ショーほど素敵な商売はない
マリリン・モンローは、1950年代まるまると、1960年代の初めちょこっとまで活躍した女優ですから、彼女に悩殺された映画ファンは、僕よりもひとまわり年上の、いわゆる団塊の世代のオジサマたちです。
僕の世代は、「伝説のセックス・シンボル」とてしての彼女を、映画雑誌やグラビアで追体験していましたね。
彼女の作品群を、Wiki してみましたが、それでも半分以上は見ています。
でも、その多くは、テレビ放映されたものでした。
ですから、マリリン・モンローというと、彼女の吹き替えを一手に引き受けていた、向井真理子さんのあのセクシーで甲高い声のイメージが頭にこびりついています。
彼女の代表作「七年目の浮気」を、名画座で見たのは、大学生になってからでしたが、スクリーンで彼女のナマの声を聞いたときは、グッと低くてビックリしたものです。
僕が、マリリン・モンローと言われて、すぐに思い出すのが、 “Goodbye, Norma Jeane”という歌い出しから始まるエルトン・ジョンのバラードの名曲「CANDLE IN THE WIND」です。
ノーマ・ジーンというのは、マリリン・モンローの本名です。正式には、ノーマ・ジーン・ベイカー。
エルトンの最高傑作アルバム「GOODBYE YELLOW BRICK ROAD」に収録されていた曲で、マリリン・モンローに捧げられています。作詞はバニー・トーピン。
後に、この歌は「CANDLE IN THE WIND 1997」として、自動車事故で亡くなったイギリスのダイアナ元王妃に捧げる曲としてリメイクされました。
“Norma Jeane”は、”England Rose”と、歌い変えられていました。
そして、もう一つ忘れられないのが、実はコミック本です。
僕の大好きだった多湖輝氏の「頭の体操」シリーズの挿絵を描いていた水野良太郎氏が描いた劇画です。
検索してみたら、なんと見つかりました。
「U.S.A.聖女伝マリリン・モンロー」と言うタイトルでしたね。読んだのは、おそらく小学生の頃です。
彼女の一生を、コンパクトにまとめた内容で、これは水野氏の絵が好きだったこともあり、何度も読んでいます。
映画や雑誌を見るよりも、この一冊で、マリリン・モンローの基礎知識は、ほぼ頭に叩き込まれていますね。
日本では、「聚楽」のコマーシャルのイメージが強いかもしれませんが、彼女が「セックス・シンボル」と呼ばれることを嫌って、リー・ストラスバーグのアクターズ・スタジオで研修し、演技派への脱皮を図っていたこと。
母親が精神疾患で入院していた事などもあり、デリケートな彼女が、しだいに精神的に追い詰められていく過程。
ジョー・ディマジオとの日本へのハネムーン。そして、朝鮮戦争慰問。
ケネディ兄弟との不倫。
睡眠薬のオーバードーズにより、ベッドの上で全裸で死んでいた彼女が握っていた受話器。
果たして、最後の話し相手は誰だったのか。
伝説のセクシー女優の人生は、なかなか刺激的で、映画マニアとしては、作品そっちのけで、そっちの方面ばかり追っかけていたような気がします。
彼女の検死解剖を行ったのは、トーマス野口という、アメリカ在住の日本人医師でしたが、彼の著書なども読んだりしましたね。
「紳士は金髪がお好き」を撮ったハワード・ホークスの自伝も読みましたが、マリリンは、現場では自信なさげにオドオドしていたといいます。彼女は、自分がスクリーン登場するのを怖がっていたとも言っています。
監督は最初心配したそうですが、しかし、いざカメラを回してみると、そこにはちゃんとセックス・シンボルとしての彼女が映っていてビックリしたそうです。
マリリン・モンローは、カメラに愛された女優だと、ハワード・ホークスは言っています。
彼女は、全キャリア中、8本の映画で得意の喉を披露していますが、本作は、その中で最も本格的なミュージカル映画です。
Wiki によれば、本作の出演は、「七年目の浮気」に主演するための条件として、キャスティングされた役とのこと。
本作の主演は、エセル・マーマンという往年のミュージカル女優で、この映画撮影時は、すでに46歳になっていますので、かつては「ブロードウェイの女王」と言われた女優とはいえ、さすがによる年並みには勝てませんよという状況。
彼女では、客は呼べないと判断した20世紀フォックスは、集客目的で、若くてピチピチしたマリリンを配役に加えたと言うことのようです。
タイトルの「ショウほど素敵な商売はない」は、元々エセル・マーマン主演のミュージカル「アニーよ銃をとれ」の挿入曲で、彼女自身の代表曲でもあります。
この曲をそのまま、タイトルにして製作してしたのが、本作ということになります。
本作で音楽を担当したのが、アービング・バーリンという人。
さて、この名前、どこかで聞いたことがあるなあと思っていたら、思い出しました。
そうです。そうです。
あの「ホワイト・クリスマス」を作詞作曲したのがこの人でした。
世界で一番売れたと言われているあの名曲です。
元々は、この曲を歌ったビング・クロスビー主演の「スイング・ホテル」の主題歌でした。
冒頭のタイトルでは、この人の名前がドーンと出ていましたので、本当の意味でのこの映画の主役は、この人かもしれません。
本作は、芸人一家のドナヒュー家の年代記という形になっています。
主演のエセル・マーマンを、映画の中で支えていたのは、もちろん、マリリン・モンローだけではありません。
本作で夫婦の長女を演じたのが、ミッチー・ゲイナー。
この人は、僕が初めて見たミュージカルに主演していた人なので、よく覚えています。
中学時代に見た、その映画のタイトルは「南太平洋」。
全盛期を過ぎ凋落の一途を辿っていたミュージカル映画が、スタジオを飛び出して、南国の島へロケーションを敢行し、後の「ウエストサイド物語」へのブリッジともなった作品です。
歌ったのは、彼女ではありませんでしたが、「バリ・ハイ」は名曲でしたね。
それから、次男を演じたのはドナルド・オコーナー。
この人もどこかで見たことがあるなと思っていたら、思い出しました。
僕の大好きなミュージカル「雨に唄えば」に出演していてました。
ジーン・ケリーやデビー・レイノルズと息の合ったダンスを披露してくれましたが、この人の真骨頂は、その抜群の身体能力を活かした、コミカルな味付けのダンスです。
本作でも、ジーン・ケリーのあの雨中のダンス彷彿とさせる一人ダンスを披露してくれていますが、なかなかいい味を出していました。
もちろん、主演のエセル・マーマンも健闘してくれるのですが、やはりダンスのキレは、若さには敵いません。
マリリンにこの若い2人が絡んだ、”Lazy”が、個人的には、この映画の中のダンス・シーンとしては白眉。
それから、お約束の、マリリン悩殺系ダンスとしては、”Heat Wave”が、グッときましたね。
ビリー・ワイルダー監督も、コメディエンヌとしての彼女の才能は認めていましたが、彼女の歌と踊りも、なかなかどうして、捨てたものではありません。
ハリウッドの並み居るミュージカル女優の中にも、彼女のテイストを出せる踊り手はなかなかいません。
残念ながら、演技派としては評価はされないまま、この世を去ってしまった彼女ですが、彼女の残してくれた作品だけでも十分に、マリリン・モンローは神話となって、これからも語り継がれていきそうです。
セクシー女優を目指す方は、是非彼女の演技を参考にされたし。
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