竹内結子の結婚出産を経た復帰作となったのが『サイドカーに犬』
今まで見たことのないキャラクター「洋子さん」を、絶妙に演じて、新境地を開拓したといえましょうか。
監督は、根岸吉太郎。
最近の作品は、あまり見ていませんが、例えば「遠雷」や、「ウホッホ探検隊」のように、リアルな日常を繊細に描くのがお得意な監督ですね。
この映画では、子役の使い方が上手だなと感心し
ともすると「演技演技」になってしまいがちな子役の芝居を、うまく肩の力を抜かせて、実にリアルな演技を引き出していました。
20年前のある日、家出をした母親の変わりに、突然現れた父の愛人。
カッコイイ自転車に乗った豪快な女の人で、9歳の薫が、今まで母親に強いられていたルールを、笑い飛ばしながら壊していきます。
「エサ」といながら、お皿にぶちまける「麦チョコ」。
歯が溶けるから飲むなといわれているコーラ。
そして、父親に内緒で、洋子さんと出かけた小さな夏休み。
客観的に見れば父の愛人とのひと夏の交流の物語。
いずれ母との修羅場は不可避という状況で、「刺激的な夏」は、描きようによっては、ドロドロで、湿った深刻な家族劇としても描けるところでしたが、これを、監督は、独特なユーモアを交えつつ、サラリとさわやかに演出したのが成功。
そのあたりを支えたのは、古田新太、樹木希林、 椎名桔平といった、芸達者たちのサポートアクトでしょうか。
薫が、父親に頭突きをし、「ワンワン!」と吠えるシーンは象徴的。
当時、国立あたりにあったはずの、百恵ちゃん宅の探しや、「忌野清志郎サイコー」なんていうセリフもあったりで、上手にリアルに時代を切り取っていました。
洋子と薫が、心を通わせるきっかけとなった、洋子のセリフ。
「聞かれたことに黙ってしまうのは、正直であろうとするから。だから私は薫を尊敬するよ。」
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