2009年日本公開のアメリカ映画。
監督主演は、クリント・イーストウッド。
この時の彼は、79歳。
彼が演じたのは、フォードの工場で50年働いてきたガチガチの頑固オヤジ、コワルスキー。
グラン・トリノというのは、1972年から1976年にかけて作られたフォードの車。
これぞアメ車と言うドデカい車。
しかし、1978年のオイルショック以降、この手の、派手で燃費の悪いアメ車は、トヨタなどの日本車に主役の座を明け渡していくことになります。
彼の息子が、トヨタのセールスマンという設定にニヤリ。
というわけで、このグラン・トリノは、アメ車の最後の輝きを放つ車、言ってみれば、強いアメリカの象徴でもあるわけです。
それを、自分で組み立て、ピカピカに磨き上げているイーストウッド演じるのが本作の主人公。
かつては高級住宅地だったこの街も、自動車産業の斜陽により、だんだんと荒廃していき、たくさんの政治難民が移住してきて、治安も悪くなってきています。
コワルスキーの家の隣に引っ越してきたのも、アジア系の移民でモン族の一家。
人種差別バリバリのコワルスキーは、これが面白くない。
「ニップ」「チンク」「グーク」などの、アジア系移民に対する差別用語を連発。
(この為映画はR指定)
不快感をあらわにしています。
しかし、その家の息子と交流していくうちに、次第に彼の気持ちに変化が。
アジア系のギャングに、仲間に入るように脅迫される息子。
その彼を助けるために、そのギャング団の前に立ちはだかって、ゆっくりとジャケットの胸元に手を入れるコワルスキー。
映画「ダーティハリー」を知っている人なら、この脇からは、44マグナムが出てきてドキューン。
しかし、彼は、この映画では引鉄はひきません。
これがラストへの重要な伏線になります。
「荒野の用心棒」「ダーティ・ハリー」シリーズなどで、映画の中では、銃で人を殺しまくってきたイーストウッド。
銃社会のアメリカでは、ジョン・ウェインとイーストウッドは、強いアメリカの象徴でした。
しかし、「許されざる者」あたりからは、彼の映画は、完全に暴力否定路線。
かつての自分の映画への贖罪が、後年の彼の映画のメッセージになっていますね。
この映画では、特にそれが顕著。
感動的な映画でした。
「主役はこれが最後。」
そう言っていたイーストウッド。
でも、80歳を超えても、まだまだやってます。あっぱれ
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