トランプ大統領が来日しています。
仕事の通り道の横田基地の外周には、100メートル置きに警官が立っていました。
実りある日米首脳会談になって入ればいいのですが。
だからというわけでもありませんでしたが、読み終わった本が内田樹氏の「街場のアメリカ論」。
映画が好きですので、運転中にラジオがわりに聞いているのが、映画評論家・町山智浩氏のYouTube。
彼はアメリカ在住ということもあり、映画情報と一緒に語ってくれるのが最新アメリカ・レポート。
これも結構面白くて、「さもありなん」のアメリカを楽しませてもらってはいました。
そして、その流れで手にしのがこの本。
この本の解説をしているのが、町山氏というわけです。
さて、アメリカです。
僕にとってのアメリカはやはり、なんといってもハリウッド映画でしたね。
中学二年で、それまでの怪獣映画から卒業して、はじめて洋画を見に行って以来、映画オタクの僕はハリウッド映画を通して、アメリカと付き合ってきたといってよいでしょう。
僕が、アメリカでいったことのあるのは、ハワイだけ。
とくにアメリカの友人がいるというわけでもありません。
言ってみれば、完全にアメリカミーハー。
なので、それまでの断片的なアメリカに対する知識と、ニュースを通じての印象で出来上がっていたアメリカ像が、この度「なるほどね」と、ある程度体系的に繋がったという意味では、この本は収穫でした。
どうして、アメリカは銃社会なのか。
どうして、アメリカにシリアルキラーは多いのか。
どうして、アメリカの超肥満は貧困層に多いのか。
どうして、アメリカは起訴社会なのか。
どうして、アメリカは戦争が好きなのか。
上っ面の心象だけで捉えていたアメリカでしたが、歴史的背景から説明されれば、いちいち納得。
いろいろな「なるほど」があったのですが、その中でも、一番印象に残った「なるほど」は、アメリカの統治システムでしたね。
アメリカという国は、明らかに国民に不利益を与える、時の統治者や政府ならば、国民がそれを倒す権利を憲法で認めているということ。
確かに、アメリカという国の出発点がそれでしたから、これは当然といえば当然のこと。
国民が武器をもってもいいという銃社会の出発点もここにあるというわけです。
もうひとつ、その統治システムで特筆すべき指摘。
「アメリカの有権者は、適正を欠いた統治者を選んでしまう彼ら自身の愚かさを勘定にいれて統治システムを構築している。」
これ、ちょっとすごくないですか。
つまり、有能な統治者を選んで託すというよりも、例え無能な統治者を選んでしまったとしても、そのネガティブな効果は最小限に抑えるというように、社会があらかじめシステム化されているというわけです。
このあたりは、国家として非常に大人だなあという印象。
日本にはない、憲法イズムです。
具体的に言えば、権力の集中を制度的に許さないというしくみです。
他国に比べても、公務員が権力を持つ期間を長くは設定していないのがアメリカ。
要するに、公務員は、一定期間在職すると必ず権力を濫用して私利私欲を図る。
何処かの国の官僚様たちが聞いたら、耳が痛くなるであろうことを、はじめから、官僚制度に織り込み済みにしているのが、アメリカという国。
クールですね。
日本人としては、例え戦争には負けたとしても、日本という国の品質、日本人の品質が、アメリカに劣っているとは思いたくないというのが人情。
でも、例え個人の品質として優っていたとしても、国家の政治システムを構築してきた先人たちの慧眼という意味においては、これは残念ながら、アメリカに分がありそうです。
そこは、どこかウェットな日本人が人を見る目よりも、もともと、いろいろな移民たちで国家形成をしてきたアメリカ人の人間を観察する目の方が、よりリアルで的確だということでしょう。
要するに、人間の本質をちゃんと理解して、統治システムにとりこんでいる。
これが、アメリカの凄いところ。
よく日本人はこう言われます。
「日本という国は、政治は二流だけれど、人は一流」
これ、昔は日本のちょっとした褒め言葉だと思っていましたが、よくよく考えると違いますね。「国民が政治に無関心な国家は不幸」というアイロニー。
確かに、国民が圧倒的に政治に無関心なのは、国際社会の中においても、完全に我が国特有のウィークポイント。
政治は二流でも、国民一人一人の品質が高いから、なんとかやっていける。
いやいや、いい加減、それではよくないという話です。
少なくとも、アメリカは違う。
人を「性悪説」で捉えて、それを統治の仕組みに取り込んでいる。
この一点においては、僕個人としてはアメリカという国に敬服いたします。
それでは、我が国はどうしたものか。
少なくとも、アメリカの統治システムを、そっくり真似ろという話ではないでしょう。
日本は、逆立ちしてもアメリカにはなれません。また、ならなくて上等。
でも、アメリカを常に横目で眺めながらも、日本には、日本ならではの立ち位置というのはあるはず。
この本にも示されているように、アメリカにはアメリカさんののっぴきならない事情が山ほどあります。
そして、もちろん我が国には我が国の事情があって、アメリカさんには、あずかり知らぬところ。
そんな、譲れないところを求めあっても、日米関係がよくなりはしません。
できることは、できる限り、アチラさんの利害を、我が国の利害に翻訳して調整すること。
なにか、日本というと、外交においては、他国の「したたかさ」と比較して、「お人好し」の国という印象が付きまといます。
我らが安倍総理、日本では、不甲斐ない野党のおかげで、図らずも、わが世の春を謳歌されていますが、少なくとも国際社会においては、彼の魂胆は、完全に見透かされていますよ。
この選挙にも勝利して、長期政権に浮かれてますが、国際社会においてはそれどころじゃない。
そこのところ、本人わかっているのかしら。
でも、なんだかんだといっても、まだまだ経済力はあるから、どこの国も、日本に本音を言わないだけ。
とにかく、持ち上げておけば、日本はなにかと便利だぞ。
どちら様もそんなふうに思っていらっしゃる。
これ、悔しいですよね。
残念ですが、日本という国は、外交においては、思い切り世界中から舐められている気がします。
安倍さんの好きな「列強」と言われる国のほとんどは、調子いいこといいながら、後ろを向いて、舌を出しているのではないでしょうか。
アメリカ然りです。
アメリカを見習えとは言いませんが、でもその日本のキャラを逆手にとって、上手に付き合っていく方法はあるはず。
安倍さんは、選挙で勝って、長期政権の足固めに余念がありませんが、是非とも「街場」の意見も参考にされて、どうかアメリカという国を見誤りませんように。
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