さて、1940年代の洋画から、名セリフと言われているものを、イラスト付きで4つほど紹介します。
まずは、1940年に作られた天才オーソン・ウェルズの大傑作「市民ケーン」から。
これは、冒頭での、主人公のケーンの臨終の際の一言。
「バラの蕾。」
映画は、この言葉の意味を解明していくというスタイルで、展開されていきます。
結局この「ローズバット」の意味は、詳らかにされないのですが、ラストに、主人公が少年時代に遊んでいたソリに彫られていた言葉であることだけを観客に知らせて、謎のまま映画は幕を閉じます。
この映画は、当時まだ存命だった新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルにしています。
彼は、この映画を見て怒り心頭。こんな作品はけしからんと、上映の妨害運動を展開し、傑作の誉高かったこの映画は、当時の興行的には、不幸な結果になってしまいました。
実は、ハーストをブチ切れさせた最大の原因というのが、この「ローズバット」。
彼は妻子のある身ででありながら、元女優のマリオン・デイビスを愛人にして寵愛したのは有名な話。
彼女をお城のような超豪邸に住まわせていました。
「ローズバット」というのは、実は二人の寝室内の隠語で、彼女の女性自身の意味。
オーソン・ウェルズは、これを思い切り映画的に茶化してみせたわけです。
そんな恥ずかしい話をネタにされたら、新聞王が怒るのも、無理のない話。
映画の中では、まだ26才だったオーソン・ウェルズの老けメイクはなかなかのものでした。
でも、この天才も、やっぱり人間としては、まだ若かったな・・
さて、お次は1944年の「脱出」という映画。
主演は、ハンフリー・ボガード。
そして、この映画がデビュー作となったローレン・バコール。
この時、彼女はまだ20歳そこそこでしたが、なんとも色っぽかった。
これには、ボギーも参ってしまったようで、この映画の後で二人を、20歳以上の年齢差を超えて結婚しています。
彼女が、ボギーにキスをした後で、部屋を出て行こうとする時に言うのが、このセリフ。
「口笛の吹き方わかる? スティーブ。唇を合わせて吹くのよ。」
なんとも、色っぽいじゃありませかんか。
彼女のこの強烈な視線は、当時「ザ・ルック」と言われたほど。
撮影の時、大スターを目の前にして、緊張で震えていた彼女。
その震えを抑えるために、グッと顎を引いていたらしいんですね。
そうすると、自然と視線は上目遣いになります。
実はこれが、「ザ・ルック」の正体。
映画では、ボギーを相手に、堂々と渡り合っていた印象の彼女ですが、わからないものです。
さて、もう一つ。
1946年の西部劇のマスターピース「荒野の決闘」。
この映画の現代は、”My Darling Clementine”
ご存知、ワイアット・アープとドク・ホリディのOK牧場の決闘の物語。
ワイアット・アープを演じたのはヘンリー・フォンダ。
ドグ・ホリディを演じたのは、マッチョマンのビクター・マチュア。
決闘の物語ではありますが、なんとも詩情溢れる西部劇にしたのは、巨匠ジョン・フォード。
原題にあるクレメンタインを演じたのは、キャシー・ダウンズ。
彼女は、恋人だったドク・ホリディを、東部の町から追いかけてきた女性。
しかし、決闘でドクを失い、傷心のまま東部へ帰ることになります。。
彼女に、密かに恋心を抱いていたワイアット・アープは、ラストの別れの場面で、彼女に告げます。
それは、”I love you.”ではなく・・・
「私は、あなたの名前が好きです。クレメンタイン。」
まあ、なんとも奥ゆかしいことよ。
アメリカ人は、恋愛の告白においては、ストレートが身上だと思っていましたが、この告白はなんとも、日本人的。
だからこそ、名セリフになったとも言えます。
そういえば、この映画の主題歌「いとしのクレメンタイン」を聴いた時に、「あれ?このメロディは絶対どこかで聞いたことがある」とすぐに思いました。
日本では、音楽の教科書にも載るほどの有名な曲でしたね。
「雪山讃歌」です。
元々は、この映画が作られる以前からあったアメリカ西部開拓時代の民謡だそうです。
さて、もう一つ。
「お楽しみはこれからだ」で、和田誠さんが一押しにしていた映画。
1946年製作の伝記映画。
描いているのは、歌手であり、俳優でもあるアル・ジョルスンの半生です。
この人は、なんといっても有名なのが、映画史の中で、はじめて声を出した役者であるということ。
記念すべきトーキー第1作の「ジャズ・シンガー」の主演俳優です。
そのアル・ジョルスンを、この映画で演じたのがラリー・パークス。
この有名すぎるセリフは、「ジャズ・シンガー」での、アル・ジョルスンのセリフではありますが、ここでは、ラリー・パークスのセリフとしてご紹介。
映画の中で、歌うシーンは全て、当時まだ存命だったアル・ジョルスン自身が吹き替えていますが。セリフはもちろんラリー・パークスです。
さて。名セリフは、これから年代別に紹介していきます。
次は、1950年代の作品から。
「お楽しみはこれからだ!」
コメント