正面の自転車の女性裾直し我が視線のスケベさを知る
真夏日の夕暮れどきに一陣の涼風受けてふと立ち止まる
陽射し浴びレタス畑の昼下がりスプリンクラーの水飛沫かな
日曜日洗濯物干しティーブレイクさあいいぞ今日もまた暑くなれ
一周忌準備に追われて空見上げあなたに聞きたいことばかりあり
太陽を背に受け育つ入道雲命宿した胎児の如く
炎天下陽炎揺れるアスファルト安いズックの底が貼りつき
よく冷えた西瓜が切って出されれば大の大人が子供の顔かな
うなじから鎖骨伝って谷間まで一筋汗の悩ましきかな
蜩が暑き一日しめくくり打ち水まいて夕涼みかな
おばあちゃん年に一度のおめかしは櫓に上がる盆踊りの日
「すいません」と女性の声で振り返りよく見てみれば相手は携帯
熱帯夜クーラー壊れて風はなし万事休すでビール一杯 (友人宅真夏の悲劇)
早朝の新宿二丁目裏通り色者たちの夢の跡かな
一周忌無事終え打ち上げ兄弟で夜空に届けロックンロール
老人と茶髪ピアスのあんちゃんがはっぴで車座御輿の準備
町内会自慢の山車が蔵を出てお囃子太鼓で練り歩く街
夕立が稲妻雷従えて火照った町に襲いかかる
知合いの車に手を上げ間違えて上げたその手の持っていき場所
茶畑の坂を登れば丘越える田舎のバスの背には夏雲
里帰り改札出れば出迎えの寡黙な父の不器用な笑顔
盆休み平日昼に満室のホテルの前で口笛ひとふき
亡き母の最初の命日父のいる病院の庭で並んで一服
ガラガラの街を仕事で走りつつ帰省の渋滞情報を聞く
仕事終えТシャツ短パンサンダルに着替えて家路はレジャーモード
雨の午後改札あたりは携帯の誰かと誰かの電波が飛び交う
そうやって駄々をこねてももう終わり楽しい祭りはさあまた来年
捕虫網息子にじっと見つめられ親父の面子にかけての蝉取り
盆過ぎて蝉もそろそろ鳴き疲れ1オクターブキー下がりおり
潮の香が漂う湘南午前四時サーファーたちがうごめく気配
二学期へカウントダウンが始まって友の宿題気になりだす頃
夕飯のおかずを届けてくれた人黙って見送る分別盛り
かき氷アイスコーヒーコカコーラ幸か不幸か止める人なし
ベランダで晩夏の夕陽浴びながら干したТシャツそよそよ泳ぎ
まだまだと夏がしぶとく頑張れどそろそろ秋の気配がどこかに
8月は32日までにしてと思ってしまう31日
歩きながら口紅ひいてるお嬢さんあなたの顔はどこから本番
雲眺めふと気がつけば今世紀最後の夏がおごそかに逝き
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