クエンティン・タランティーノの監督第一作。
「レザボア・ドッグス」
語ってしまえば、ギャング一味の仲間割れと自滅を描いた映画ということになりますが、やはりこの映画の魅力は、一にも二にも脚本。
冒頭、ギャングたちが、マドンナの「ライク・ア・バージン」をネタに、とりとめのない会話をするシーンがありますが、これが妙にリアルで秀逸。
アメリカのギャングたちは、実際にこんな会話を日常的にしているのではないかと思わせるような説得力がありました。
そして、黒ずくめの男たちが横一線に並んで、スローモーションで歩くシーンにかぶるタイトル。
これが、デビュー作とは思えない、タランティーノ監督の、つぼを心得た演出力はさすがですな。
もともとこの映画は、「3万ドルの予算でできる映画を」という意図の元に書かれたといいます。
銀行強盗シーンの映画でありながら、銀行強盗シーンはなし。
銀行強盗以前の男たちの過去と、銀行強盗後の仲間割れの様子を、時間軸をうまく操って、巧みなカットバックを駆使して見せます。
この脚本に魅せられたのが、主演のハーヴェイ・カイテル。
彼は共同プロデューサーに、名を連ねています。
「心臓の弱い方は観賞を控えてください」との警告が発令するほど暴力描写は残酷というフリでしたが、確かに、使用された血のりの量は半端でないにせよ、残酷といわれるようなシーンは、唯一、マイケル・マドセンのミスター・ブロンドが、軽いステップを踏みながら、警官の耳を削ぎ落とすシーンくらい。
バイオレンス・シーン満載という印象はありません。
「レザボア・ドッグス」は、若き映画オタクであるタランティーノ監督の、ディープでスタイリッシュな映像センスを堪能する映画。
バイオレンス・シーンがどうのこうのというよりは、この絶妙でリアルな脚本から生まれる、「緊迫感」を楽しむ映画でしょう。
70年代のディープな名曲を散りばめたセンスもお見事。
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