さて、バスツアー第2日目。
宿泊したラフィーヌ・ホテルは、JR常磐線・原ノ町駅の真ん前にありました。
南相馬市です。
南相馬市といえば、有名なのは「野馬追祭り」。
この行事は、毎年7月下旬に行われる、平将門の時代から続く伝統行事。
駅前には、この銅像。
さて、我々7人と、昨日とは入れ替ったスタッフたちの乗ったバスは、ホテルを出発。
ちなみに、ホテルの宿泊代7800円は、一応参加者が払いますが、その領収書を主催者側に送れば、後ほど全額ではありませんが補助金が出るとのこと。
それに加え、行きと帰りの交通費まで、同様に補助金が出るというのですから、迎える方も気合が入っています。
上限はありますが、それは、相双地域であれば、何回でも使えるというシステム。
もちろん、会社の有休消化も終わり、本日より晴れて無職になった老人就農希望者にとっては、実にありがたいシステム。
福島に移住するかどうかは、今のところ、まったくの白紙ですが、きっちり利用させていただきます。
さて、本日まず最初に向かったのが、「株式会社美野里ファーム」
社長は、堀川由也氏。
こちらはまだ平成28年設立したばかりのピカピカの農業法人。
堀川社長のやっていらっしゃるメインは水稲。
お米ですね。
作付面積が、41ha といいますから、東京ドームで言えば、およそ9個分。
百姓一人がやれる範囲を、はるかに超えた規模なので、これはほとんど遠い目。
もちろん、もっと小規模でやっていらっしゃる農家も多いそうですが、そういう方たちの精米を主に引き受けているのはJAの巨大施設。
堀川さんくらいの量の玄米をそこに運ぶことも大変なことなので、県や地域の補助金などを得て、自前の精米施設に出資したとのこと。
もちろん、近隣の水稲農家の精米も請け負っています。
これだけの、巨大投資ができたのも、やはり販路の見込みが立っていたからこそ。
今は、県内の弁当メーカーや、都内にも出荷しているとのこと。
水稲だけでは、年間を通して、労働力が空いてしまう期間も発生してしまうので、そのためにブロッコリーやホウレンソウなどの露地栽培。
ハウスでのトマト栽培なども行なっているとのこと。
起業した大きな原因は、やはり南相馬市の地場産業の活性化と、雇用を産むこと。
温度管理された広い倉庫には、コメの在庫がフレコンで7つ程度。
いまのところ、注文に生産が追っついていない状況なのだそうです。
さて、次に訪れたのも南相馬市。
主に、ネギの露地栽培をメインに農業をしている「南相馬ねぎ出荷組合株式会社」。
社長は、田岡義康氏。
昨晩の交流会でも、お見えになって熱く語られていた方です。
田岡氏は、横浜から移住して、就農された方。
「福島だからこそ、新規就農には、他の地域と比べて有利なことがたんさんある。
是非、他の地域と、見比べ聴き比べてからでもいいですから、戻ってきてください。」
そう、熱く語っていらっしゃいました。
田岡さんの畑は、南相馬馬事公苑の近く。
やはり、田岡さんがおっしゃっていたのも、まずは販路の確保からの逆算。
どんなにいいネギを作っても、顧客が必要なタイミングで揃えられないと、全てのコストがパーになる。
そういってらっしゃいました。
いろいろな試行錯誤と失敗を重ねながら、現在のスタイルを確立されたそうです。
その田岡さんの自慢が、コンピュータ制御の全自動ネギ専用耕運機。
この広い畑の、すべての畝の情報が、㎝単位でインプットされているとのこと。
ですから、一度セットすれば、苗植えも収穫も、二本の畝を同時にできるという優れもの。
スマート農業ですね。
ここでは、若者たちの目はらんらん。
苗植えで、活躍するのはこの「ひっぱり君」。
ネギの苗が、紙製のポットに収められ、それがつながった状態でコンパクトにまとめられているセットボックス。
これを「ひっぱり君」に乗せ、スーパー耕運機で引っ張っていくと、自動的に等間隔でネギが定植。
あっという間に、140mの畝のネギの苗の定植が終わってしました。
前に進む分には、全自動なので、後からフォローする作業者と一緒に、運転手も苗に集中。
ちなみに、作業員はすべて、タイから来ている外国人労働者とのこと。
田岡さんは、ゆくゆくは、彼らの独立も考えているとのことでした。
定植を見せてもらった後は、収穫です。
今度は、アタッチメントを収穫用にセットし直して、積み込み用軽自動車と一緒に並走して収穫します。
我が畑でも、現在二本ほど、ネギの畝がありますが、もちろんすべて手作業。
この豪快な規模には、目がシロクロしてしまいます。
ネギの苗は、播種時期をずらして、需要に合わせた計画的な作付けわ行なっているとのこと。
「土の上を歩くのは、健康的にいいんです。自然を感じながらやれる、この露地栽培のダイナミックスさは、たまらない。」
いいことばかりではないけれど、この仕事が好きてたまらないというオーラが、身体中からあふれ出ていました。
さて、次に向かったのが、「JAふくしま未来」が運営する野菜の直売所「旬のひろば」。
お一人様就農希望老人としては、もっとも参考になったのがここ。
少量でも出荷が出来、その売り方については、JAから指導も受けられるとのこと。
野菜には1つ1つ、生産者の名前が入ったラベルが貼ってあります。
ここに、持ってきた野菜を陳列するのも、売れ残りを撤去するのも、もちろん、ラベルを貼るのも、生産農家の仕事。
すべてセルフサービスです。
年会費は3000円。
小規模農家の販売先としては、これでしょう。
出荷量が拡大すればも市場出荷のサポートも受けられるということでした。
さて、もう一軒、南相馬市の直売所訪問。
県道262号線沿いにある「株式会社いととんぼ」
こちらはもJA系列ではなく、地元市民による直売所。
現在会員は、やっと震災前の数字に戻って、140人とのこと。
当然、震災後は、一時休業を余儀なくされたそうです。
食堂も併設されており、ランチはここでいただきました。
お蕎麦とカレーのセット。
風評被害を払拭するために、店内に検知器を設置するなど、独自の努力をされ、6次化商品の開発などもされたそう。
こちらです。
地元名物の野馬追祭りを前面に押し出した「南相馬野馬追カレー」。
地元特産の菜種油が、ふんだんに使われた香ばしいカレー。
ランチのカレーは、こりとは違うものとのこと。
こちらの会員になるには、年会費はなく、入会費として2000円。
地元の女性たちだけで、経営しているとのことです。
さて、 今回のツアーの最後の訪問先。
南相馬市から、さらに南下して、福島第一原発のある双葉町の隣町である浪江町まで、バスは向かいます。
浪江町は、2011年の東日本大震災で、多くの住民が避難を余儀なくされた町です。
避難勧告が解除されたのが、2017年の3月31日。
しかし、町内のいたるところにいまだ「帰還困難地区」が散在。
人口は、減少したまま。
JRも、浪江駅から富岡駅までは、現在もまだ開通していません。
国道6号線は、車で通過できるのみ。
国道沿いにバリケードが建てられ、町内には入れない状況は、2015年に現地に行って、この目で来ています。
いまだに、原発地域はしっかりとガードされています。
その浪江町に、まずは農業復活の兆し。
お邪魔したのは、鈴木好道氏のお宅。
鈴木さんは、もともと奥様と裁縫業をされていたとのこと。
震災で一時避難し、いわき市に新たに居を構えまたそうですが、2018年に浪江町に帰還されて、農業に参入。
鈴木さんが始められたのが、トルコ桔梗。
もちろん、先輩の指導もあってのことですが、鈴木さんのつくられたトルコ桔梗は、一年目の出荷で、なんと東京の大田市場で最高値をつけて売れたそうです。
もちろん、浪江町も全開でパックアップ。
鈴木さんは、浪江町公認の、新規就農第一号に認定されたとのこと。
トルコ桔梗の収穫は、もう終わってしまっていて、冷蔵庫に保存されていたトルコ桔梗を見せていただきましたが、鮮やかでした。
一年目でトップは偶然だとおっしゃっていましたが、裁縫業に培ったクォリティチェックの目線が、この栽培では大いに役に立ったとおっしゃっていました。
収穫して、最高品質のものは、大田市場へ。
それ以外のものは、直売所へ出荷。
正月、2回のお彼岸、母の日、お盆、クリスマス年末というトルコ桔梗が売れるタイミングに合わせて、ベストの状態の出荷か出来るか。
それが、これからの課題だそうです。
鈴木さんのトルコ桔梗用のハウスは、2棟。
奥様と二人だけの作業ですと、これくらいでちょうど良いそうです。
ハウスの中の状態は電子管理されていて、逐一鈴木さんのスマホにデータが送信されてくるそう。
そして、このセンサーのデータは、地域の仲間とも、共有しているそうです。
鈴木さんの目標は、出荷量や売上ではなく、あくまで最高品質のレベルアップ。
浪江町の新規就農者のエースとして、農業による復興を目指す浪江町も、全面的にパックアップしていくそうです。
とにかく、ゼロからではなく、マイナスからスタートしている浪江町の農業。
やる気のある、新規移住就農を目指す人には、やりがいのある町かも知れません。
トルコ桔梗の収穫は終わってしまっているので、本日はハウスの畝に残っている、茎の撤去のお手伝い。
草むしりならおまかせ。
このツアーに参加する前日も、畑理草むしりをしてきたばかり。
全員でかかって、これはあっという間に終了。
気がつけば、現場には、NHKや読売新聞などマスコミの取材もふくらみ、結構な人数になっていました。
NHKには、インタビューも受けました。
ここ最近の、NHKはかなり露骨な安倍政権支持のマスコミという認識で、あまりいい印象はないのですが、ローカル局に罪はなし。
老人就農希望者として、カメラの前でお話も少々。
最後は、みんなで記念写真。
撮った写真は、マイナビ情報誌やら、次回バスツアーのチラシの写真として使うそうです。
着替える暇がなかったので、僕だけ完全農作業仕様の服。
でも、出来上がりはちょっと見てみたいものです。
以上にて、農業体験バスツアーは終了。
後は、集合地点と同じ、JR福島駅西口にて解散するのみ。
バスが鈴木さんのハウスの前を出発するときはこの通り。
とにかく圧倒的なウェルカム・モードで紹介していただいた相双地域で現在進行形の農業スタイルの数々。
今回は、たった7人の我々に対して、本当にいろいろと手間暇かけていただいて、ありがとうございました。
今後の就農活動に、十分に参考にさせていただきます。
そして、ごちそうさまでした。
もちろん、口には出していらっしゃいませんでしたが、みなさん、どの顔にもハッキリと書いてありましたね。
「福島来いよ〜! 待ってるぞ〜!」
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