ノッティングヒルの恋人
主題歌「SHE」を歌っていたのは、エルビス・コステロです。
元歌は、シャンソン歌手シャルル・アズナブールが歌っていた「忘れじの面影」。
1974年の歌です。
この歌は覚えておいて損はないと、女子とのカラオケに備えて必死で覚えましたね。
そんなわけで、そのビデオ・クリップは何度も繰り返し見ましたので、この映画のハイライト・シーンはすっかり頭に入っていましたし、どんなストーリーかもほぼ承知していました。
しかし、しっかりと映画を鑑賞したのは今回が初めて。
主演は、「プリティ・ウーマン」で、人気絶頂だったジュリア・ロバーツ。
キャメロン・ディアス、メグ・ライアン、ドリュー・バリモアなどと並んで、ラブコメが最も似合う女優として評価されていました。
しかし、本人としては、その評価を潔しとせず、この映画が公開された翌年に主演した「エリン・ブロコビッチ」で演技開眼。
アカデミー賞主演女優賞を獲得して、大女優の仲間入りを果たしました。
というわけで、本作は彼女の「ラブコメ」卒業作品ともいうべき一本ですね。
相手役のヒュー・グランドも、ラブコメにおいて、最もその魅力を発揮した俳優。
ハリウッド女優が、ロンドン郊外のしがない本屋の店主と恋に落ちるという、映画ファンなら誰もが妄想する究極のラブ・コメディです。
このありがちな「夢物語」を楽しませてもらうには、それを可能ならしめるリアルのシチュエーション設定が不可欠なのですが、そのあたりの展開は正直申してやや微妙。
主演の二人の魅力で、やや強引に展開させている印象は否めず。
一般人と有名女優が、ああも簡単にキスに至るかという導入部。
映画としては、こう展開せざるを得ないのでしょうが、正直申して、説得力にはかけました。
しかし、そんなことで突っ張るのは、この手の映画ではヤボというもの。
そこは、ジュリア・ロバーツの、顔面の筋肉フル活躍の極上の笑顔に免じて、目ををつぶることにいたします。
出世作「プリティ・ウーマン」は、ヤングセレブと恋に落ちるストリート・ガールのシンデレラ・ストーリーでしたが、本作の設定はほぼその逆。
オードリー・ヘップバーンの往年の大ヒットロマンティック・コメディ「ローマの休日」の身分の差越えラブストーリーの展開系と言っていいでしょう。
こういうお話は、魅力的なヒロインさえ得れば、まず鉄板のヒット映画になります。
映画ファンは、潜在的にこういう「物語」が好きなんですね。
僕などは、かなりマゾヒスティックなので、このヒュー・グラント演じる主人公は、雲の上の大女優に本気になってしまうという「身の程知らず」を、もっと徹底的に味わってくれた方が、ラストのカタルシスにはつながるなあと思ってしまうのですが、如何でしようか。
ちょっと、うまくいきすぎなような・・
映画を見終わってから、思わず見返したシーンがありました。
彼女と別れて、主人公が一人寂しくノッティングヒルを彷徨するシーン。
ワンカットに見える撮影なのですが、その画面の中で、四季が巡っていくんですね。
改めて見直すと、最初の方で妊娠していた女性が、最後の方では子供を連れて歩いているという細かい演出。
上手に編集されている擬似ワンカットのようでしたが、「夢物語」を象徴する面白いシーンでした。
映画の中で、主人公の店の店員が、彼女を「ゴースト ニューヨークの幻」のディミ・ムーアと間違えたり、メグ・ライアンを語るシーンがあったりと、当時の「ラブコメ」事情をネタにしているあたりはニンマリ。
この手の映画は、日本映画はあまり得意な分野ではありませんが、どうすれば日々野菜作りに精を出す百姓と、セレブな映画女優との接点が有り得るかという妄想は勝手に膨らみますが、どうも映画にはなりそうもありません。
もしも、間違ってジュリア・ロバーツのような美人が突然畑に現れたら、いつでも、ハーブティを出せる準備くらいはしておきましょう。
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