はい、もちろんオリジナルの「カメラを止めるな!」は見ています。
製作費がないことを逆手に取った、映画愛に溢れる奇跡のようなコメディ・ホラー映画でした。
本作は、そのリメイク版です。
海外でリメイクされた日本映画といえば、代表的なものは、やはり「七人の侍」。
同じく、黒澤明監督の「用心棒」も、マカロニ・ウェスタンに翻案されています。
ホラー映画としては、「リング」「呪怨」もハリウッドでリメイクされていますね。
平成になって以降、何かと落ち目な日本ですが、こうやって日本の作品が海外でリメイクされるというのはやはり嬉しいもの。
意外だったのが、このリメイク映画化権をお買い上げいただいたのがフランスなんですね。
個人的印象で申し訳ありませんが、フランス映画というのは、どこかクールな大人のイメージがあります。
喜怒哀楽も控えめで、ド派手な力技演出や、感情が露わになるような映画表現は、はしたないというお国柄だろうと勝手に思っていました。
製作費をふんだんに注ぎ込んだ、スペクタクル大好きなハリウッド映画や、それにすぐ「熱狂」したり「絶叫」したりする「全米」を、どこか子供でもみているような視線を送っているのが芸術先進国がフランスのイメージ。
それが韓国でもなく、インドでもなく、アメリカでもない、フランスによるリメイクというのが面白いと思いましたね。
フランスの映画人たちが、こぞって小津映画に対して、最大級のリスペクトを送っているのは有名な話です。
個人的には、小津の枯れた静的な演出が、彼らの心を捉えるのは、なんとなく理解が出来るわけです。
しかし、本作のオリジナル日本版のテイストは、それとは全くの正反対。
なにせゾンビ映画ですから、血は飛び散るわ、首はチョン切れるわと、際どいシーンの連発。
そして後半は、完全なる仮想モキュメント・テイストのスラップスティックに近いコメディ映画という二重構造の映画です。
そして、あのラストのコテコテの「感動シーン」。
フランス人が最も軽蔑するテイストが満載の映画が本作だと思ってしまうのですが、実際の評価はさにあらず。本作のフランスでも、概ね好評だったようです。
フランス映画といえば、重厚なジャン・ギャバンや、クールなアラン・ドロン。
フィルム・ノワールや、ヌーヴェルバーグ、そしてアニエス・ヴァルダ監督に代表される静かな女性映画の印象が強いだけに、本作がカンヌ映画祭のオープニングでプレミア上映され、大喝采を浴びたというわけですから驚きです。
記憶にある限り、フランスのコメディ映画というと、「地下鉄のザジ」や、ジャック・タチの「ぼくの叔父さん」シリーズくらい。
フランス人は、映画館で笑ってしまったら、そんな自分を恥じるくらいの国民性があるものだとばかり思っておりました。
これは僕の思い込みが完全に間違っていたということでしょう。しっかりとアップデートしておきたいと思います。
いずれにしても、日本でしか受けないだろうなと思っていたエンターテイメントを、このように取り上げてもらったことは嬉しい限り。
映画文化にまるで関心がない政府に冷遇され、映画文化後進国になりつつある我が国としては、その復活のためには、世界の黒澤がそうであったように、海外からの「高評価」だけが頼りです。
是非、我が国の力作が埋もれてしまう前に、これからもどんどんリメイクしていただければ幸いです。
どうか、その「キャメラを止めるな!」
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