昨今の、マスメディアの、安部政権への迎合ぶりが、わが国にとって深刻な問題になりつつあるという認識はありました。
日本のマスコミは、安部政権のポチになりさがって、情けないこと甚だしい。
官邸からの情報だけを、なんのポリシーもなく垂れ流すだけのザル報道。
政府の顔色を伺いながら、勝手に自粛しまくる過剰すぎる忖度。
権力の監視というマスコミ最大の使命を、確信犯で放棄する軟弱な姿勢。
ジャーナリストの田原総一郎氏が、こういっていました。
「ジャーナリストの最大の使命は、報道で世間をざわつかせること。」
でも今の日本のマスコミに、それをいっても、到底無理。
ざわつかせるどころか、安倍政権を落ち着かせる自主規制ばかり。
政府の規定路線を、お行儀よくなぞるだけの、「ことなかれ談合報道」。
このマスコミの政府への「ご機嫌伺い」報道が、今の安倍政権の暴走に拍車をかけている。
わかってくれているのだろうか。
まあ、そんなこんなのマスメディアを含む、メディアの有り様に、内田氏がどうメスを入れてくるか。
どうするどく糾弾してくるか。
読者としては、その辺の興味とモチベーションを持って、本書を手にとったわけです。
「マスコミの不調は、日本人の知性の不調」
本の帯にはこうありましたから、こちらも「それきた」という感じ。
ところが、その部分は、実に本書の第2講でのみあっさり触れられただけ。
内田氏の「街場のメディア論」は、そこからこちらの予期せぬ方向にシフトしていきます。
出てくるお題は、電子書籍論、著作権論、クレイマー問題、コミュニケーション論。
なるほど、どれも確かにメディアの問題ではあります。
しかし考えてみれば、本書が刊行されたのは2010年。
時代は、まだ安部政権の発足前なのですね。
そうか。マスコミのポチ問題は、この頃はまだ水面下だったかもしれません。
当ては外れましたが、その展開には引き込まれました。
さて、話はiPadです。
ちなみに、僕が、最初のiPad を購入したのもこの頃。
民主党政権が倒れ、世に iPad が浸透し始めた時期です。
僕が iPad を手にして、2000冊の蔵書をすべて裁断自炊し電子化して iPad に入れ、電子書籍にどっぷりとつかり始めたのも同じ頃。
残念ながら、電子書籍に対して、内田氏の意見はけして肯定的なものではなく、やはり基本的に彼の中にあるのは、本というメディアへの愛着。
電子書籍は、まだもろ目手を挙げて賛成ではないぞというスタンス。
まあ、それはそれで、氏の論説は、元本屋の息子としてはわからないことはない。
でも、もうすでに、どっぷりとデジタル読書文化に染まっている自分としては、ここで、どんなに論理的に電子書籍の抱える問題を並べられても、正直申して、素直に納得がいかない点も多々。
まあ、でもそれについて、悲しいかな、彼のような、明快で論理的なロジックは展開できませんが。
でもこの著者の所見は、この文化が産声を上げて間もない頃のご意見。
果たして、その意見はいまもまだ変わらないものか。
ヘビーユーザーとしては、ちょっと気にしたいところ。
内田氏も 同時期に iPad は購入されている模様ですので、電子書籍に対する懸念は、今もまだそのままなのか。
ちょいと、この点についてだけは、氏の最新の知見をお聞きしたいところ。
だって、これで読書する習慣になってから、僕自身の読書量そのものは増えたし、「いずれ読む本」も、気になったら購入裁断で、相当数のストックになっております。
もちろん、本を処分したおかげで、一部屋まるまる空きましたから、蔵書を整理するストレスからも開放されておりますよ。
というよりも、僕の蔵書は、iPad の中に放り込むことで、自動的に整理され、いつでも、本文のセンテンス、単語も含めて、検索可能。
持ち歩くことで、まだ読んでいない本の知識まで、自分のものになったような気分で、蔵書は増える一方。
とにかく気になった本は、片っ端からiPadに放り込む。
ブックオフで安く仕入れた、百科事典や小六法、草花図鑑まで入れてます。
この辺りの本は、どこかでパラパラめくることもあるだろうくらいの気持ちと、半分は見栄。
もちろん端から端まで読もうなどという気はさらさらありません。
持っているだけでいい。
一冊の本を読んでいて広がる好奇心には、図書館やネット検索をしなくても、自分の蔵書で対応できる。
こうなってくると、たとえ読まなくても、持っているだけでなぜか快感。
元本屋の息子の「活字中毒」を、見事に満たしてくれています。
内田氏は、電子書籍だと、その便利さで、同時に何冊もの本を並行して読む展開に陥りやすいという指摘もありましたが、僕としては、それもそれでよし。
むしろそれこそ、iPadリーディングの醍醐味ではなかろうかと思う次第。
やはりどう考えても、これは便利です。
とにかく、それでも基本、読書は好きです。
どうかこれに免じて、いちゃもんにはどうかご勘弁を。
もちろん、未読の内田氏の著書も、むすでに何冊か仕入れています。
なんだか、読書感想にはなっておりませんでしたね。
失敬。
そうそう、クレイマー論や著作権論は思わず読みいってしまいました。
面白かった。
これも私見を語り出せば、ダラダラと長くなりそうなので、ここでは割愛。
内田氏は、自分が発表した、すべての公式活字は、どこをどう切り取ってもらっても結構。
著作権は放棄いたしますといってくれております。
では、最後にお言葉に甘えて。
「今時の学生にとっては、一流大学を出ているにもかかわらず無知であることは少しも「恥ずかしいこと」ではなく、無知であるにもかかわらず一流大学を出たことこそが「誇るべきこと」
「メディアはだから戦争が大好きです。戦争がないときは国内の政争でも、学術上の論争でも、芸能人同士の不仲でもいい、とにかく人と人が喉を掻き切り合うような緊張関係にあることをメディアはその本性として求める。」
だよなあ。
さて、お次に読む本は、これに決めました。
内田樹著「直感はわりと正しい」
コメント