さて、せっかくですから、映画「情婦」からもういっちょ。
少々、ネタバレ気味になりますので、読まれる方は、ご注意を。
この映画のキーポイントになるのが、実は「情婦」です。
これは前にも申したとおり、この映画の邦題にわざわざ「情婦」とうタイトルをつけてしまっていますから、これはもう公認のネタバレということで、今回はひとつこいつをネタにしてみましょう。
大丈夫です。
ビリー・ワイルダー監督は、これを最後にもう一回ひっくり返して見せますから、ご心配なく。
では、ストーリーを少々おさらい。
未亡人殺人容疑の夫のアリバイを証明するべき妻が、なんと「検察側の証人」として出廷。
あろうことか、証人席にたって、夫のアリバイを否定します。
これで、一気に被告人不利に傾く裁判。
しかし、突然弁護側に電話をしてきた、とある「情婦」の持ってきた、重大証拠品と、老獪な弁護士の証人喚問で、裁判は見事にひっくり返ります。
被告人は無罪。
さあ、もう感のいい方であればお察しの通り、この情報提供者の情婦と、検察側の証人に立った妻が、実は同一人物だというトリックなんですね。
映画の中でも、デートリッヒ演じる妻は、元女優という設定になっていますから、これはこの映画の最大の見所になります。
あの「情婦」は、実は私なのよと、デートリッヒが、弁護士に告白するくだり。
これをワイルダー演出は、実に効果的に見せます。
伏線は、弁護士が、女から、問題の証拠品を受け取るシーン。
この妻に寝取られたという男に切られた頬の傷を、女は弁護士にバーンと見せておきます。
そして、結審後の法廷で妻が告白するシーンでは、デートリッヒの妖艶な顔立ちと口調が、みるみる場末の情婦の表情になり、同じように頬の傷をバーン。(実際の妻の顔には、傷はありませんが)
僕は、大学生の頃に、はじめてこの映画見た時に、この場末の情婦を演じていたのは、マレーネ・デートリッヒの一人二役だと信じて疑いませんでした。
彼女クラスの女優であれば、このくらいの一人二役は、やってのけるだろうと当然のごとく思っていました。
どうでしよう。画像を見ていただければわかると思いますが、情婦の面相は微妙です。
明らかに、デートリッヒではないとは断言できない程度に、しっかり別人です。
今回、この映画を再見して、これがとても気になりだしました。
「いやあ、やっぱり、この二人は別の俳優が演じているだろう」
映画の楽しみ方としては邪道ではありますが、こうやって、そのふたつのシーンの画像をキャプチャーして、並べてみて、改めて再考しました。
まずその前にひとつ確認です。
実は、映画的には、この「情婦」は、「妻本人」である必要性はないんですね。
例えば、妻が、誰かにこの証拠引渡し役を依頼したという設定にしても、ストーリー的には、なんら問題はありません。
でも、映画ビジュアル的に、ここは、この「情婦」が、実は妻本人であるという設定のほうが、より「サプライズ」ではあります。
てなことで、この部分のみ、ちょっと「微分的」検証をしてみましょう。
引っ張り出してきたのは、別のシーン。
妻と弁護士がはじめて顔を合わせるシーンです。
ここで、ちょっと身長に注目してみました。(慎重に)
このシーンの画面からは、チャールズ・ロートンの弁護士よりも、デートリッヒの妻の方が、明らかに背か高いように見えませんか。
さて、次に確認してもらいたいのが、情婦との証拠引渡しシーン。
どうでしょうか。これは、明らかに、情婦の方が、弁護士よりも背が低い。それもかなり。
うーん、こりゃ、違う役者が演じていそうだ。
今はだんだんそんな気になってきました。
てなことで、この件について、いろいろとGoogle してみたのですが、一人二役か、別の俳優が演じているのか、明言した文章は、発見できませんでした。
監督に聞こうにも、すでにビリー・ワイルダーは天国。
どなたか、ことの真相を知っている方はおりませんか。
もしも、それでも、この二役を演じ分けたのが、マレーネ・デートリッヒだとしたら、ここでもう一度申し上げておきましょう。
恐るべし。マレーネ・デートリッヒ。
Wikipedia 「Witness for the Prosecution (1957 film)」には下記の記載がありました。この表現がらすると、Marlene Dietrich自身の二役と見てよいと思います。また、Full Cast のリストにも他の女性名はありません。
Sir Wilfrid had told her before the trial that "...no jury would believe an alibi given by a loving wife". So, she had instead given testimony implicating her husband, had then forged the letters to the non-existent Max, and had played the mysterious woman handing over the letters which then discredited her own testimony and led to the acquittal.
の巧みさもありますが、デートリッヒの演技には拍手!です。
小生、50年以上のマレーネのファンです。彼女の映画は殆ど全て見ておりますが、「ニュールンベルグ裁判」も素晴らしいです。2020-06-30記(完)
投稿情報: jaguaritoh | 2020年6 月30日 (火曜日) 午後 04時25分
一部、欠落しておりましたので、再送します。
Wikipedia 「Witness for the Prosecution (1957 film)」には下記の記載がありました。この表現からすると、Marlene Dietrich自身の二役と見てよいと思います。また、Full Cast のリストにも他の女性名はありません。
Sir Wilfrid had told her before the trial that "...no jury would believe an alibi given by a loving wife". So, she had instead given testimony implicating her husband, had then forged the letters to the non-existent Max, and had herself in disguise played the mysterious woman handing over the letters which then discredited her own testimony and led to the acquittal.
disguiseの巧みさもありますが、デートリッヒの演技には拍手!です。
小生、50年以上のマレーネのファンです。彼女の映画は殆ど全て見ておりますが、「ニュールンベルグ裁判」も素晴らしいです。 2020-06-30記(完)
投稿情報: jaguaritoh | 2020年6 月30日 (火曜日) 午後 04時41分