「風と共に去りぬ」と同年、1939年に製作されたミュージカルの傑作がこの映画。
なんと、監督も「風と共に去りぬ」と同じビクター・フレミング。
歴史に残る大傑作を同じ年に、2本も撮っているのですから大したものです。
しかも、まるでテイストの違う作品。
この監督のキャリアを、Wiki して見ると、この後「ジキルとハイド」なども撮ってはいますが、やはり尻つぼみの感は否めません。
この当たり年に、その才能の全てを使い果たした感がありますね。
もっとも、この映画も何人かの監督交代劇があって、最終的に彼の名前が残ったということのようですから、多少は「漁夫の利」もあったのかもしれません。
さて、この映画からも、AFIの「アメリカ映画名セリフ・ベスト100」には、3つの名セリフがランキングされていました。
4位にランクインされた、一番有名なセリフはこちら。
「トト、ここはカンザスじゃないみたいよ。」
カンザスの農場から、トルネードで、愛犬のトトと一緒に、家ごと飛ばされたドロシーが行き着いた先は、魔法の「オズの国」。
ドロシーを演じるのは、ジュディ・ガーランド。
この映画では、現実のカンザスのシーンがセピアカラーで描かれ、オズの国がカラーで描かれるという構成です。
よい北の魔女から、「黄色いレンガの道をたどってエメラルド・シティに行き、魔法使いのオズに会えば、カンザスへ戻れる」と教えられたドロシー。
途中で出会う、ブリキ男、カカシ男、臆病なライオンと一緒に、エメラルド・シティに向かいます。
「黄色いレンガ道」と言われて、ピピンときました。
あの、エルトン・ジョンの大傑作アルバム「Goodbye Yellow Brick Road 」の、アルバム・ジャケットにもなっているのは、この映画の「黄色いレンガ道」のことですね。
スター街道爆進中のエルトンに対して、相方の作詞家バニー・トゥーピンが、「自分に戻れ」と戒めたのが、この表題曲に込められたメッセージのようです。
ドロシーのルビーの靴を狙うのが悪い「西の魔女」。
演じているのが、マーガレット・ハミルトン。
嬉々として演じています。
黒い帽子を被り、箒に乗って空を飛び回る西の魔女。
後の魔女キャラのテンプレイトにもなりました。
その西の魔女が、ドロシーに向かってこう言います。
「お前とその犬の命はないからね!」
正直申して、この映画を見た時には、さほど気になったセリフではありませんでした。
はて、なんでもないこんなセリフがどうして、名セリフにランクインされたのか?
おそらく、この映画が大好きなアメリカ人達にとっては、これが何かアメリカ社会に対するメタファになっているのかもしれません。
最初のセリフもそう。
これは、ノーテンキな映画マニアには、ちょっと読み切れませんでした。
ただし、ラストシーンのこの名セリフなら理解可能。
こちらです。
「やっぱりおうちが一番。」
この展開は、メーテルリンクの「青い鳥」も同じでしね。
児童文学には、欠かせないテーマかもしれません。
主演のドロシー役には、最初当時大人気だった子役俳優のシャーリー・テンプルに白羽の矢が立てられたそうですが、残念ながら歌唱力が求められるレベルでなかったので、当時16歳だったジュディ・ガーランドが抜擢されました。
少女を演じるには、微妙な年齢になっていましたが、バストを衣装で押さえたりして、工夫したようです。
ジュディ・ガーランドといえば、枕営業が有名になってしまいました。
この映画では、溌剌として十分魅力的な彼女ですが、自分の容姿には少なからずコンプレックスがあったようです。
この映画の主役を争った同時代の美少女スター・ディアナ・ダービンには嫉妬もしていた様子。
確かに、映画ファンだった我が父親からは、「オーケストラの少女」のディアナ・ダービンは可憐だったと、何度も聞かされていました。
そして、1950年代の薬物スキャンダル。
そのジュディ・ガーランドの波乱の人生をレネー・セルヴィガーが大熱演している「ジュディ 虹の彼方に」が、現在公開中。
チラリとその予告編は見ましたが、こんなセリフがありました。
「私には、歌しかないから!」
あのバーブラ・ストライサンドも、その大きな鼻などものともせずに、「ファニー・ガール」で堂々と主役を演じ、その圧倒的な存在感で、1968年のアカデミー賞主演女優賞を獲得しています。
確か彼女はんなことを言っていました。
「この鼻があるから、私なの!」
もちろん、映画女優にとって、美人であることは売れるための重要な条件かも知れません。
しかし、美人でありさえすれば良いというものでもない。
女優の魅力というのは、それだけではないですね。
あの名曲「虹の彼方に」が、ここまで愛され続けているのも、彼女がこの映画で歌ったことが大きく貢献しているのは間違いのないこと。
自分には歌しかないと言ってはいますが、この人は演技力もちゃんとありました。
1954年に、彼女が出演した「スター誕生」。
今までに、何度も映画化されていますし、最近では、レディ・ガガ主演でも作られました。
僕が見ているのは、今のところ、ジュディ・ガーランド版のみです。
スター俳優と結婚したミュージカル女優が、やがて大スターになっていきます。
反対に、どんどんと落ち目になる夫。
自暴自棄になっていく夫を愛する彼女は、引退を決意しますが、それを知った夫は死を選びます。
ミュージカル俳優として、すでにヴィッキー・レスターという名前を持っていた彼女ですが、新作の試写会の壇上に立った彼女はこう挨拶します。
「私は、ノーマン・メイン夫人です。」
これは、号泣でしたね。もちろん彼女の演技も素晴らしかった。
忘れられないシーンです。
ディアナ・ダービンは、美少女スターのイメージから脱皮できずに、その後、結婚して引退しています。
ちなみに、1976年バージョンで、主役を演じたのは、バーブラ・ストライサンドでしたね。
「オズの魔法使い」は、1978年に、ダイアナ・ロスの主演で、マイケル・ジャクソンなども出演してリメイクされましたが、こちらは大コケしています。
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