12日、13日と福島県奥会津の金山町に行ってまいりました。
農業視察です。
9月7日に新宿で行われたマイナビ「就農FEST」で、お邪魔したブースがこの「福島県金山町」。
恥ずかしながら、会津に「会津若松」以外の会津があるとは知りませんでした。
あと知っていたのは、会津磐梯山。
今回改めて、地図を見てみると、「会津美里町」「会津坂下町」「西会津」「南会津」。
いろいろな会津がありました。
今回訪れた、金山町は、最も新潟県に近い奥会津と呼ばれる場所にあります。
恥ずかしながら、金山町という地名は、今回の農業視察で初めて知った次第。
たぶん、この「就農FEST」のブースに立ち寄らなかったら、一生聞くことのない地名だったかもしれません。
特に日本中に名の知れた特産物があるわけではない。
特に、有名な、観光スポットがあるわけではない。
人口2018人の小さな町でした。
但し、この金山町を通って、新潟県小出から、福島県会津若松まで走るJR只見線は、知る人ぞ知る、日本で最も美しい鉄道写真が撮れるということで有名な路線。
鉄道写真ファンにとっては、聖地ともいうべきところです。
実は、この只見線は、2011年に起こった福島新潟豪雨災害で、鉄橋が崩落。
線路もかなりのダメージを受けて、只見駅から会津川口駅までが本日現在も不通のまま。
この区間は、代行バスが運行しています。
なかなか、復旧のめどが立たなかった一番大きな理由は、この路線がずっと赤字経営だったため。
災害から、8年もの間、復旧作業が進まなかったのはそのためです。
しかし、ようやく再来年までの復興作業営業再開が決定したとのこと。
これはひとえに、経営そのものよりも、この路線の文化的価値を、JRも認めたということがあったようです。
さて、その金山町に、どんな農業があるのか。
まず、就農FESTのブースで、びっくりさせられたのが、奥会津金山赤かぼちゃでした。
通常のかぼちゃは露地栽培が基本。
蔓が長く伸びて地面を這っていくので、苗間はたっぷりととって苗を植えます。
しかし、この金山町の赤かぼちゃは、なんと空中栽培。
写真のように、アーチを組んで、その両サイドから、蔓を這わせていくスタイル。
僕のやっている畑でも、キュウリやツルインゲン、ゴーヤなどの蔓系野菜は、同様のアーチを作って、グリーントンネルにしますが、この金山町では、これをかぼちゃ作りに採用。
あの重いかぼちゃが、アーチの中で、ブラブラと揺れている姿はなんともユニーク。
まるで真っ赤なUFOの大群が、畑に舞い降りてきたようです。
実は、我が畑でも今シーズンは、品種は違いますが、赤かぼちゃを、栽培していました。
「打越赤皮甘栗南瓜」という品種。
こちらです。
そしてこれを、栽培スペースが広く取れなかったため、支柱を使って、蔓を上に這わせてみたんですね。
但し、それはこの品種が、大きくはならないミニ南瓜だったため。
しかし、金山町のみんな通常のかぼちゃと同じサイズです。
それが、空中に浮かんでいる姿は圧巻。
「吊り下げ式」という栽培方法だそうです。
このスタイルだと、かぼちゃに接地面がなくなるので、色も形も綺麗になる。
なるほど、おっしゃる通り。
我が畑の、素人百姓露地栽培ですと、こうなってしまいます。
この「奥会津金山かぼちゃ」の特徴はこのお尻の部分。
まるで、かぼちゃが二重構造になっているように見えますが、中身は普通のかぼちゃだそうです。
一つの蔓で、作るかぼちゃの数を決めているので、大きく立派なかぼちゃができるとのこと。
そして、この金山町のかぼちゃは、甘くてホクホク。
宿泊した旅館では、このかぼちゃの天ぷらをいただきましたが、なるほど、金山かぼちゃとはっきりわかる味でした。
決められた品質条件をクリアしないものは、出荷されないとのこと。
糖度などもきっちり測定し、合格したものだけに、ラベルが貼られ、出荷されます。
「道の駅奥会津かねやま」にも、このかぼちゃは一番目立つところに、ドンと並べられていました。
ただ、問題なのは、このかぼちゃは、その糖度の高さゆえ、保存期間が、通常のかぼちゃに比べてかなり短いこと。
それが、これからの課題だと、役場の産業課・須佐係長はおっしゃっていました。
今回、お邪魔したかぼちゃ畑を運営しているのは、「農業法人彩の里」
母体は、「佐久間建設」という建設会社。
2007年に、農業部門を子会社化したのだそうです。
その「彩の里」が、空いていた広大な農地を有効利用するために、栽培しているのは、赤かぼちゃだけでは、ありません。
これは、ここに来て、初めて聞きましたが、「まこもだけ」
名前だけ聞くとキノコの仲間かと思いますが、実際はご覧の通り、水辺で育つイネ科の植物。
水面からでくる白い部分を食べるのだそうで、見た目はタケノコに似ているとのこと。
油との相性がいいそうで、中華料理でよく使われるそうです。
道の駅では、「味付まこもだけ」として売られていました。見た感じは「しなちく」。
ラーメンにトッピングすると美味しそうです。
この「まこもだけ」は、葉の部分は、お茶にもなるのだそうです。
そして、案内していただいた「地域おこし協力隊」の小池さんの話によれば、この「まこもだけ」は入浴剤にも抜群の効果があるとのこと。
お風呂の水の汚れをどんどん吸収して、お風呂の水が清潔に保てるのだそうです。
但し、水稲作物ですので、維持管理はそれなりに大変。
一般の農家は、あまりやりたがらないらしく、この「彩の里」が、町内の空いている耕作地を有効利用し、農業法人として管理しているとのことでした。
そして、もうひとつ「彩の里」で手がけているのがイチゴ。
残念ながら、収穫のシーズンからは、ずれてしまって、なっているイチゴの実は拝見できませんでしたが、栽培ハウスは見せていただきました。
ハウスは、去年の大雪で、一度倒壊してしまったとのこと。
このハウスは、その後、雪の積もりにくい形状を研究して、再建されたもの。
今年は、あまり出来が良くなかったそうで、苗は新たな品種に変えることを検討しているそうです。
イチゴは、栽培が難しいことで有名。
我が畑でもトライしてみましたが、実はいくつもなりませんでした。
しかし、栽培の方法は、大いに勉強になりました。
さて、金山町の目玉として、主に関西市場に多く出荷しているものがあります。
それは、かすみ草。
かすみ草といえば、フラワーアレンジメントや、結婚式のブーケなどに使われる定番フラワー。
その可憐な小さな花は、多くの女性のハートを掴んでいます。
今回、産業課の須佐係長に案内されたのは、かすみ草栽培農家・菅家新一郎さんの畑。
この金山町で、かすみ草が栽培収穫できるのは、4月から11月まで。
冬は豪雪で覆われてしまうので、ハウスの骨組みは潰されないよう解体してしまうそうです。
冬の間は、もっぱら帳簿作業と、次のシーズンの準備。
その期間だけ、つなぎとして鉢植えものなども栽培しているとのこと。
菅家さんは、お父さんの代からの、かすみ草農家。
より良い栽培環境を求めて、となりの昭和村から移住されてきたそうです。
出荷先は、首都圏を通り越して、主に関西市場。
それだけに、輸送コストが課題だとおっしゃっていました。
かすみ草栽培には、どうしてもハウスが必須。
そのため、初期投資はどうしてもある程度は必要とのこと。
しかし、ハウスを一度建ててしまえば、ハウス内での作業は、比較的軽作業で、高齢の方でも続けられるそうです。
かすみ草の花を見ながら、「女性へのプレゼントには、最高ですね。 」
僕がそうチラリと言ったら、菅家さんが、とても素敵な色付きのかすみ草を、プレゼントしてくれました。
ありがとうございます。
しかし、さすがにこれを持って、新幹線には乗れないので、お世話になった役場にプレゼントしてきました。
さて、金山町の特産物に、エゴマがあります。
エゴマは、この金山町では、「じゅうねん」とも、呼ばれているとのこと。
エゴマといえば、やはり有名なのはエゴマ油。
種を絞って取る油です。
この金山町のえごま油は、酸化防止剤を一切使わない、100%純正の油とのこと。
しかし、係長は、エゴマの葉がご推薦。
お浸しにしたり、サンチュなどのように、焼肉に巻いて食べるのがおすすめとのことでした。
そして、金山町のあちこちの畑で、ちょうど今、白い花をつけてピークを迎えていた作物があります。
蕎麦ですね。
この蕎麦粉で打ったのが、地元特産の高遠そば。
「道の駅奥会津かねやま」で、昼食にいただきましたが、絶品でした。
関東では、通常そばつゆに、薬味として、わさびをいれて食べますが、この高遠そばには、あさぎ大根をすりおろしたものがつきます。
あさぎ大根も地元の特産。
これがピリリと、ほどよく効いていて、とても美味しいそばでした。
さて、今回は農業視察で、この金山町にお邪魔させていただいたのですが、金山町をもっと知ってほしいということで、みなさんには、観光スポットにも案内していただきました。
まずはこちら。
金山町の東端・三更地区の只見川沿いにあるのが霧幻峡。
この三更側から、対岸の早戸地区まで、渡し船が出ています。
昔は、実際にこの和船で、対岸に渡る町民の足になっていたそうですが、近くに橋が作られたために、対岸には車で行けるようになっています。
このため、この渡しは、事実上お役御免になっているのですが、地元の方が、観光のために残しました。
この日も、老人会の団体が、ライフジャケットを着て、乗り込んでいました。
ちょっと気っ風のよさそうな女性の方が船頭。
この日は晴天でしたが、なんといっても、この夢幻峡の最大のウリは、この川面一面に発生する川霧。
その中を、ゆっくりと進む舟はとても幻想的。
ちょうど、溝口健二の映画「雨月物語」に、そんなシーンがありましたね。
船頭さんの話によれば、「ここは、最近オダギリ・ジョーの映画のロケに使われた。」とのこと。
調べてみると、彼の編初監督作品「ある船頭の話」というのがその映画のタイトルで、ちょうど今週から封切り。
ここでロケされたということは、おそらく、その映画には、その川霧のシーンがフューチャーされていることでしょうから、来週にでも上映館を探して、観に行くことにします。
楽しみ楽しみ。
その女性船頭さんの舟の舳先を、僕の見ている前で、セキレイが低空飛行。
「この鳥は、ここで仕事をしていても、滅多に見れない!」
彼女のテンションは上がり気味。
粋にすげ笠をかぶり、団体ご一行を、慣れた調子でさばいて、女性船頭さんは、山々の緑が溶け込んだ川面に颯爽と漕ぎ出して行きました
そして、今度は街の西側。
大塩地区にあるのが、「大塩天然炭酸水井戸」。
全国でも非常に珍しい、天然の炭酸水が湧き出ている井戸です。
井戸の隣には、工場もあり、ペットボドルも販売されていました。
須佐係長の説明によれば、この天然水は、伊勢志摩サミットや、今年のG20サミットで、各国首脳が意見を交わす会場の、正式なテーブル・ウォーターとして採用されたとのこと。
金山町の隠れた特産品ですね。
かすみ草農家の、菅家さんから、新たな天然水井戸の情報を聞いて、産業課の須佐係長はガッツポーズ。
この金山町は、温泉がふんだんに湧き出ている町でもあります。
町内に全部で7箇所。
案内してもらったのは、まず大塩温泉。
ここは、町が管理している共同浴場。
源泉かけ流しの温泉です。
繁忙期には、スタッフが来るそうですが、通常は無人。
無人の共同浴場ですと、たいていは、汚れてしまうものなのですが、ここは綺麗に清潔に管理されていました。
小さな露天風呂から見下ろすのは、美しい只見川。
入湯料は、300円。
それから、栃木県へ向かう国道400号線沿いにあるのが、温泉保養施設「せせらぎ湯」
役場より、無料招待券をいただいて、案内してただいた「地域おこし協力隊」の小池さんと一緒に、しっかりと浸からせていただきました。
ここでは、大黒湯と玉梨温泉の、2つの源泉が楽しめます。
なんといってもウリは、天然サイダー温泉。
水中にしゅわしゅわの気泡が現れる炭酸を含んだ温泉が、大黒湯。
そして、しゅわしゅわはしていませんが、玉梨温泉も炭酸ガスを含んだ温泉。
キャッチコピーは、「うるおい美人の湯」。
しかし、夕方近くの温泉には、僕ら二人の他には、地元の高齢者2名。
残念ながら、美人はいませんでした。
「金山町地域おこし協力隊」の小池さんは、この金山町に移住してくる以前に、すでに金山町の7つの温泉はすべて制覇していたそうです。
彼は、鉄道写真が趣味で、カメラを持って、この金山町に何度か足を運ぶうちに、すっかりこの町のファンになってしまったという方。
「地域おこし協力隊」の任期が終了した後は、この町に永住するそうです。
その彼に、今は電車が走っていない、無人の只見線の駅に連れて行ってもらいました。
「会津水沼駅」。
彼の自宅からの最寄りの駅だそうです。
この路線の営業再開は決定していますが、JRとの話し合いで、電車の運行管理はJRが行うけれど、各無人駅の管理は、金山町が行うとのこと
この「会津水沼」駅は、冬になれば、豪雪で埋まってしまう駅。
駅の管理もなかなかハードな仕事になりそうです。
さて、田舎に行って就農となれば、大切なのは住まい。
まずはそこからでしょう。
役場で、空き家バンクの話はお伺いしました。
退職金もそれほどもらえるわけではありません。
古民家購入はどれくらいが相場なのか。
これは、移住希望者にとっては、とても気になるところです。
単刀直入にお聞きしましたが、回答はケースバイケースとのこと。
どの物件も、ほぼ「要相談」。
役場としては、購入の値段交渉には、立ち入る立場ではないでしょうから、それはわかります。
いろいろな事情が絡むでしょうし、購入後の修繕費用も気になるところ。
しかし、町の中を走っていても、空き家は相当数あるようです。
畑に使う土地も含め、これは実際に物件にあたって、その上で大家さんと話し合いをしないと見えてこないところかもしれのません。
ちなみに、再来週伺わせていただく、同じ福島県の湯川村では、空き家だけを見学させていただくことになっています。
今回の二日間では、宿泊は駅前の橋本旅館を紹介していただきましたが、町内には、いろいろとユニークな宿泊施設がありました。
こちらは、農家民泊「もどき家」
築150年の古民家を、改築して、民泊施設にしたそうです。
実際に、水稲やアスパラなどの野菜も栽培している現役農家でもあります。
この古民家らしいフォルムは、かなり僕好み。
「終の住処」として、まさに僕の目指すところ。
今回は、お話を伺えませんでしたが、一度宿泊して、ご主人にじっくりと話を聞いてみたいところです。
これは、沼澤湖畔にあった空中コテージ。
中でちゃんと人が寝泊まりできるそうです。
これは、まだ建設中ですが、森の立木を利用して作った森林ハウス。
ここも、宿泊出来る施設にしたいとのこと。
とても面白そうです。
こちらは、画廊「パンプキン」。
中には、たくさんの絵が飾られており、基本的には画廊ですが、申し込めば、宿泊施設としても利用できるそうです。
ちゃんと、自炊できるように、キッチンも備わっていました。
その他、町営住宅や、農家研修などのための長期滞在研修施設など、金山町には、移住者向けの宿泊施設がいろいろとあるとのこと。
諸事情ある中、少々中途半端なタイミングにはなりましたが、正式な定年退職を迎えて二週間。
これから、本格的就農に向けて、まずは情報収集です。
いろいろなところに出かけて、実際に現地の人のお話を聞く機会を、予算の許す限り続けてまいりますが、この金山町は、今度は是非冬のシーズンに訪れてみたいと思っています。
9月の「就農FEST」で、金山町のブースに話を聞きにきた人はおよそ10人だったそうです。
そして、実際に金山町まで出かけて視察をしたのは僕1人だったとのこと。
そのたった1人のために、お忙しい中、時間を割いていろいろと案内していただいた、産業課の須佐係長、緑川さん、そして、「地域おこし協力隊」の小池さん、今回は、本当にお世話になりました。
いろいろと勉強させていただき、本当にありがとうございました。