Love Letter
ホラーやミステリーばかりで、しばらく恋愛映画を見ていませんでした。
今更、ラブ・ストーリーに胸ときめかせる歳でもありませんが、やはり心に潤いは必要。
次第に劣化していく感性のリハビリにも良いと思い、今から25年前の和製ラブロマンスを鑑賞しました。
初見です。
主演は、中山美穂。
監督は、これが長編デビューの岩井俊二監督。
「Love Letter」です。
近年、この映画へのオマージュとも言える「ラスト・レター」(未見)を発表したばかりの岩井監督。
恋愛の核になるツールとしてアナログの手紙に対するこだわりは、大変強い方のようです。
ふとした偶然で、事故で死んだフィアンセと、同姓同名の女性と文通をすることになるヒロイン。(その女性を演じるのも中山美穂)。
映画前半は、この二人の住み分けがうまく出来ずに混乱しましたが、中学時代の回想がメインになる後半では、その問題も解消。
みずみずしい岩井ワールドを楽しませてもらいました。
この二役をやるにあたって、演じる中山美穂は、髪型を変えましょうかと提案したそうですが、岩井監督は、「いえ。そのままでいいですよ。」といったとか。
映画的わかりやすさよりも、イメージや画面の印象の方に重きを置くのは、CMを多くとってきたことで培われた監督の感性でしょう。
映画を引っ張るのは、なんといっても中山美穂の魅力。
しかし、還暦を超えたオヤジが、「ミポリーン!」というのは、さすがに、自粛することにします。
さて、映画の進行に重要な役割を果たすのが文通。
文通なんて言葉は、今では完全に死語でしょうが、僕の世代では、まだ生きていたコミュニケーション・ツールでした。
雑誌の文通応募コーナーに名前が掲載された友人のところに、日本全国から文通希望の手紙が寄せられたんですね。
到底一人では対応できないと判断した彼は、何人かの友人に、それを回してきました。
僕のところに、回ってきたのは、北海道と沖縄の女子中学生。
国語の成績だけは良く、作文だけは褒められてきた身としては、ここぞとばかりに張り切って手紙を書きました。
主にネタにしたのは、その頃見始めていた映画。
当時は、中学生としては、かなりマセた映画ばかり見ていたので、相当背伸びをした手紙になっていたと思われます。
今では、メールや、LINEでのコミュニケーションが当たり前になってしまっていますが、書いた手紙をポストに投函する時や、届いた手紙の封を開けるときのドキドキ感は、そのアナログの質感とともに、今でも記憶には鮮明に残っていますね。
大学生になってからは、その文通の経験を活かして、作文下手な友人達の「ラブレター代筆」なんてのもやりました。
東京に出てきた沖縄の彼女とは、一度デートをしましたが、やはり写真の印象とはかなり違っていました。
会ったのは、なぜかその一回だけでした。
さて、この映画を見て、もう一つ自分の思い出とリンクしたのは、ワープロです。
映画では、図書館勤務の藤井樹がワープロを利用し、フィアンセの渡辺博子が手書きというふうに、キャラ分けのツールとして利用されていましたね。
1995年製作の映画ですから、まだWindows 95 登場以前。
この頃は、今のパソコンよりも、もっと値段の高かったワープロが全盛時代でした。
活字中毒で、作文オタクだったので、ワープロは初期の頃から、無理して買っていました。
僕が最終的に愛用したのは、シャープの「書院シリーズ」。
練習のために、当時は毎日日記を打ち込んでいました。
さすがにその頃には、文通は卒業していましたが、果たして、ラブレターに活字を使うべきか。
これは、悩ましいところです。
個人的には、超悪筆というコンプレックスがあって、妙に活字偏愛的なところがありますので、ラブレターにもワープロを使ってしまいそうですが、確かに、フィジカルな体温も伝えるアナログの手紙には、到底叶わない部分はありますね。
当時のワープロでプリントアウトした文書が残っているのですが、用紙が感熱紙だったので、今ではかなり色褪せてしまい、かろうじて読める程度。
あれで、ラブレターを書かなかったのは、正解だったかもしれません。
あの頃の、文通相手も、思えば、今はこちらと同じ年齢。
願わくば、僕の書いた手紙はすべて廃棄されていることを心より願いつつ一言。
「お元気ですかーっ! 私は元気です。」
(さすがに、このシーンは、感動的。)
コメント