ああ、ビックリした。
兵庫県知事選で、斎藤元彦前知事が大方の予想を覆して再当選されました。
この結果を、1ヵ月前に想定できた人がはたしていたでしょうか。
おそらくは、大手マスコミのほとんどが、この結果に大きな衝撃を受けていることと思います。
とにかく、誰がなんといおうと、この結果が間違いなく兵庫県民の民意であることは受け入れざるを得ないことは事実です。
いったい兵庫県では何が起きていたのか。
実は、個人的には大手マスコミの報道にはかなり以前から嫌悪感を持っていました。
特に政治関係のニュースには、政府から大きな圧力をかけられ、捻じ曲げられている印象を強く持っています。
そんなわけで、テレビを見なくなってからすでに10年。
その間にニュース・ソースとして、我が日常に台頭してきたのがネットニュースです。
主にYouTubeですね。
もちろん、その多くが個人による発信ですので、内容が玉石混合であることは承知です。
それを判断する目は求められるにしても、「あんたたち庶民は、何も考えずにこのニュースを信じていればいい」という中立公正を大上段に振りかざしたマスコミの偏向報道を暴力的に刷り込まれるよりは、はるかにましだという思いがあったわけです。
そんなわけなので、斎藤元彦知事現職当時のパワハラ疑惑や、公益通報者保護法違反のニュースに関しては、テレビで何が報道されていたかは知りません。
西播磨区局長の告発文書及び同氏の自殺、百条委員会のやりとりも、すべてネット動画を通じて知ったことです。
こちらとしても、かなり関心をもってチェックしていたので、我がスマホには気がつけば動画視聴動向のアルゴリズムを検知して、視聴動画の一覧にも、斎藤元彦の動画がズラリと並ぶことになりました。
性格がアマノジャクのもので、斎藤氏の知事としての資質を疑問視する動画ばかり見てみますと、そうではない動画はないものかと探したりするわけです。
しかし、少なくとも僕が探した範囲では、斎藤知事擁護派の動画は、ほとんど見当たりませんでした。
もちろん、YouTuberたちも商売ですので、動画の再生数が伸びる動画を出したくなるのは理解できます。
そうなれば人のバッシングは蜜の味。
たいしたファクトチェックもなく、受けそうな話題を針小棒大に膨らませて再生数を伸ばそうというのは個人経営YouTuberたちの本能です。
チラリとマスコミのニュース(テレビニュースも動画に上がっていますので)をのぞいてみると、相手が自分たちと直接利害関係がない相手だと、彼らも普段のうっ憤を晴らすかのように、徒党を組んで斎藤知事を吊るし上げるわけです。
いかがなものかとは思いつつも、やはり修羅場は面白いので、こちらもそんな動画をついつい見しまうわけです。
「パワハラ疑惑」「おねだり体質」も、ネタとしてはそれなりに面白いので、権力の魔力にとりつかれれば、そんなこともあるかとみているうちに、コチラの中にも知らず知らず、ネット情報で構築した斎藤元彦像が作り上げられていきます。
よくよく考えれば、これしきのパワハラなら、日本全国の県庁組織や大企業にはそこそこあるだろうなどとも思いつつ、それとは別にこの件に関しては、最後まで引っかかっていたことが一つ。
それは、斎藤元彦氏が、自殺した西播磨県民局長に対し、自分の責任を一切認めず、どれだけ詰め寄られても謝罪をしなかったという点でした。
「法的責任ではなく、道義的責任をかんじないのか」という記者の質問に対して、斎藤氏は「道義的責任の意味がわからない。」と終始答弁していました。
おいおい、人一人が死んでいるのに、それはないだろうというのが、動画をみていた僕の率直な感想でした。
斎藤氏は、百条委員会で証言した後、県議会議員全員から不信任決議を出され、それでも議会は解散せず、自動失職を経て、県知事選に再立候補を表明します。
そして、その直後から、県の主要な駅頭に立ち、県民たちに頭を下げ始めます。
ここでも、個人的な感想は、そこまでして知事の椅子にすがりつきたいのか。
知事の権力というのは、そんなに魅力的なのかということ。
もちろん、どんな状況でも、一定数の応援者はいるだろうと思っていましたが、それがこの知事選挙の最終日に、マスコミが報道することはなかった三宮駅前での最終演説で、あれだけの県民が集まる光景につながるとは想像していませんでした。
どうやら、当事者である兵庫県民には、僕ら外野席客には見えていなかった何かが伝わっている。
そう思い始めたのが、個人的にはやっと昨日のことです。
そして、本日YouTube動画を確認して知ったこの斎藤氏再当選の事実。
あわてて、いろいろな人の意見動画をチェックしてみたら、昨日までは見かけなかった(影を潜めていた?)、斎藤知事を応援する動画もチラホラ。
斎藤知事は、県政改革を推進しようとしたことで、既得権益にどっぷりつかっていた一部の県幹部や議員たちによってハメられたのではないかというわけです。
百条委員会自体も、この路線に沿って仕組まれた、斎藤元彦知事失脚ありきの出来レースとまで言われてしまうと、こちらも穏やかではありません。
この辺りの暴露に一役買ったのが、NHK党の立花貴志氏。
斎藤知事の応援のためという前代未聞の理由で立候補して、次々と証拠の音声データをさらし、斎藤知事の失脚は、マスコミと一部の県幹部によって捏造された事実によるものということを熱弁していきます。
二人の共闘はなかったというものの、立花氏の存在が、今回のこの選挙結果に決定的な影響を与えたのは間違いのないところ。
彼の選挙運動は、マスコミにはほぼ取り上げられることはありませんでしたが、彼の演説を聞きに行った県民には届いていたと見るのが妥当でしょう。
個人的にも正直この人には、いつでも「お騒がせ」の確信犯であるというイメージが付きまとっていたので、彼の演説はまともに聞いていませんでした。
しかし、今日になってわかったことが一つ。
押収された県民局長のパソコンから出てきたものの中身です。
もちろんそこには、マスコミや警察に流された問題の告発文書もありました。
そして、「転覆」や「クーデター」といった、公用のパソコンにあるには明らかに不適切な、現県政に対する反旗を翻すような文書データ。
これは、百条委員会でも、片山前副知事が触れていました。
そして、もう一つが、倫理的に問題のあると言われていた県民局長のプライベート・データです。
三点とも承知はしていたのですが、問題は最後の一つ。
この中身が個人的に想定していたものよりもはるかに衝撃的なものでした。
そこにあったのは、県民局長が10年にわたって、その人事権を悪用して、県の複数の女性職員に対して行っていた不適切な関係の強要。ありていにいえば不倫日記データ。
(そこには動画も保存してあったんだとか。ほんとかい?)
これが本当に、公用パソコンの中に保存してあったのだとしたら、話は根底から覆ります。
プライベートの保護もへったくれもありません。いや、むしろこれを隠蔽する方が犯罪でしょう。
まさにパワハラと言う犯罪の証拠物件に他なりません。
人の色眼鏡というのは恐ろしいもの。
そこに、本人にとって不都合なプライベートであることはわかっていましたが、なにせ県民局長は「パワハラ知事による被害者」というこちらの思い込みがあり、不都合とはいっても、そこにあったのは、人妻県職員に対する私的ラブレター程度のものだろうと勝手に思っていました。
このプライベートの件に関して、百条委員会の公聴の場で、その件に関して片山副知事が言及しようとした際、奥山委員長がその発言を制止するという場面も見ています。
しかしこれも、その思い込みのせいで、それは当然だくらいに思っていましたね。
ところがです。さあこれが、権力者が職権を乱用した不倫強要となれば、話はまったく別の次元にジャンプします。
動画に頻繁に流用されていた、県民局長の人のよさそうな笑顔が、全く別の顔をしたモンスターにも見えてくるわけです。
ミステリー小説が好きで、よく読むのですが、今回のショックは、ちょうど秀逸な叙述トリックで、それまでのすべてをひっくり返されるような衝撃がありました。
優れた叙述トリックでは、一度ひっくり返されてしまうと、今まで見てきた事実は、同じもののはずなのに、今までとは全く違う側面を見せてくるんですね。
公的パソコンの中身を説明しようとする見解は、自分たちの正当性を主張し、自分たちを守るためと見えていたものが、実は県民局長の不都合なプライベートを守っているようにも見えてきます。
県民局長の自殺についても、「一死をもって抗議する」というパワハラ被害者の叫びにも聞こえていましたが、これを知ってしまっては、これもまったく別のものに見えてきます。
そりゃあそうでしょう。こんな倫理的に問題のあるプライベートを公開されてしまっては、残りの人生どこに転職しようと生きていけるものではありません。
家庭崩壊も、火を見るより明らか。
つまり、彼の自殺は、決して抗議のためでなどではなく、ある意味では自業自得。覚悟の行為だったというわけです。
しかし、この自殺を、アンチ斉藤グループは巧みに利用しました。
県民局長の犯罪行為は隠蔽して、彼が自殺した原因の全て斉藤氏に押し付けたのです。
そして、マスコミがこの隠蔽に加担したことも、立花氏が提示した様々な証拠によって明らかになっています。
そこに、政治とマスコミ二人三脚による共同正犯が成立していた事は想像に難くありません。
斎藤知事ははたして、ハメられていたのか。
兵庫県政には、長年の県政で積み上げられてきた不文律がありました。
それは、県知事の職には、常に総務省出身の官僚が就いていたこと。
そして、県知事が退いた後の椅子には、常に副知事が座っていたこと。
これが長い期間続けば、間違いなくそこには、利権の構造と、それを守ろうとする体質が常態化することになります。
そしていつしか、県職員も、その利権の構造の中にどっぷりと浸かって仕事をするようになります。
そんな、兵庫県政の流れの中で、2020年の県知事選挙で、当時の副知事候補を破って当選したのが斎藤元彦氏でした。
彼が公約通り、積年の利権の構造にメスを入れようとすれば、兵庫県庁が一丸となってそれを死守しようとすることは火を見るよりも明らか。
そんな県政を背景にして、今回の斎藤元彦知事の告発文書問題が仕組まれたと考えるのは、本日只今においては、ごく自然に納得できます。
今回このような民意が兵庫県民によって示されたことについては、もはや文句のつけようがありません。
関東に住む僕ごとき門外漢が、ネットソースからでは知りようもない兵庫県に漂う空気があったことは事実でしょう。
そして、それに突き動かされた兵庫県有権者の投票行動を、もはや大手マスコミも、兵庫県政も、コントロールできなくなっていたということを今回の投票結果が如実に物語っています。
この結果になってしまっては、斎藤元彦前知事失脚計画に加担していたという自覚のある者たちは、おそらく戦々恐々でしょう。
パワハラやおねだりネタの捏造に加担した者たち、兵庫県政に根付いた旧体制の利権の中で、甘い汁を吸ってきたものたち、条委員会で斉藤知事を追い詰めた各会派の議員たち、県民局長の悪行をわかっていながら見て見ぬふりした職員たち。
彼らがこの先どういうリアクションを取るのか。
これは野次馬からしてみればちょっと見ものです。
今回の選挙は、今まで起きそうで起きなかったことがついに起きたと言う印象を強く感じます。
大手マスコミと政治が共闘してコントロールしていた民意が、ついにコントロールできなくなるという事態が勃発したと言う事は間違いなさそうです。
思えば、政治やマスコミはある意味で国民をなめていました。
国民が政治に無関心なことをいいことに、国民の税金を自分たちの権力維持のために使い、影に隠れて好き放題。
そして、それがバレないように、マスコミを囲い込み、一緒になって、甘い汁をチューチュー吸っていたわけです。
まぁ、あまり大きな事はいいますまい。
つい昨日までは、僕自身もこの人の当選などありえないと、眉を顰めていた一人であることは間いありません。
今日になって、この選挙結果とひっくり返された事実を知って、いきなり手のひらを返したように斎藤氏を擁護しようなどとはやはり虫がよすぎます。
個人的に斎藤氏をバッシングした事こそありませんが、それをするなら、まずは斉藤氏にしっかり謝罪をしてからでしょう。
「申し訳ない。あなたを誤解していたようです。この民意を得た上は、どうか堂々と胸を張って兵庫県のためにご尽力ください。」
後は、何か新しい事実が発覚して、この結果がまたひっくり返らないことを祈るのみ。
アメリカの大統領選しかり、自民党の総裁選しかり、今回の兵庫県知事選挙しかり。
ここのところ政治に関する個人的な予想は見事に外れまくりです。
おそらくは大手マスコミも権力者たちも、自分たちの思うように、選挙民をコントロールすることは難しくなったと言う事は実感していると思われます。
そう考えると、これから行われる選挙は、何がどう転ぶかは全く予測不可能になってくると言う事。
考えてみれば、1票を投じる有権者の1人にとってこんな面白い状況はないともいえます。
国民が政治に関心を持ってしまったら、おそらくこの国には困ってしまう政治家がごまんといるはずです。
そんな政治家たちに一言。
あんたら、覚悟しとけよ!
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