2002年制作の映画。
VHSとベータマックスの熾烈な家庭用ホームビデオ規格をめぐる実話を映画化したもの。
NHKの名物番組だった「プロジェクトX~挑戦者たち~」は、好きで毎回見ていました。
そこで取り上げられたのがこの件を扱った「窓際族が世界規格を作った」。
このドキュメントをそのまま映画にしたのがこの作品といえましょう。
まず凄いなあと思ったのは、企業名がすべて実名。
こんな芸当は、まずスポンサーありきのテレビドラマではできないことでしょう。
この映画では敗者となる電機メーカーの雄ソニーもちゃんと実名。
痩せても枯れてもソニーというところでしょうか。
でも、あの頃のソニーは天下無敵でした。
ウォークマンは、僕も愛用させていただきました。
あの頃の僕の友人にも、ステレオもカセットもテレビもオーディオも、すべてソニーというやつがおりましたね。
僕の持っていたラジカセはAIWAのTPR-205。
彼は、僕の愛機にタラタラと文句を述べた挙句、自分の持っていたソニーの録音機デンスケの性能をこれでもかと自慢されました。
その友人が購入したビデオデッキは、当然ベータマックス。
その彼は、世の中のビデオの規格が、概ねVHSで勝負あったという頃になっても、かたくなにベータマックスを愛用していました。
「あのねえ。僕は絶対VHSは使わないよ。だって性能は絶対ベータの方が上。だってソニーが作ってんだよ。」
その友人曰く「今でも最先端のプロたちはベータ使ってるからね。」
ところかぜ、しばらくして、彼の家に遊びに言ったら、ベータマックスと並べられたVHSのビデオデッキを発見。
早速彼に突っ込んだら、彼は白状しましたね。
「いや、VHSがないと、アダルトビデオがみれないんだよね。」
あの当時、VHSとベータマックスが市場で二分されていた頃、巷のレンタルビデオ屋には、すべてのタイトルにおいて、ベータとVHSが仲良く並んでいた時期がありました。
でも、考えてみれば、お店としては、どちらかの規格に統一してくれないかなと思っていたはず。
だってそりゃそうです。
どちらかひとつに規格を決めてくれれば、タイトル数は、現状の倍のタイトルが並べられるわけです。
そんな時に、映画でもあったように、松下電器が、VHSの参入を決めたんですね。
これで、日本中のレンタルビデオ屋が、一斉にベータマックスを棚から一掃し、作品はすべてVHS一本になった。
VHS Vs. ベータマックスの規格争いの大勢を決めたのは、松下幸之助の一言だったかもしれません。
ただ、市場でベータマックスにとどめを刺したのは、実はアダルトビデオの存在だったことは申し上げておきましょう。
どんなに「いいもの」を作っても、見るべきソフトがなければ売れない。
ここで手痛い目にあって、このことをしっかり学習したソニー。
この轍を二度と踏まないために出した結論がこれでした。
ソフトを制するものが市場を制する。
映画の中での、西田敏行扮するビデオ事業部長のセリフ。
「優しい戦いで勝つよりも、厳しい戦いで負ける方が、強くなれる。」
そして、次に時代を席巻したゲーム機戦争では、ソニーはゲーム本体には最初は手を出さず。
ソフトから着実に市場を押さえ、満を持して発表したプレイステーションで、ゲーム機戦争においては、セガに引導を渡しました。
そして、その次に来るパソコンの時代。
ここでも、ソニーは、各メーカーがこぞって自社製パソコン争いを、しばらく静観。
各社のパソコン、そしてマッキントッシュのパソコンを徹底的に分析調査して、同じく満を持してバイオを発売。
ここでも、各社を抑えてバイオは売上ナンバーワンを獲得するわけです。
ビデオ規格戦争で、負けてもただでは起きなかったソニー。
その意味では確かに、「陽はまた昇る」でしたね。
ちなみに、我が家には、あの頃撮りためたVHSのビデオテープが2000本近くあります。
時代は、とっくにDVDからブルーレイ。
ビデオテープは、我が家ではもう再生すら出来ないことを申し添えておきましょう。
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