2006年の韓国映画です。
今年見た「パラサイト 半地下の家族」には唸らされましたが、その同じ監督ポン・ジュノの作品。
主演も同じ、ソン・ガンホ。
とにかく、ここ最近見た韓国映画は、「新感染 ファイナル・エクスプレス」もそうでしたが、レベルが高くてほとほと感心してしまいます。
流石に、文化振興に国が力を入れているだけのことはあって、ハリウッド映画にも負けない迫力があります。
完全に世界をターゲットにした映画作りをしていますね。
そこへいくと、ちまちまと、国内ウケでお茶を濁すような映画作りばかりしている我が国は、かつての栄光も何処へやら。
映画産業でも、そのレベルにおいて、今や完全に韓国映画の後陣を拝している気がいたします。
この映画も、15年前の映画ですが、見応え十分でした。
怪獣映画といえば、かつては日本のお家芸でしたが、その伝統はなくても、これくらいのエンターテイメントには仕上げてくる韓国映画の底力を思い知る一本です。
とにかく、日本の特撮映画も含め、「エイリアン」や「ジュラシック・パーク」「遊星からの物体X」などなど、古今東西のモンスター映画を研究し尽くしているのがヒシヒシと伝わってきます。
着ぐるみの怪獣で、ミニチュアと、ハイスピード撮影による重量感で迫力を出すのが日本スタイルでしたが、この映画の怪物グエムルは、俊敏な動きで、人間を捕食し、暴れ回る「ジュラシック」シリーズのスピルバーグ・スタイル。
そして、この怪物に対決を挑むのは、韓国政府でもなければ、軍隊でもありません。
娘を奪われた家族達です。
しかも、彼らは怪物のウイルスに感染しているという疑いで、当局からも追われるという展開。
この家族に対する強烈な執着は、韓国映画の伝統なのか、それともポン・ジュノ監督のこだわりなのかは、僕には勉強不足でわかりませんが、とにかく日本の怪獣映画には、なかなかない展開です。
ただし、怪物の出現に至る経緯に、社会問題を絡ませるという設定は、日本の伝統的怪獣映画を踏襲していて、ゴジラやガメラの登場背景には、核問題がありましたが、本作では、2000年に、韓国で実際に起こったという在韓米軍の劇薬放流事件をストーリーに取り込んでいます。
反米という韓国の社会問題は上手に隠し味にしながらも、日本の怪獣映画を見慣れてきたこちらの常識では、ちょっと予想できないスリリングな展開で、ラストの家族達と怪物との対決へとなだれ込みます。
そして、家族一丸となって救おうとした娘ヒョンソの命は・・
2015年の庵野監督による「シン・ゴジラ」は、日本の怪獣映画の伝統を踏まえつつも、新しい表現に果敢に挑戦して頑張ってくれました。
しかし、伝統においては確かに勝っている怪獣映画というジャンルにおいても、あまりウカウカしていると、全く新しい感覚の韓国映画に、そのうちお株を奪われてしまう危険性はヒシヒシと感じた次第。
とにかく、韓国映画は、今や世界のマーケットを睨んでいます。
「パラサイト 半地下の家族」が、アカデミー賞を獲得したのには、ビックリしましたが、もしかして、怪獣映画オタクが熱望する、世界初のアカデミー作品賞を受賞する怪獣映画を作るのは、日本でもハリウッドでもなく、案外ダークホースの韓国映画かもしれません。
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