政府は8月の月例経済報告で、景気の基調判断を大幅に下方修正する方向で最終調整に入ったようです。
下方修正は2カ月ぶりですが、今回は04年1月から使ってきた「回復」の文言を外し、「景気は弱含んでいる」という表現を使用するとのこと。
さて、「弱含む」。
恥ずかしながら、これ初めて聞く言葉です。
(よわぶくむ)とは、相場が下落する気配を見せていることを表現する言葉。反意語は「強含む」。
「リッツ・カールトン、アジアのホテル需要は一時的に弱含むと予測」
「弱含む第2四半期決算見通しを発表」
「米利上げ時期は後退?ドル弱含む」
要するに、経済用語ですね。
それ以外の場面では、あまり聞きません。
「月例経済報告」というのは、内閣府が取りまとめて経済財政担当相が関係閣僚会議に提出する景気に関する政府の公式見解となる報告書。
この報告書の中で、景気の動向を表現する 「言い回し」は、いつも思いますが、独特ですよね。
堺屋太一氏が、経済企画庁の長官だった頃、「景気回復に向け、かすかに新しい胎動が感じられる」なんていう報告があったのを思い出しますが、この「胎動」という表現も、かなり独特でした。
景気の動向という、非常に「微妙なニュアンス」の動きを、日本語で正確に表現するというのは、けっこう難しいのでしょうね。
「経済報告」ということになれば、その性格上、あまり的外れな報告は出来ないでしょうから、ある程度は、「玉虫色」な表現を使わざるを得ないのは理解できますが、あまり意味不明な表現を使って、とりあえずを取り繕うというのでも、問題ありでしょう。
景気は多変数ですから、進退状況は混沌としていて、正確な判断は確かに難しい。
現状の方向性の表現でも、「回復している」という、よい動きから、「弱まっている」という悪い方向の動きの中に、段階に分けて、いくつかの表現があります。
よいほうからいえば、上からこんな具合。
「改善が進んでいる」
「緩やかな改善が続いている」。
「上方へ、弱含んでいる」
「足踏み状態」。
そして、これをさらに微細に分けようとすると、「やがて」「ついに」「いちおう」「やっと」「やはり」「とりわけ」などといった副詞の出番となります。
おもしろいので、ここ最近見たものの中からビックアップしてみましょう。
「下げ止まり、おおむね横ばいで推移している」
「このところやや改善している」
「緩やかな改善が続いている」
「自律的回復に向けた動きが徐々に強まっている」
「動きが徐々に現れている」
なにやら、景気回復の芽が出て茎が伸び始めた感は伝わってきます。
その後、
「動きが続いている」と水平飛行になり、
「改善のテンポがより緩やかになっている」から「改善に足踏みが見られる」となります。
このあたり、速度を維持しているが、加速はしていないという感じでしょうか。
そして、今回の「弱含んでいる」ときます。
つまりこれは、景気回復の速度が鈍る兆しであるという意味となりましょうか。
とにかく、景気のようにダイナミックな流れを、時空を取り除いた形で、そのままに把握するのはとても難しいということです。
おっと、こんなことに、面白がっている場合ではありませんな。
とにかく、月例経済報告から、「回復」の表現が消え、景気が後退局面に入ったということ。
戦後最長の景気回復は、これでいよいよ終わった公算が大。
これから、景気は、厳しくなりますよということです。
原油の単価も、どんどん上がっていく一方。
福田改造内閣には、ちょいと本腰をいれてもらいましょう。
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