
いまのところ、この両映画を越えるスカッとしたドンデン返しには、お目にかかれていません。
ラストのドンデン返しを決めるには、そこまでの伏線と、観客へのミスディレクションが効いていないといけないのですが、これがあざといと、この手の映画は観客からはブーイング。
FBIとの絡みが、この映画では、ミスディレクションになってくるのですが、描き方としては、フェアの範疇でしょう。
こういうのは、ひねり過ぎてもダメ。ミエミエでもダメ。
そのさじ加減が難しいのですが、この映画のひっくり返し方は、実に映画的で、僕自身は納得です。
この映画の脚本は、詐欺師の手法をフィールドワークで集めた言語学者、デヴィッド・W・モラーの著作『詐欺師入門―騙しの天才たち:その華麗なる手口』に基づいて練り上げられたものだそうです。
マービン・ハムリッシュによる、ラグタイムピアノによる音楽も、1930年代のアメリカのムードを盛り上げて効果的。
主題歌「ジ・エンターテイナー」のピアノのメロディを聞くと、あのお茶目なポール・ニューマンのウインクが、ほとんど条件反射的にフラッシュバックしてしまいます。
劇中、ポール・ニューマンが、華麗にトランプを操るシーンがありますが、これは、ボディ・ダブルを使った撮影トリック。実際に操っているのはアメリカでは有名なマジシャンとのこと。
最後に、手元から、ポール・ニューマンの笑顔にパンアップするカットがあったので、これは見事に騙されました。
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