「アメリカ映画 勇気と感動ベスト100」というBSの番組を見ました。
こういう、番組には目がありません。
もともと、ダイジェスト指向みたいなところがあり、かいつまんで、おいしいところだけ見て、その映画を見た気になっているということが結構ありますね。
もっとも、学生時代には、浴びるほど映画を見ておりましたから、その頃に蓄えた知識の確認と検証というような楽しみ方が、通常はメインとなります。
ここ10年くらいの映画となるとちょっと弱いのですが、80年代以前の映画でしたら、そこそこ見てきたつもりです。
さて、「勇気と感動」の映画です。
アメリカの映画人たちが選出したランキングに、僕の「記憶」にある映画が、どれくらいリンクしてくるか。
そのあたりを楽しませてもらいました。
この番組の制作はAFI。
「アメリカ映画協会」です。
アメリカ映画協会は、映画を保存し、映画製作のための訓練と育成を行い、動く映像に関するさまざまな活動を促進するという団体。
アメリカの映画人が、中心となって作られている団体です。
そのAFIが製作した番組ですから、この番組のゲストは豪華でした。
スティーブン・スピルバーグ、ロン・ハワード、シドニー・ルメット、ノーマン・ジュイソンといった、ハリウッドの大御所監督たち。
ミラ・ジョヴォヴィッチや、ジェシカ・アルバといった、チャキチャキの現役女優たち。
ジェーン・フォンダや、ウーピー・ゴールドバーグ、サリー・フィールド、ベン・キングズレーといったベテラン俳優たち。
そして、おもしろかったのは、今はもうスクリーンでは見ることのなくなった往年の俳優たちの2006年時点での姿が確認できたこと。
あの時のあの映画のあの人が、あらまあ、今はこんなになっちゃってるんだわという、楽しみですね。
「波止場」や「北北西に進路をとれ」のエバ・マリー・セイント。
「アンネの日記」のミリー・パーキンス。
1930年代の名子役、ミッキー・ルーニー。
そんな中で、一際目を引いたのが、カーク・ダグラス。
「ブラック・レイン」や「氷の微笑」のマイケル・ダグラスのオヤジさんですね。
ランキングにランクインしていた「スパルタカス」や、自分が出ることになっていたはずの「カッコーの巣の上で」(これ、知りませんでした)などでコメントしておりましたが、カーク・ダグラスは、1916年生まれ。
ですから、この番組当時で90歳ということになります。
もちろん、往年のマッチョマンの面影はなく、ろれつも怪しい、フガフガのジイサンになっていました。
「イメージ」が、商品価値である俳優たちは、往々にして、老醜をさらすということを嫌う人が多く、まず、引退後は、カメラの前に出なくなる人が多いのですが、その意味では、この方はご立派。
そして、もう一人。シドニー・ポワチエ。
この方は、黒人俳優としては、大御所中の大御所。
1927年生まれということですから、この番組制作時点では80歳。
この人の出演作品は、このランキング100本の中に、有名どころが、5本もランクインされておりました。
もちろん、シドニー・ポワチエの出演作品には、「人種差別」をテーマにしたものが多くなります。
この手のランキング番組で、こういうテーマの映画が選出されるというのは、いかにもアメリカ的ですね。
とにかく、アメリカは、「わかりやすい正義と良心」がお好きな国です。
そういえば、このベスト100の第2位にランクインされていた映画が「アラバマ物語」。
ロバート・マリガン監督が、グレゴリー・ペック主演で撮った作品で、やはり「人種差別」を正面から扱った映画でした。
ちなみに、第3位が、スピルバーグ監督の「シンドラーのリスト」。
これも、ナチスドイツのホロコーストをテーマにした、「硬派」の映画。
彼の作品の中では、「E.T.」や「未知との遭遇」も、この「勇気と感動」リストにラインアップされておりましたが、順位はずっと下。
このランキングが、本当に映画人たちの「投票」によっ決定されているのだとしたら、ちょっと出来すぎ感は否めませんな。
いずれにしても、ハリウッド映画は、ヨーロッパの映画に比べて、単純明快で、わかりやすい映画がお好きということは常識。
「娯楽」に徹した「わかりやすい」映画作りというのは、ある意味、アメリカの国民性を象徴しているような気がします。
ですから、その反動が、こういうランキングものには出てくるんですね。
つまり、実際にどうだということはとりあえず横に置いておいて、とりあえず「良心」「正義」「愛」「感動」を、前面に押し出した「優等生作品」が、ランキングには並ぶということになる。
簡単にいってしまえば、「本音」と「建前」の使い分けですね。
(別に、アメリカに喧嘩を売ってるつもりはありませんが)
そういえば、アカデミー賞の受賞作品がそうでしょう。
興行的に成功した映画というよりは、むしろ、そのテーマや、内容の方が重視されているようなセレクトになっているような気がします。
アカデミー賞の受賞作品が、どんな基準で選出されているかは、僕は知りませんが、やはり、オスカーを手にする作品が、「悪魔のいけにえ」では、ちと具合が悪い。
このあたりの本音と建前の使い分け二枚舌傾向は、「湾岸戦争」や、「イラク戦争」をおっぱじめたときの公式発表あたりにも、通じるものがあるような気がしますが、いかがでしょうか。
おっと、話がだいぶ脱線しました。
さて、この番組を録画したDVDから、ランクインされた映画の名場面をパソコンでキャプチャーして、昨日一日がかりで、1年分の「シネマ・カレンダー」というのを作成し、去年までのカレンダーと入れ替えました。
楽しかったですね。
壁に、ズラリと、自分のお好みの映画が並んで、けっこうご機嫌です。
いつものように、CORPUSの「夢ぷりんと」で作成。
この時期に、なんでカレンダーなのよと思われるかも知れませんが、去年思い立って作ったのが、ちょうどお盆休みだったんですね。
こういうものを、一日かけて作れるのも、お盆休みならではです。
さて最後に、このランキングの第一位に選出されていた映画だけは、紹介しておきましょうか。
これです。
「素晴らしき哉、人生! It's a Wonderful Life」
1946年に公開されたフランク・キャプラ監督の名作中の名作。
主演はジェームズ・スチュワート。
この作品が、ベストワンにあがるあたりは、いかにもアメリカ的ですよね。
「勇気と感動ベスト100」というランキングのベストワンを飾る作品としては、妥当というべきでしょう。
僕のような、ひねくれた映画ファンからしますと、この手の作品をベストワンといってしまうのは、「照れ」もあり、「抵抗」もあるのですが、まあそれはそれ。
若かりし頃、あのラストで、号泣したことだけは、白状しておきましょう。
http://en.wikipedia.org/wiki/AFI%27s_100_Years..._100_Cheers
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