平成十二年の十月に詠んだ短歌。
この年は、シドニー・オリンピックで、高橋尚子が金メダル。
日本シリーズは、初のON対決で、長嶋巨人が日本一。
十月
スポーツの祭典ついに閉幕しいつもの道をちょっとジョギング
神無月季節はすっかり秋なのに夏抜けきらずくしゃみひとつ
熟れすぎた柿がポトリと落っこちて恨めしそうに木を見上げおり
すぐそこで鳴ってるケータイ見つからずいらいらするやら情けないやら
秋雨やいつもの自動販売機そろそろホットも欲しくなる頃
極上の食材並ぶ料理ショー我が食卓の秋刀魚眺める
北からの葉書きはそろそろ山々がお色直しを始める便り
ススキの穂手招くように信州路プカリと雲吐く浅間山かな
湯の宿や浴衣に着替え時計置き浮世を離れてまずは一風呂
素裸で山抱きしめる露天風呂紅葉と我が身遮るものなし
夕暮れの湯の香漂う湯畑にカンコロリンと下駄響かせる
土手の道子連れの鴨が顔を出しブレーキ踏ませる夕暮れ近く
秋時雨金木犀の葉が湿り雨支度までするほどもなく
朝寒や日が射しはじめればジャケットが一枚荷物の秋の午後かな
美しき自覚持ちたる胡蝶蘭見られることでさらに輝き
街路樹を撫でてゆく風に肩すぼめ世紀をまたぐ冬出番待ち
栗の実がはじける音に老人の手握る子がいる焚火かな
仕事中ぽっかりあいた一時間開いた文庫に落ち葉一枚
日本一誰もが見たいその人の笑顔が中舞う東京ドーム
病院から父連れ出して風呂食事それだけのことで一日がかり
布団からはみ出し寒くて目が覚めてベランダで鳴く雀と目が合い
秋深しシャワーを蛇口に切り替えてたっぷりつかる日曜の朝
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