夜中に、さだまさしに起こされてしまいました。
とにかく、彼の大絶叫が、深夜の僕の部屋に鳴り響いていたんですね。
メリークリスマス!メリー・クリスマス!
さだまさしは、そう熱唱しています。
そして、どうやら、彼はこの歌で、かなりマジに、「反戦」を歌い上げていました。
なんだなんだ。
とにかく、もう桜はとっくに散っているのに、メリークリスマスはないだろうと、ベッドから起き上がって、音の出所を探します。
もちろん、僕の部屋でその歌を絶唱している彼に罪はありません。
僕が、なにかをつけっぱなしにしているのは明らかです。
テレビ?コンポ?
いやいや、どうやら、鳴っていたのはパソコンのスピーカーでした。
だんだん思い出してきました。昨日は、近くのTSUTAYAへ行って、CDを何枚か借りてきていたんですね。
さだまさしの「親父の一番長い日」という曲があるのですが、これが10分以上もある大作で、シングルとしては、iTunes Store では売ってくれないため、ふと思い立ち、レンタルのベスト版を借りてくることにしたわけです。
そして、TSUTAYA のさだまさしコーナーには、ここ最近のオリジナル・アルバムで、聞いていないものが何枚か並んでいたので、ついでにそっちも合わせて借りてきたというわけです。
その歌は、彼の2004年に発売されたオリジナル・アルバム「恋文」に収録されていました。
ご存知のように、彼の歌には、非常に、「あたたかい」「やさしい」歌が多い。
まあ、そこそこの音量のまま、流していても、きっと心地よい子守唄になってくれるだろうと踏んで、パソコンの iTunes にある、さだまさしのプレイリストを頭から再生したままベッドに飛び込んだんですね。
そして、「パンプキンパイとシナモンティ」あたりの、心地よく、軽いノリに揺られながら、コックリと眠りについたんです。
それがなんです。突如、夜中になるのを見計らったように、あの熱唱は。
さだまさしらしくもない。
いい大人になったあなたが、あんなに声を振り絞って、大熱唱をするのは、ちょいと反則というものでしょう。
さて、大きな声ではいえませんが、僕は彼の大ファンです。
特に、こちらも感性豊かであった頃の、1970年代後半から、1980年代前半の頃の彼のアルバムは、それこそ、リリースされるたびに、擦り切れるほど聞き込んでいました。(正確にはカセットですが)
ガールフレンドには、佐野元春やサザンやユーミンにはちょいとうるさいというポーズをかましていましたが、その裏では、こっそりと、さだまさしの「泣ける」系の名曲の数々に、どっぷりと、ハマりまくっていたんですね。
さだまさしは、これまでのキャリアの中でも、いくつか反戦や平和をテーマにした曲は歌っています。
例えば、1982年に発売された「夢の轍」の中に収録されていた「前夜(桃花鳥)」。
それから、1984年のアルバム「Glass Age」には、「空缶と白鷺」がありました。
どちらも、かなりスピードを殺して、おもいきりチェンジアップをきかせた変化球気味の「反戦歌」ではありましたが、それでも、あの当時の日本では、自分のオリジナルアルバムに、「平和」をテーマにした、曲を収録させるアーティストなんて、彼くらいしかいなかったでしょうね。
それから、彼も齢を重ねます。
そして、1993年に発表された「逢ひみての」のというアルバムの中には、かなりストライクゾーンの真ん中を狙ってきた「広島の空」が収録されます。
彼は、「夏 長崎から さだまさし」と題した、無料の野外コンサートを、故郷の長崎県で、20年近くにわたり行ってきました。
長崎原爆の日の3日前にあたる広島原爆の日の8月6日に、「長崎から広島に向かって平和について歌う」というのがそのコンセプト。
まあ、日本のアーティストとしては、かなり、本気モードで、「平和」に対して、テンションとモチベーションを持って、活動してきた人ということはいえましょう。
しかし、それでも、今は、プロテストソングがもてはやされた1960年代とは違い、声も高らかに、「愛と平和」なんて御旗をかかげてしまうと、多くの人は眉をそむけてしまうご時勢。
やはり、どちら様も、海の向こうの平和よりは、自分たちの身の回りの、小さな平和にあくせくすることでで、それなりにお忙しい。
しかし、そんな、ご時勢であることは、百も承知で、さだまさしは、あえて、この歌を歌いました。
「平和」に対して、今まで、変化球しか投げてこれなかった彼が、ここで始めて、渾身の力を振り絞った、ストレートを、ど真ん中に投げてきたんですね。
それが、メリークリスマス!メリー・クリスマス!というわけです。
朝から気になってしまって、この歌について、仕事の合間にネットで検索をしてみました。
すると、彼は、この堂々たる反戦歌を、なんと2004年のNHK紅白歌合戦で歌っていたんですね。
いや、これは不覚にも、今日の今日まで、まったく知りませんでした。
紅白歌合戦での彼は、過去の自分の持ち歌(たとえば「精霊流し」「関白宣言」「案山子」など)を、ほとんどNHKのサービスで、「懐メロ」モードで歌わせてもらっているという認識しかなかったものですから、これは、ちょっとビックリ。
よくもまあ、シングルになっていたわけでもない、これだけストレートで、メッセージ性のきわめて強い、ともすれば、NHKへの批判ともとれなくもないような内容の楽曲を、紅白歌合戦の場で歌うことを許可したものです。(ある意味えらい)
アルバムでは、8分を超える楽曲ですが、NHKでは、紅白バージョンとして、4分半にまとめたとのこと。
年末定番のうかれ騒ぎのお祭りイベントの中で、あえてこの曲をひっさげて、おそらくは、会場も、そしてテレビを見ているお茶の間にも、おもいきり冷や水をぶっかけた彼のパフォーマンスに、溜飲を下げた方は、けっこういたのではないでしょうか。
この夜のさだまさしは、ある意味では、ヘビメタやヒップホップの若いバンドのオニイチャンたちよりも、はるかに、パンクだったかもしれません。
さだまさし様。
ここ最近は、あなたのニューアルバムをろくに聞きもしておりませんで、誠にご無礼いたしました。
アルバム「恋文」に収められた反戦歌「遥かなるクリスマス」は、しっかりと、僕の「伝えたい1000曲」の913曲目に登録させていただきます。
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