そしてこれは、その一年前。
平成一二年七月の短歌歳時記。
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老夫婦おそろいの靴にデイパック緑眺め行く木曜の朝
マスコミのマイクに向かう島民の笑うしかない痛ましさかな
主よりお洒落している愛犬を連れている人連れられてる人
雷鳴に稲妻天を横走り空がキレたらたちまちどしゃ降り
人前でべったり寄りそうカップルは進行形だが完成でなし
最後にとチャーシューよけてるその脇でそれから食べ出す21歳
台風でバタバタ騒ぎの雲の上誰かと誰かが優雅にデート
カラオケで「はじめて歌う」の前振りはこの日のために準備は万端
台風がゆくのを待って一斉に祭りの準備で動き出す町
川風が風鈴を鳴らすベランダで夏を報せる対岸の花火
マドンナとロザンナごっちゃになっている上司の話につきあうランチ
缶ジュースつり銭窓からこぼれ落ちそれ拾うのもいやになる暑さ
温度だけとっくに夏になっていてカラリと晴れないいやらしさかな
後帯内輪一本斜に差し下駄鳴らしゆく浴衣の少女
遠くから祭囃子が風に乗り近くの広場の花火の匂い
かき氷お面綿菓子金魚すくい値段はこの際見て見ぬふり
一学期終了のチャイム鳴り渡りランドセルらが飛び跳ねており
向日葵がゆっくりと頭あげはじめお役御免の紫陽花褪せつつ
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