こういう低予算を逆手に取った映画というのが、昔から結構好きです。
そういう映画というのは、昔からホラー映画に結構多いんですね。
サム・ライミ監督の出世作「死霊のはらわた」。
トビー・フーパー監督の「悪魔のいけにえ」
「ブロア・ウィッチ・プロジェクト」「パラノーマル・アクティビティ」などなど。
みんな、低予算を逆手にとって、アイデアで勝負してヒットした作品。
この作品もゾンビを扱ったジャパニーズ・ホラー映画です。
しかし、ホラー映画といっても、この映画の場合、ホラー映画パートは、前半の37分だけ。
残り1時間は、その映画のメイキング自体を、そのまま映画にしてしまっています。
つまり映画は、二部構成。
メイキングは、映画ファンは昔から大好物。
観客へのサービスとして、映画のエンディングで使うパターンや、映画の宣伝として、映画とは別に紹介されることは多くありました。
でも、本作のように、映画の中に、ストーリーとしてまるまる組み込んでしまうというのは、まさにアイデア。
劇中劇というスタイルの映画は、これまでにも、たくさんあります。
しかし、僕の知る限り、たいていは現実と交互に同時進行していくスタイルがほとんど。
その劇中劇を冒頭に、一本そっくり入れてしまうという構成はビックリです。
しかも、その劇中劇は、全篇ワンカットで撮るという、映画的にもスリリングなスタイル。
ちょっと、そんな映画は見たことがありませんでした。
予算はなくとも、面白い映画は作れるぞという心意気を感じます。
もちろん、低予算ですから、知っている俳優は一人も出てきません。
監督の、上田慎一郎という人も初めて知る名前。
さあ、そういう手法で来るなら、こちらにも、楽しみ方はあります。
どうしても、気になったのが、ワンカット撮影ゆえに起きる様々なトラブルが、はたしてシナリオに書かれている事なのか。
それとも、実際に起きたトラブルを、そのままシナリオに取り込んだのか。
そり辺りを想像しながら、ニヤニヤと鑑賞していました。
映画を見ながら、ちょっと思い出してしまったのが、「映画作り」をそのまま映画にしてしまった作品。
フランソワ・トリフォーの「アメリカの夜」なんてのがありました。
トリフォー監督自身が、監督役を演じていて、面白い映画でした。
ジャクリーン・ビセットが綺麗でうっとり。
劇中劇で言うと、渋かったのが、メリル・ストリープの「フランス軍中尉の女」。
「ラ・マンチャの男」なども、それをさらにもう一捻りした劇中劇ミュージカルでした。
日本映画だと、薬師丸ひろ子の「Wの悲劇」なんかも、結構よく出来た劇中劇映画でしたね。
今は、情報の発達で、素人でも、やたら業界通という人が多くいます。
昔は、映画、テレビ、音楽などのエンターテイメントは、送り手と受け手の間には、はっきりとした境界線がありました。
しかし、YouTubeの投稿などで、今は誰もがすぐに「送り手」になれてしまう時代。
昔のような、送り手と受け手の境界線は限り無くボーダーレス。
こういう「裏方のズッダモンダ」が、そのままエンターテイメントになってしまうという素地は、昔よりもはるかに、浸透しているのでしょう。
この映画は、低予算で作られたにもかかわらず大ヒット。
「カメラを止めるな!」は、流行語大賞にもノミネートされるほど。
低予算なにするものぞという、作り手たちの熱を感じました。
さて、この大ヒットで、相当予算にも恵まれて作れるはずの次回作で、この監督が、はたしてどんな映画を作ってくるか。
本当の才能は、そこで試されますね。
すでに作られているかもしれませんが、それは、ちょと楽しみです。
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