1954年に始まったアルジェリア戦争は泥沼状態に陥いります。
「フランスのアルジェリア」を信じて戦う現地駐留軍やフランス人入植者(コロン)らは、フランスの栄光を願う右派世論を味方に付けてアルジェリア民族解放戦線(FLN)やアルジェリア人の村落を殲滅。
相次ぐFLNの爆弾テロや残虐になる一方の戦争で厭戦世論も広がりフランスの世論は喧々囂々。
1958年、この政府の弱腰に業を煮やした現地駐留軍の決起によってフランス第四共和政は崩壊します。
そして、フランスの栄光の象徴シャルル・ド=ゴール将軍が、このアルジェリア独立問題を背景に、新たに作られたのが現在のフランスの第五共和政。
アルジェリアの軍人やコロンたちは、これを機に、ドゴールがフランス固有の国土のための戦争に一層力を入れてくれると期待していましたが、ドゴールは戦費拡大による破綻寸前の財政などを鑑みて、9月にアルジェリアの民族自決の支持を発表。
1961年の国民投票の過半数もそれを支持し、1962年に戦争は終結させてしまいました。
これにより、現地軍人やコロンらは大混乱のうちにフランスを引き揚げ。
彼らは戦争中にOAS(「秘密軍事組織」)を結成してアルジェリアで破壊活動を続けており、フランスでも政府転覆を狙って対ドゴールのテロ活動を実行。
現役のエリート軍人らによるドゴール暗殺計画はことごとく失敗し、組織の優秀な軍人達は逮捕され処刑。
組織にはフランス官憲のスパイが浸透した上、コルシカ・マフィア(ユニオン・コルス)まで投入した捜査の結果、秘密だった筈のメンバーや活動もほとんど判明。
表の政治組織もフランス官憲の実行部隊により容赦なく壊滅させられ、支援者だった企業オーナーらも離れ、OASは事実上崩壊します。
ここまでが、歴史上の事実。
そして、実在するこういう人物が一人。
本名イリイッチ・ラミレス・サンチェス。1949年生まれ。現在はフランスにて服役中。男は、ベネズエラ人で国際テロリスト。
彼は、1973年から1984年にかけて14件のテロ事件に関与。
世界中で83人を殺害、100人を負傷させます。
世界を暗躍して極左テログループを指揮し、インターポール(国際刑事警察機構)から最重要指名手配。
彼はこう呼ばれました。
通称「カルロス・ザ・ジャッカル」
そして、この当時、ロイター通信社の特派員としてパリに在住していた作家フレデリック・フォーサイスが、この史実と、この実在の暗殺者をモデルに、ドゴール暗殺事件を、緊迫のドキュメントタッチ書き上げたのが彼の処女作「ジャッカルの日」。
そして、この原作を得て、これを超一級の社会派サスペンス映画の傑作として世に送り出したのがフレッド・ジンネマン。
ラストのジャッカルがライフルの引鉄を弾く瞬間までの、サスペンスの盛り上げ方は、まさに職人芸です。
ドゴール大統領役の役者の「そっくり」さんぶりもあって、実際にはなかった「事件」なのに、まるで、歴史の決定的一瞬を見せられたような印象。
どなた様も、暗殺者に狙われましたら、礼儀正しく「お辞儀」は、忘れずに。
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