バスカヴィル家の犬
ロンドン市ベーカー街221B。
おなじみ名探偵シャーロック・ホームズの、事務所兼住まいのある住所です。
これまだ覚えてましたね。
実際にこの住所は存在しないようですが、世界中からこの住所には、事件の依頼の手紙が届いたそうです。もちろん、この住所に尋ねて行ったシャーロキアンも相当数いたそうです。
僕は、シャーロキアンというほどのファンではありませんでしたが、やはり、「怪盗ルパン」シリーズ同様、小学生の時に、ポプラ社発行による子供向けシリーズは、多分全巻読んでいますので、その末席くらいには座らせてもらえるかもしれません。
アルセーヌ・ルパンの「奇巌城」を50年ぶりに再読したら、やはりシャーロック・ホームズも読み直してみたいという気になりました。
「怪盗ルパン」シリーズは、短編や中編よりも、長編の冒険譚に面白い作品が多かった印象ですが、ホームズ・シリーズの場合は、逆に短編の方に、切れ味の良い作品が多かった印象ですね。
ほとんどの短編は、まず依頼人が事務所に訪ねてくるところからスタート。
推理の素材はほぼそこで提供され、読者はドクター・ワトスン、そしてホームズと一緒に、事件の真相に誘われていく展開です。
印象に残っている作品といえば、「赤毛連盟」「まだらの紐」「踊る人形」「這う男」など。
そのトリックも、まだうっすらと記憶しています。
そんな中で、一番記憶に残っている作品を一つ挙げろと言われれば、実は短編ではなく長編の「バスカヴイル家の犬」になります。
この作品は、ホームズ・シリーズの中に、4作だけある長編のうちの一つですが、やはり「口から火を吐く黒い猛犬」のイメージが強烈でした。
当時頭の中で妄想したそのビジュアルの記憶が、今まで覚えていられた原因かもしれません。
今にして思えば、本格推理物に、モンスターを登場させるのは反則のような気もしますが、この「火を吹く」というところは、謎解きパートで、種明かしがあります。
コナン・ドイルは、ホームズ・シリーズの他に「失われた世界」”The Lost World”という恐竜が登場するSF作品なども執筆しており、超自然的分野にも興味が相当あった方です。
晩年には、心霊現象にも相当首を突っ込んでおり、20世紀初頭のイギリスで話題になった「コティングレイ妖精事件」でも、少女たちの捏造悪戯写真に、専門家として本物のお墨付きを出してしまって、問題をややこしくしてしまった張本人。
そんな彼の超自然趣味は、ホームズ作品にも、かなり反映されていて、中には「うーん」と首を傾げてしまう解決も、いくつか散見します。
例えば、「まだらの紐」の正体は、誰もが悲鳴をあげる「あいつ」ですし、「這う男」では、類人猿のエキスらしきものを飲んだ老人が、獣のように、四つ足で走ったり、3階の窓から覗いたりをしでかすという、やや首を傾げる展開でしたね。
「四つの署名」という長編でも、どこかの島に生息している小人族というのが登場して、推理を撹乱させたりしていました。
なんと言っても100年以上も前の推理小説ですから、それでもなんとか許されるのでしょうが、そんなトリックを今マジに使えばミステリー・ファンからは噴飯モノでしょう。
今回50年ぶりに、読んだのは文庫版でしたが、やはり小学生向きに翻訳されたポプラ社版とは、やや趣が違いました。
本作は、シリーズの中では、比較的映像映えすることもあり、過去にも何回か映画化はされています。
一番有名なのは、イギリスのハマープロが1959年に製作したもの。
恐怖映画の老舗だけあって、かなりおどろおどろしいムードで撮られています。
なんと言っても、シャーロック・ホームズを演じているのが、あのピーター・カッシング(「スターウォーズ」のモフ・ターキン)ですから、ミステリーというよりは、ホラー映画の味わいですね。
この映画には、ドラキュラ伯爵役で有名な、クリストファー・リーまで出演していますから、なおさらです。
映像作品について、いろいろとWiki していたら、なんと今年日本でも映画化されているのでビックリしてしまいました。
主演は、人気のイケメン男優ディーン・フジオカで、舞台は瀬戸内海の小島だそうです。
未見ですが、映画情報から察するに、いかに垢抜けたディーン・フジオカが主演とは言っても、日本を舞台にしてしまいますと、どうしても金田一耕助に寄ってしまいそうな気もいたします。
バスカーヴィルの犬が、九尾の狐だったりして。
Amazon プライムにラインナップされれば、是非みてみたいと思います。
さて、シャーロック・ホームズにハマってみれば、最終的には、やはり自分でも創作してみたくなりましたね。
このホームズ・シリーズをベースにして、漫画を描いてみたくなりました。
当時は、横山光輝作品にかなり傾倒していて、かなり本気で将来は漫画家になりたいと思っていましたから、主人公のキャラ作りはあっという間でした。
その名も、恥ずかしや「名探偵ヒームズ」。
センスのかけらもないネーミングですが、もちろんその造形はシャーロック・ホームズから引用しています。
ハンチング帽にロングマント、くわえパイプ。
この辺りを抑えていれば、どんなに絵が下手でも、一応「名(迷)探偵」には見えますね。
こんな感じでした。
主人公のキャラが決まったらホームズの短編から、ちょっと使えそうなトリックを拝借して、簡単なストーリー漫画にして、学校に持って行って友人たちに見せるわけです。
何人かは面白がってくれました。
漫画を描いたノートは巡り巡って、女子まで回ってしまったのですが、「この子かわいい。次の出来たら見せて。」と言ってくれたのが、なんと当時密かに思いを寄せていた女子で、これで一気に気合が入りました。
しかし、小学生に、そう簡単にトリックなど思いつきません。
そこで、ネタ探しに、店の本を漁り、見つけた本がこれでした。
藤原宰太郎著「世界の名探偵50人」。
古今東西のミステリーから、気の利いたトリックを抜粋して、クイズ形式にした内容です。
この著者は、この分野のオーソリティで、あの当時、この手の推理クイズ本をたくさん発表してくれていましたね。
Amazon で検索してみたら、文庫版になって再発売されていた物を、中古で発見。
これはちょいと懐かしくてポチしてしまいました。
昔から、何事も飽きっぽくて、何を描いていても、すぐに放り出して、新しく興味の湧いたものに移行するのがお決まりだったのですが、この漫画だけは、そんな下心があったので、結構頑張って描いた記憶です。
卒業の頃になると、クラスメートでノートの回しっこをして、メッセージを書き合うのが流行りましたが、その子から回ってきたサイン帳には、リクエストされて、「名探偵ヒームズ」を描いて喜ばれました。
おそらく、あのキャラを描いたのは、あれが最後だったと思います。
シャーロック・ホームズは、「最後の事件」で、大悪党モリアティ教授と共に、滝壺に落ちて死んでしまいますが、3年後に復活します。
しかし、残念ながら我が「名探偵ヒームズ」の方は、その後復活することはありませんでした。
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