「先生・・・たぶん帯状疱疹だと思うんですが、このへんが・・・。」
「はい、じゃちょっと見せてください。(横目でチラリ)あ、もういいです。そうですね。帯状疱疹ですね。わかりました。
じゃあ、二週間分のおくすりだしておきますので、二週間後にまた来てください。予約いれておきます。それではお大事に」
この間、およそ5分。
まあなんとも淡白な診察で、こちらはあっけにとられてしまいました。
帯状疱疹が現れたのは、今週のはじめ。
その前からも、右の胸の下あたりがちょっとヒリヒリする感じはあったのですが、筋肉疲労だろう、マッサージにでも行けば治るくらいに思っていました。
しかし、そのあたりが腫れてきたと思ったら、あれよあれよというまに広がり、盛り上がってきたんですね。
そして、痛みもヒリヒリからピリピリ。やがてズキズキ。
こいう腫れもの系への対処は、昔からオロナイン軟膏くらいしか浮かばなかったので塗ってみたのですがまるで効果なし。
さすがに青くなってネットで調査。
素人の僕でも、これが帯状疱疹であることはすぐに判明いたしました。
帯状疱疹は、ウィルス性のヘルペスの一種。
子供の時にかかった水疱瘡のウィルスが体内に残留潜伏していて、それが加齢とともに、疲れやウィルスが引き金となって、神経に沿って皮膚の表面に帯状に現れるもの。
体全体に発症することはなく、体の左右どちらか反面にだけ現れるのが特徴だそうです。
人生に一度あるかないかの病気で、かかる人はおよそ1割。
一度やってしまえば、再発の可能性はほとんどないそうです。
もらった薬は2種類。
バルトレックス錠。ヘルペス全般に効く薬で、ウイルスの増殖を防ぐもの。ドイツ製。
カロナール錠。発熱、痛みを抑えるもの。
これをしばらくは、毎食後服用していくことになります。
この処方は、帯状疱疹の処方としては、業界ではほぼ鉄板のようで、帯状疱疹と診察されたら、この薬が処方される確率は高いとのこと。
こちらは、このグロテスクな腫れ具合を目の当たりにしてあせりまくりますが、病院にしてみれば、この病気に対するルーチンワークが確立していているので、顔色一つ変えないという診察になるのでしょう。
診察は正味5分でしたが、病院には、診察待ち、会計待ち、薬待ちで、およそ3時間の滞在。
そのほとんどは待合ロビーで、自分の名前が呼ばれるのを待つ時間。
僕は、仕事の段取りを済ませて、勤務地近くの病院に行きましたが、ロビーにいるおよそ8割は、僕より年配の地元の高齢者。
中には顔見知りも多いらしく、老人たちがロビーで知っている顔に合うと、たちまち始まるのがお互いの病気報告。
しかし隣でじっと聞いていると、まるで自分の病気を自慢しているようにしか聞こえませんでした。
ああ、やだ。ここにいると、また違う病気になりそうという気にさせられ、薬を受け取ると、とっとと病院を後にした次第。
僕も来年は57歳。
そろそろ老境にかかる年齢です。
この体も経年劣化はやむなしというところですが、できれば病院通いはすることなく、健康でいたいものです。
待ちに出れば、あたりはクリスマス一色。
クリスマスプレゼントの代わりに帯状疱疹を抱えたオヤジは、病院でもらった薬を手に、山下達郎の例の歌を口ずさんでおりました。