1月11日、往年のグラマー女優アニタ・エクバーグ死去。享年83歳。
この人はイタリアの女優だとずっと思っていましたが、もともとはスウェーデン人。
渡米して映画女優をやっていたところを、イタリアの巨匠フェデリコフェリーニ気に入られ、彼の代表作「甘い生活」に出演。
この映画の彼女があまりに強烈だったのでイタリア女優という印象になってしまったようです。
とにかく、僕はませた映画少年でしたので、1960年代のグラマー女優たちには、メロメロ。
美貌はもちろんのことですが、やはり映画に名を連ねる女優さんたちなら、グラマーであることは最低条件とまで思っていました。
まだ今のようにAVもポルノ映画もなかった時代ですから、グラマー女優の出演するお色気映画は、土曜映画劇場、日曜映画劇場、ゴールデン洋画劇場等のラインナップをつぶさに調べて、漁るように見ていました。
その中にあって、アニタ・エクバーグのグラマーフェロモンは、群を抜いていました。マリリン・モンローのセックスアピールも強烈でしたが、こと「甘い生活」1本に限って言えば、彼女のセックスアピールは、マリリン・モンローさえもしのいでいたといってもいいでしょう。
1987年になって、フェリーニ監督は「インテルビスタ」と言うドキュメンタリー映画を作っていますが、ここで監督はかなり罪な演出をしています。
巨大に肥満して往年の面影などまるでなくなった彼女の家に、マルチェロ・マストロヤンニと一緒に訪れ、彼女をインタビュー。
そしてあの「甘い生活」の中でも、とびきり彼女の魅力が炸裂したトレビの泉にドレスのまま入っていくシーンを鑑賞。
それを見ていた彼女は、大声でオイオイと泣き出してしまいます。
このシーンは、容赦ない現実と映画という虚構の芸術の光と影を見事にあぶり出して、実に強烈な印象を残しましたね。
同じインタビュー映画でも、例えばマレーネ・ディートリッヒは、マクシミリアン・シェルが監督した映画「マレーネ」では自分の姿は一切撮らせなかった。
使われたのは彼女の声だけ。
「百万弗の脚線美」と言われた彼女は、往年の自分のイメージを壊すことを潔しとしなかったわけです。
グレタ・ガルボも晩年は人前に一切出なかったし、日本で言えば原節子もそうでした。
去年亡くなった、高倉健も最晩年は「弱った姿を見せたくない」と言っていたといいます。
これは、イメージで商売をしてきたスターといわれる俳優たちの自己防衛と言っていいかもしれない。
その点、晩年のアニタ・エクバーグは、少々無防備だったように思えます。
現役時代があまりに美しかったために、晩年の老醜とのギャップがあまりに強烈な印象になってしまったんですね。
それを、同じスクリーンの上で、まな板の鯉にされてしまったのですから、彼女の場合はちょっと可愛そうでしたね。
彼女には、映画女優という職業ゆえの残酷さと哀れさをひしひしと感じてしまいます。
一般人である僕も今年で56歳になります。
どういう年の取り方をするか。どういうビジュアルがのぞましいか。
じっくり考えていくことにします。
アニタ・エクバーグ様。どうか、往年の美しい姿のあなたのままで天国に行き、安らかにお眠りください。
合掌。
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