さて、北京オリンピックも、折り返し。
大会中日の日曜日。この日のメインはなんといっても、女子マラソンですね。
今回のマラソンコースは、北京市内の名所旧跡をめぐるコース。
実は僕は、2003年に、北京に出かけております。
このときの、中国のツアーガイドのオニイサンとは、スケベ同士で、妙に意気投合したんですね。
「スケベは国境を越える」
その彼と、ビデオカメラを回しまくりながら歩き回った北京市内の光景と、今回のマラソンコースが見事にリンク。
「あの角を曲がると、故宮博物館がみえてくるぞ」というあたりまで、ハッキリと記憶に残っていた風景でしたので、感慨もひとしおでした。
さて、本日の女子マラソン。
まずは、結果からいきますと、ルーマニアのコンスタンティナ・トメスクが2時間26分44秒で金メダル。
日本勢は中村友梨香の13位が最高。
土佐礼子は、足のトラブルで途中棄権。
バルセロナ・オリンピックでの有森裕子の銀メダルから続いていた5大会連続のメダル獲得も、3大会連続の金メダル獲得も、残念ながら、今大会でついえてしまいました。
勝負事に「もしも」は、禁物ですが、こうなってしまうと、やはり、今大会は、「主役」がスタートラインに立てなかったことが、どうしても悔やまれますね。
主役の名は、アテネ大会の金メダリスト・野口みずき。
彼女はいったい、どんな思いで今日のレースを見ていたでしょうか。
北京五輪女子マラソン本番前、野口は合宿先のスイス・サンモリッツから緊急帰国。
MRI診断の結果、左足太ももの肉離れを起こしている事が判明。
結局肉離れの痛みが引かない為、北京オリンピック女子マラソンへは、レース5日前の8月12日に出場辞退を表明しました。
前回アテネ五輪のディフェンディングチャンピオンとして、女子マラソンで史上初めて五輪2連覇なるかどうかが注目を集めていた彼女だけに、大金をかけて、このレースの放送権を得ていた日本テレビなどは、上へ下への大騒ぎ。
辞退が級であった為に、補欠選手の調整も間に合わず。
結果、日本代表の他2選手の成績も、完走者が一人だけという大惨敗。
野口を指導していた藤田監督は、本番前に「野口を壊した」指導者として、しばらくは、非難轟々かもしれません。
このレースを前に、NHKスペシャルで放映された「女子マラソン連覇へ~野口みずきの戦い」という北京オリンピック特番を見ました。
まあ、内容は、本番直前ということもあり、当然のことながら、野口の北京オリンピック連覇への期待を膨らませるカタチで、締めくくられていました。
以下は番組の請け売り。
まず、野口は、けして、素質や才能に恵まれた選手ではなかった。
すぐれた脚力はあったにせよ、それをコントロールする上半身の筋力は、アテネ・オリンピック時点でも出来ていなかったんですね。
但し、起伏の激しいアテネのマラソンコースが、野口には幸いしました。
30キロ時点までの、高低差のある上り坂。
平坦な道なら、どうしても下半身が先に出てしまい、バランスの悪い走りになってしまう野口は、上り坂では自然に前傾姿勢になれることで、彼女の脚力を活かすことができたんですね。
それゆえ、アテネオリンピックでの野口は、下り坂になる前の、25キロ地点から勝負に出ました。
30キロ過ぎからの下りで、競い合ったらとても勝てないと判断したんですね。
結果は周知のとおり。
上り坂でスパートした野口に、結局誰もついていくことが出来ず、彼女は、先頭のままスタジアムに駆け込み、金メダルのテープを切りました。
アテネ大会の金メダルは、あのアテネのマラソンコースと、当日の猛暑が、野口に金メダルを持たらせてくれたといっても過言ではなかった。
しかし、この北京のマラソンコースは、起伏のない市街地を走ります。
野口が、この北京で連覇をするためには、平坦な路面の硬いコースで野口のスピートが活かせるように、どうしてもフォームの改造が必要だったわけですね。
野口は、この課題を、徹底した「走り込み」で、クリヤしようとします。
野口の練習量が、「世界一」であることは、マラソンの解説者。増田明美さんが証言しています。
才能と体格に恵まれていたわけではない野口が、世界一のマラソンランナーという周囲の期待にこたえ続けるためには、「世界一」の練習量をこなしているという自信が不可欠だったいえましょう。
だからこそ、彼女は、本番直前まで、走り続けました。
そして、それゆえの、大腿部の損傷。
結果として、本番の舞台で、最高のコンディションを調整できなかった野口チームの責任は、問われても仕方がないかもしれません。
しかし、誰よりも多く走りこむことで、トップランナーとしての自信をキープしてきた野口にとって、この結末は、無念ではありましょうが、案外受け入れられるものだったような気もしますね。
野口みずきは、今年30歳。
次の、ロンドン大会では、彼女は34歳。
しかし、今回の北京大会で、金メダルを獲得したトメスクは、今年で38歳です。
もしも、彼女が、今大会の無念の出場辞退をモチベーションに変えることが出来るなら、もう一度メダルを狙うことは可能かもしれません。
指導者としての藤田監督は、この先はちょいと辛い所でしょうが、出来ることなら、野口に、もう一花咲かせてあげさせてほしいところです。
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